コミカライズ第二巻発売記念ショートストーリー『アユとアズラのお買い物』
ある日の午後、少し離れた場所に隊商がやってくるので、買い物に行かないかとアズラに誘われる。
「私と? リュザールではなくて?」
「ええ、我が息子リュザールの嫁、アユと行きたいのです」
「わかった」
何か荷物持ちでも頼みたいのか。そう思ってアユは同行する。
約束の時間となると、アズラは大きな黒馬に跨がって登場した。
歩いて行くのかと思って、ロバを引いてやってきたアユは驚く。
「そのロバは置いて、馬に乗りなさい」
「わ、わかった」
圧倒されつつ、アユはアズラが操縦する馬に乗った。
以前、リュザールと一緒に馬に乗ったときは、アユを気遣いつつ、手加減しているような速さで走っていた。
けれどもアズラはそんな気遣いなどなく、全力で草原を駆け抜ける。
それがどうしようもなく、アユには爽快で心地よく思えた。
隊商は思っていたよりも大規模で、小さなバザールが開かれているようだった。
「ここで何を買うの? 食材? それとも家畜に使う道具?」
「今日はリュザールの嫁アユの服を仕立てるための、布を買いにやってきたのですよ!」
「え!?」
なんでもアズラは、以前よりアユの服が少ないと訴えていたらしい。
そして今日、暇を見て買いにやってきたわけである。
「大丈夫、服、いっぱい持っている」
実家で暮らしていた頃に比べたら、服を所持しすぎているほうだとアユは主張する。
「いいえ、ぜんぜん足りていません!! うちの嫁は世界一幸せだと周囲に知らしめるためには、たくさんの服が必要なのです!!」
こういうときのアズラは言い出したら聞かない。
アユは諦め、買い物に参加することにした。
「この色も似合う、ああこれも! あっちも捨てがたい!!」
アズラは次から次へと布を買い、続けて裁縫師に仕立てるように注文する。
目が回るような速さで、買い物が終了となった。
帰りがけに、お腹が空いただろうからと焼き菓子と果物の盛り合わせを買って、アユに食べさせてくれる。
アユが焼き菓子を頬張る様子を、アズラは愛おしそうに眺めていた。
両親からこんな眼差しで見られた覚えなどないので、アユは照れてしまう。
「お義母様も食べて」
「私はあなたが食べる様子を見ているだけで、心もお腹も満たされるのですよ」
その言葉を聞いた瞬間、アユは涙を流してしまった。
「どうしたのですか?」
「嬉しくて」
「焼き菓子がですか!? それとも果物がですか!?」
「違う。お義母様の愛が、嬉しかったの。それだけ……!」
それを聞いた瞬間、アズラはアユを抱きしめる。
「私の愛なんぞ、ぜんぶあなたに差し上げます!!」
「だ、大丈夫。リュザールやお義父様にも、分けてあげて」
「いいえ、彼らには十分与えましたので!!」
アズラの愛を一身に受けるのは大変そうだ。
アユは力強く抱きしめられながら思ってしまう。
親のぬくもりを独り占めした日の話だった。
コミカライズ第二巻、本日発売です。
どうぞよろしくお願いします!!




