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4月1日書籍発売 忘れられた妃ですので 〜初恋の旦那様に贈るしあわせな再婚〜  作者: キムラましゅろう


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連理の枝

初冬ではあるが、ハイラント国王グレアムと

元ジルトニア公女イズミルの結婚式は、大陸随一と謳われるハイラントバシュレ大聖堂にて厳かに執り行われた。


パールホワイトのウェディングドレスに身を包んだイズミルのその美しさは、瞬く間に大陸中に知れ渡る事となる。


もともと婚姻して十年の夫婦であったにも関わらず、正妃となったのを機に改めて結婚式を執り行ったのは、ハイラントの属州となった元ジルトニア国民たちに大公家唯一の生き残りであるイズミルの成人となった姿を見せる事と、永きに渡り正妃不在であったハイラントの後継を危ぶむ声を払拭するためであった。


大聖堂に到着し、馬車を降りたイズミルが白の詰め襟の王族の正装姿のグレアムと並び立つと、群衆から賞賛の声が沸き起こった。


こんなに美しい国王夫妻は大陸中どこを探してもいないのではないかと言わしめるほどに似合いの夫婦だと一瞬で認知されたのだ。



イズミルと共にバージンロードを歩いたのが

かの高名な賢人グレガリオだというのもさる事ながら、イズミルがグレガリオの最後の弟子だという事が更に皆を驚かせた。


イズミルの手がグレガリオによりグレアムの手へ。


温かく大きな手が包み込んでくれる。


優しく微笑んでくれる。


それだけでイズミルは胸がいっぱいになった。


二人、神と大司教の前で誓いの言葉を立て

大司教が高らかに二人が紛ごう方なき夫婦であると宣言した。


共に向い合い、グレアムが誓いの口付けを落とす。


そっと触れるだけの唇が離れると、イズミルの瞳から大粒の涙が一粒零れた。


グレアムが堪えきれず今度は額に口付けをすると参列席から割れんばかり拍手が起きた。


イズミルは恥ずかしくてたまらなかったが、皆が祝福してくれる事が本当に嬉しかった。


その後は王都内をパレードし、祝賀の夜会を経て、ようやく長い一日が終わろうとしていた。



そろそろ自室へ戻ろうかとしていたとき、グレアムがイズミルに見せたいものがあると言った。


そのままターナやリズルや主だった側近達も

連れ立って、グレアムはイズミルを王家の霊廟へと連れて来た。


〈霊廟に何かあるのかしら?〉



不思議に思っていると、グレアムはあのエンシェントツリーの描かれた広間の扉を開けた。


中には既にリザベルが居て、ちゃっかりとグレガリオも来ていた。


「ふぉっふぉっ、来たなズーちゃん、本当に良かったのぉ。碌でもない旦那というのは取り消してやってもよいかな♪」


「?」


グレガリオの言葉の真意がわからずきょとんとするイズミルをグレアムが引き寄せる。


「イズミル、見てごらん」


グレアムがエンシェントツリーの方へと

視線を移し、イズミルもそれに従い目をやる。


ハイラント王家の壮大なエンシェントツリー。


家系図を樹木に見立て、無限に伸びていく枝の先、当世グレアムの名の横にイズミルの名が記名されていた。


まだ子を成していないのに記名されている事にも驚いたが、イズミルが驚いたのはそれだけではなかった。


イズミルの名の所から別方向へと枝葉が描かれている。


そこにはイズミルの父と母と兄の名、そして

曽祖父であるジルトニア大公バニシアムまでの

家系図が記名されていた。


「………!」


ジルトニア事変により城と共に焼失したジルトニア大公家のエンシェントツリーの一部が、そこに描かれていたのだ。


「これからはハイラントの大樹と一つになって、

ジルトニア大公家の血筋も延々と続いていくんだ、キミと俺とで繋げてゆこう。その為にここに新たに描かせた」


「グレアム様っ……」


イズミルの瞳から涙が溢れ出た。


もう二度と描かれる事はないと思っていたジルトニア大公家のエンシェントツリーが、まるで枝から新芽が芽吹くように復活したのだ。


きっと亡き家族も心から喜んでくれているに違いない。


「グレアム様…本当に嬉しいです、ありがとうございます……!」


溢れる涙が止まらない。グレアムが優しく拭ってくれた。


「うっ…ううっ……よ、良うございましたねっ……姫さまっ……!」


後ろでイズミルよりも大きな声でターナが泣き出したので、皆は思わず笑った。


リザベルがイズミルを抱きしめる。


「イズミル。グレアムを見捨てず、想い続けてくれてありがとう。祖母として心からお礼を言うわ。そして貴女の弛まぬ信念に敬意を。幸せになるのよ、今までの分も、家族の分も」


