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4.

「よし、いい店がある。連れてってやるよ!」


 完全に私は私の勘を信じて、後をついて行ったその先はまぁ酒場と言えば酒場だった。


 ただし冒険者ギルドに併設されている酒場ではあるが。


「ここなら安心安全で、味も保証するぜ!」

 確かにここは私の挙げた条件を満たしている。

 そして彼が悪意を持って、この場所に連れてきた訳でもないことはなんとなく分かる。


「さすがに田舎から出てきた私でも、ギルドの酒場が一般人の利用が禁止されていることくらい知ってるわよ……」

「確かに一般人は使えないが冒険者登録さえしてしまえば誰でも使えるぞ? 別に登録場所は関係ない。だから何の問題もないだろう?」


 そう、あるのは悪意ではない。

 私と彼との間の認識の違いである。


「私、冒険者登録なんてしてないわよ」

「は? ああ、運送ギルドの護衛の方か? あんたくらいの手練れなら辺境にも行けるだろうし、それなら今まで顔を見かけなかったのも納得だな! となるとほかに店は……」


 何やらまた違う勘違いをし始める男に呆れてしまう。


 この男はどれだけ私を過大評価するのかしら?

 こういうのはちゃっちゃと否定してしまうに限る。

 顎に手を当てて考え始める男の前へと出て、キッパリと男の勘違いを直すことにする。


「どこのギルドにも所属していないわよ。運送ギルドと商会ギルドにはたまにお世話になるけど、それは依頼人としてだもの」


 ちなみに農業ギルドにも所属していない。

 うちの村は村で消費するのくらいしか育ててないし、種や栄養剤、腐葉土だって特殊なものしか使用できないらしい。


 流通も購入もしないのだから、農業ギルドに所属する必要がないというわけだ。

 ただし数年に一度だけ、予定よりも多く収穫出来る年があって、その年だけは商会ギルドにそのまま卸してもいいことになっている。

 本来ならば農作物の流通は全部、農業ギルドを通さなければいけない決まりらしいけど、うちの村は特別らしい。

 多分数が少ないからとかそんな理由だと思う。

 毎回申請するのも面倒臭いし、処理する方も面倒臭いのだろう。


 だからお世話になっているって言っても、商会ギルドの方は本当に数年に一度である。だが運送ギルドはもう少し頻度が高い。


 村の外で暮らす親戚とか知り合いとかから送られてくる手紙はもちろんのこと、月刊の新聞などを届けてくれる。後は国中に配られる王国新聞とか。


 だけどギルドとの交流といったらそれくらいである。

 他の村とかがどれくらい利用しているのかは分からないが、王都よりも少ないというのはほぼ確実だろう。


 そう告げるとグレンはパチパチと瞬きをする。


「冗談だろ?」

「冗談なんて言ってどうするのよ」

「だってあんたの実力だったら……いや、これは好機ととらえるべきか?」

「ちょっとどうしたの」

 いきなり言葉を止めたかと思えば、俯いて独り言をぶつぶつとこぼす。


 これってもしかしておいしいお店紹介するって話、流れちゃってる?

 勘違いがあったにしても、好意でここがいいとわざわざ連れて来てくれたところを断ってしまった形になっているのだし……。

 ならば簡単に謝ってからまたお店探しを再会しなきゃよね。


「あの~」

 顔をのぞき込んで、ほかのお店探すわと口を開こうとする。

 けれどそれよりも先に、男は私の肩をガシっと掴む。その行動に驚いて、思わず開きかけていた口はぴったりとくっついてしまう。


「あんた、ここで働かないか!!」

「は?」

「勇者が魔王を倒すまでの間で構わない。それまで住む場所はこっちでどうにかするし、食事はギルドの食堂で取ってくれれば金は俺が払う。だから頼む」

「えっと、意味がわからないんだけど」


 一気に近づいた顔から、先ほどまでとは行かないまでも距離を置き、引き気味にそう告げる。

 するとやっと男は私を解放してくれる。


「ああ、すまん。つい焦っちまった。とりあえず座って飯にしよう。ああ、安心してくれ。食事代は俺が払う。その代わり、今晩だけでも構わないからあんたを口説く時間をくれ」


 その言葉に周りの酔っぱらいは騒ぎだして、いつの間にか酒や金を賭けだした。


 賭の内容はサブマスターに春は来るのか、らしい。

 大方、何かを勘違いしているのだろう。だって酔っぱらいだし。


 だが目の前の男はそれが予想できていたとばかりに、観衆もとい酔っぱらい達を沈め始める。

 バカバカしいと私が逃げ出すのを避けるためだろう。


 だが私に逃げるつもりなんて毛頭ない。


「メニューはどこ?  おごってくれるんでしょう?」

「ああ!」

 私の頭にあるのは、今晩の飲み代が果たしてこの男の財布の中身で足りるかどうかである。

 まぁ言質を取った以上、このギルドに所属するしない関係なく、びた一文も出すつもりはないのだけど。


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