裕之のかけがえのない宝物 前編
しがないフリーター、武田裕之は高崎にUターンして2年と少しが経つ。
特に何も進展はなかったが、そろそろ千葉に戻ろうかと考えていた。
派遣ではあるが面白そうな案件があったのだ。
そして、大学時代のつてを頼りにまたやりたいことを思う存分満喫できる自信もあった。
裕之は野球も好きだが、音楽も好きだった。
実は大学中退して専門学校に通おうとしていたくらい、音響関連の仕事に興味があった。
安定して生活できるような仕事をしながらDJを目指している。
裕之は、付き合っている、とまではいかないが一番仲の良い女友達が居た。
裕之自身も彼女には良くしてもらっており、必ず恩を返そうと不器用なりにも必死だった。
結局、本当の思いを伝えることはできぬまま彼女は交通事故により若くしてこの世を去った。
裕之は悲しみにくれた。
忘れたかった。
彼女の両親は葬儀で一部ではあるが、こう打ち明けた。
「私みたいなひねくれ者に彼氏なんて一生できないし、ずっと女子高通ってたんで男なんていらないと思っていました。大学で知り合った今、熱く真っ直ぐ生きている男に心を打たれました。弱気になってしまうところがたまにキズだけど。変な奴だけど面白くて。実は彼が私にとって一番だった。後にも先にも彼しかいないって。彼のこと待っていた、どれだけ本気か確かめたいから。もし思いを伝えられずに私が死んでしまえば、彼は一生後悔するだろうな。」
その話を聞いて、裕之は自分のことだと悟った。
涙が止まらなかった。
自分も死んで彼女の後を追おうとしていた。
しかし、思いとどまった。
神様はなんて残酷なのだろう。
良い人ほど早く召されるものだ。
なんという世界だ、これが現実か。
「裕之くーん!」
どこかで聞いたことのある声だ。
まさか、彼女が生き返ったのか?
しかし振り向くと、いかにもギャルって感じの子だった。
裕之自身も、初めての光景だった。
続く。