「リザベル様……はい……はいっ……!」


イズミルはリザベルに抱きしめられながら何度も頷き、涙を流し続けた。



その光景をハンカチを濡らしながら見ていたリズルにマルセルが話しかけた。


「良かったよね、元ジルトニア国民としてもやっぱり嬉しい?」


リズルは目に涙を溜めながら元気よく頷いた。


「はいっ、ソレはもちろん!国王陛下は最高ですね!さすがはイズミル様の旦那様ですっ!」


「アレ?じゃあその側近の僕たちも最高という事になる?」


「……そうなり、ますか?」


「なるよ」


「はぁ……」


要領を得ない顔をするリズルにマルセルが極上の笑顔を返した。



そんなマルセルとリズルのやり取りを他所にグレアムが祖母に言う。


「おばあさま、そろそろイズミルを返して下さい」


「まぁなに?独占欲を剥き出しにしちゃって、心の狭い男は嫌われるわよ」


リザベルがわざとイズミルを更に抱え込むようにしてグレアムから遠ざけた。


「なんとでも仰って下さって結構です」


そう言ってグレアムはリザベルからイズミルを奪い返し、自らの懐に抱え込んだ。


そんな二人にグレガリオが告げる。


「遠く東方の国には“地にあっては連理の枝とならん”という言葉があるそうじゃ。お前さん方はまさに連理の枝。夫婦仲睦まじく、更に枝葉を伸ばし、良き国を治めてゆく事を願っておりますぞ」


師匠(先生)……」


イズミルとグレアムはこの珍妙だが懐深き賢人に深く頭を下げた。


「共に末永く、連理の枝とならん事を」


グレアムがイズミルに言う。


「はい、あなたと共に」


イズミルが誓う。





今は無き後宮に

「忘れられた妃」と呼ばれた娘がいた。


娘の名はイズミル。


祖国を失い、家族を失い。

それでも彼女は弛まぬ努力を重ね、自らの力で

運命を切り拓き、幸せな人生を掴み取った。


そして後々の世まで賢王と讃えられた夫を良く支え、国民の一人一人から愛される国母となった。



イズミル妃はいつも言っていたという、


「どんな時でも諦めず、自分に出来る最善を

尽くしてゆけば、いずれ道は切り拓かれ望む未来へと辿り着つける」と。



それを話すイズミル妃の隣では、いつも目を細めて彼女を見つめる、国王の姿があったという。








            終わり






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






これにて本編は完結です。


番外編有りきのラストなので読者様には

少々物足りなさを感じさせてしまうかもしれません。

その後の番外編で描きますので、どうかご容赦くださいませ。


さてこの物語、2022年の2月に

小説家になろうさんの方で投稿を始めたのですが、

長く連載が止まったままになっておりました。


でも作者の多作品の感想欄で

とある読者さまにそろそろ続きを……と言って頂き、待っていて下さる読者さまがいるのなら!と連載を再開いたしました。

と、同時にアルファポリスさんの方でも当時投稿という形を取りました。


あのお言葉がなければ未だにお休みしていたまま

だったかも……。


この物語が作者にとりましては処女作となりますので、書き上げられた事を改めてお礼を申し上げたいです。


常々、書き手のエンジンは読み手なのだなぁと感じておりますが、

このお話ほどそれを如実に感じた事はありませんでした。


皆さまからの感想、これがどれほど書く意欲に繋がっ事かっ……!


読者さま皆さまに支えられ、最終話まで辿り着く事が出来ました。


本当にありがとうございます。


まだ番外編が数話続きますが

これからもどうぞよろしくお願い致します。




皆さまに心から感謝を込めて……



     キムラましゅろう

































本編はこれにて完結です。

引き続き番外編もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] イズミルの一途さに涙しました。ハッピーエンドのごん狐! 初期の殿下の無体にも滅気ず、只管に恩返しをする。こんな良い娘、はやく幸せになってくれと思いながら読んでおりました。 お疲れさまです。…
[良い点] 紆余曲折はあれどイズミルさんの一途な想いだけは変わらず。 彼女を見守る太王太后様や賢人様のあたたかさ、侍女たちのお姫様至上主義。 [一言] 本編完結おめでとうございます。 番外編も楽しみに…
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