↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/12

託される想い

「クロスさん。いらっしゃいます?」

サラはノックする。


「あら、サラちゃんに、デイッシュちゃん。どうしたの?まぁ中に入って」


「ありがとうございます」

私達は頭を下げた。


「実は農地の件で」

サラは切り出す。


「農地って、あなたの所、飛び地ですもんね。それで譲って欲しいって?」


「まぁ。お借りするのでも……」

サラは口ごもる。


「あの土地はね。主人との思い出の土地なのよ。あそこで私たちは生きてきた。わかるわよね」


「はい」


「私には身寄りがないわ。だから、私を家族にしてくれない?」


「家族?」


「そう。サラちゃん、デイッシュちゃんのお婆ちゃんでも良い。あなた達の農場のお婆ちゃんでも良い。そうしてくれないかな?それなら、孫に土地を譲るのは普通でしょ」


「それで良いのですか?」

私は尋ねた。


「法律とかの事はよくわからないから、任せるわ。私は死ぬまでノンビリ生きられて、あの農地が活用されて、私が亡くなった後、あの農地を大事に使ってくれるなら、それだけで良い」


「わかりました。では私達と暮らしませんか?」

私は言った。


「良いの?良いのだったら、すぐに荷物まとめるわ」


「そんなにすぐに良いのですか?」

サラは驚く。


「ここ暇なのよ。ほら農場だったら、沢山人がいるでしょ」


そんなわけでクロスさんが仲間に加わった。

クロスさんはノンビリと暮らすのかと思っていたら、

よく働いてくれた。

動きこそスローモーションだけど、効率は良かった。


「ここはね。こうすればキレイだし早いよ」

クロスさんは、あちこちで、お婆ちゃんの知恵を教えて回った。


「ああいうご老人は、非戦闘員なので、非効率だと思っていましたが、兵站の効率化にずいぶん役立ってくれるのですね」

グラスは言った。


「僕も驚きました。論理的認知ではなく、経験論というのも、役に立つのですね」

シュガーも言った。


シュガーはクロスさんに、よくついて回ってはメモを取っていた。


「何をしているの?」

と尋ねると、

「こういう経験論は文章化されないですから、後世に引き継がれにくいです。ですので、後任の者の為に、マニュアル化しておきます」

そう答えた。


実際、いろんな部分でマニュアル化ができ、作業の効率はどんどん上がっていった。

人手を募集しようと思う頃には、マニュアル化が進み、募集は必要なくなった。


そして、農場の整形ができたことで、生産性がずいぶん上がった。


他にも飛び地は何個かあったが、そちらはすんなりと売ってくれた。


農場はずいぶんキレイな形になった。


そして皆の動きも無駄のない動きとなった。


「デイッシュちゃん。猪の革できたぞ」

ハシさんがやってきた。


「おぉ、ありがとうございます。しかし、これをどう使おう?」


「色々使えるな。革の鎧とか、剣の鞘とか、盾とかにも使える」


「なんでそんな武器っぽいのばっかり」


「いずれ戦をするんじゃろ」


「何を言ってるの?そんな事しないわよ」


「またまた。ワシには隠すな」


「本当に隠してないって」


「あんた第三王女だろ」


「知ってたの?」


「知らなかったのか?」


「知らないわよ」


「ワシは村長から聞いたぞ」


「いつ?」


「出会った時から」


「マジ?」


「うんマジ」


「なんで今まで言わなかったの?」


「別に興味ないしな」


「じゃあ、なんで今言ってきたの?」


「ほら鎧とか作るんだったら、ワシも手伝えるかなと」


「本当に戦争とかしないから、武器もいらない」


「そうか。残念だな」


「もしかして、村の人皆知ってたりする?」


「う~んどうだろ。知ってるんじゃねぇか。こんな所に侍女連れてやってきて、ここまでの事するんだから、只者ではないのはすぐにわかるぞ」



「ねぇサラ。ハシさんが私達の正体知ってたわよ」


「そりゃそうでしょ。普通の商人の娘のやる事じゃないですから。御自覚なかったのですか?」


「わかってたの?」


「ハシさんがご存じとまでは知りませんでしたが、バレないほうが不自然なくらいには」


「サラちゃんもレベルが高いからな。ここまで優秀な侍女。商人の娘の侍女じゃないわ」


「てへへ」

サラは照れている。


「てへへじゃないわよ。優秀すぎるとバレるのね」


「デイッシュ様。それは仕方がありません。優秀なのですから」


「だから、多少は誤魔化す努力は必要でしょ」


「それでこれだからな」

ハシは腹を抱えている。


「デイッシュ様。では始末します?」


「しないわよ。まぁ皆隠し事の一つや二つあるだろうし、お互い様ね」


「そうそう。あの村長もお尋ね者の盗賊の頭だったしな」


「ウソ?あの村長が?」


「あぁ、夫婦してな。ずいぶん落ち着いたが」


「もしかして、この村全体的に?」


「皆詮索はせんが、ここはそんな感じの村じゃよ」



「なんか私だけが秘密抱えていると思ってた」


「そうですね。サラもさすがに驚きました」


「何に驚いたの?」


「ハシさんが昔傭兵だったこと」


「えっそうなの?」


「いや?傭兵なんかしとらんよ。ワシは王国の地方役人だった」


「えっ、そうなんだ」


「そうだよ。貴族の不正を告発したら、命を狙われて、逃げてきたわ」


「誰それ?」


「ウェポン。王国を裏切っただろ」


「ウェポン?あの中級貴族の」


「あぁ、今は帝国の上級貴族の地位にいる」


「……」


「あの時、ワシの不正告発が上手くいっておれば、嬢ちゃん達が、ここに来る事もなかったのに、すまんな」


「ゴメンなさい。話が急展開すぎて、ついていけてないわ。サラ整理して」


「ハシさんは、王国の地方役人で、ウェポンという中級貴族の不正を告発しようとしたら、命を狙われて逃げてきた。そのウェポンは王国を裏切り、いまは帝国の上級貴族の地位にいると」


「それ……、ビックリよね」


「ウェポンが手引きしなければ、王国が滅びる事はなかっただろう」


(うわー)

外が騒がしい。


「サラ!」


「はい!」


「何事ですか?」


「猪が畑を荒らしており、クロスさんが……」

小作人は息を切らして言った。


「クロスさんは大丈夫なの?」

サラは詰め寄る。


「はい。投石で、猪を仕留めました。ですが暴れてて」


「助けが必要なのね」


「いえ。フォークさんが槍で突いて倒しました」


「じゃあ、なんで騒いでるの?」


「肉パーティだと」


「デイッシュ様!」


「どうしたの?大丈夫なの?」


「肉パーティです!私、猪を捌きに行ってきます!」

サラは目の色を変え、走り出した。



「デイッシュちゃん。平和だな」

ハシは笑った。


「えぇ。こういうの悪くないと思う」

私は少し笑みを浮かべた。


END


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


この作品は完結していますが、

反響があれば続編を書く可能性があります。

ブックマークしておくと、もし更新された場合に追いやすくなります。


■坂本クリア作品

異世界・現代・コメディなど様々な物語を書いています。

次に読む作品はこちらから探せます。


坂本クリアの小説まとめ|全作リンク集

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2898515/blogkey/3591538/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。