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エピローグ

 まだ夜も明けぬ頃、アジュールはふと眠りから覚め、隣で布団に埋まった櫻子に視線を落とした。自分の胸元に額を埋め、安心しきった表情を浮かべる彼女の髪は、少し汗で湿っている。少しかがめばキスが落とせるその距離に、自助努力でゼロ距離になるのも悪くはないと、しみじみとそう感じつつ、もう少し大きくスプリングの利いたベッドでもよいのではと思う。


 顔の横に投げ出された左手には、銀色の指輪が光っている。もう少し華美なものも、また用意しようと決めた。


「……」


 離れがたいが、少し喉が渇いた。


 櫻子を起こさぬように立ち上がり、キッチンへと向かう。ミネラルウォーターを取り出して、コップに注ぎ、一口傾けて、ふとリビングテーブルに出しっぱなしになっていた手紙の山に目を向けた。


「イヴォワール…」


 櫻子が寂しがってはいないかと思い、手紙を送れないかと相談したアジュールに、イヴォワールは「私は忙しいのだ」とすげない返事をした。その裏でこうして手紙を送っていたのだから、無表情なあの男の腹黒さと少女への溺愛ぶりが証明されたというものだ。優しい櫻子は、その気持ちだけで嬉しいよと言って笑っていたが、玄関先で見せた不機嫌そうな顔は、連絡しなかった自分を責めてもいたのではないか。

 そうは思ったが、転移陣を製作したのは、他でもないイヴォワールだ。そのことに免じて、今回は許してもいいだろう。


 そんなふうに気持ちを切り替えられたのは、櫻子がプロポーズを受け入れたという事実が大きく手伝っている。魔界では、新居に移り住むことで結婚と相成るので、櫻子とアジュールの場合は少々複雑だ。少なくとも櫻子が卒業するまでは、櫻子を魔界に連れて行くことはできないだろう。逆に言えば、卒業すれば強引にでも魔界に連れて行くつもりである。新居はスパーダの屋敷だ。本来ならば、屋敷に迎える時点で「結婚して欲しい」と言いたかったのだが、人間界ではそういう制約はないのだと知り、先んじて実行に移した次第である。


 残った水を飲み干して、再びベッドに戻る。


 櫻子の隣に滑り込み、彼女の身体を抱きしめ、額かかった髪を避けて、キスを落とす。


「それまでは、居候、ですね」


 プロポーズに頷いた櫻子は、気持ちが先んじて、具体的な考えは抱いていないだろう。だが、それでいいのだ、とアジュールは心から思う。


 ただ自分を愛して、名を呼んで、隣にいてくれたら。



「それだけで、いいんですよ」



 再びキスを落として、悪魔はそう、小さく笑った。


改めまして、途中どうなることかと思うくらい長い間、お付き合いいただき、本当にありがとうございました。

その間、たくさんの応援をいただき、とても励まされ、こうして完結を迎えられたのだと思います。毎度毎度、完結できるかいなか、でやきもきさせてしまうので、今回に関しては、ここまでこぎつけることができてとても嬉しい気持ちでいっぱいです。

まだまだ言いたいことがあるのですが、完結した、ひゃっほーい!と興奮状態なので、また改めまして、あとがきみたいなものを書かせていただけたらなと思っております。


最後になりましたが、読了ありがとうございました。

またあとがきでお会いいたしましょう。

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