第五十一話 ふざけた事をしてくれる
サイト達がラヴィーネの外部、その洞窟へと向かいダハーカと交戦した時と同じくして。
アリスにエーテル、コルヴァスはラヴィーネ内を走り回っていた。
その理由は――――。
「はぁ、はぁ……っ、こんなに沢山魔獣が現れるなんて!」
「くそっ! 民間人の避難も満足に済んでない! 不味いよこれは!」
「とにかく今はやることやるしかないだろ! 民間人の安全確保に注力すんだよ!」
骸骨。骨だけで構成された、死霊系統の魔獣。
それらが統率を成した動きで襲いかかってきているからだ。
作戦として、ラヴィーネで待機していたアリス達。しばらくすると骸骨が都内に突然出現した為に、こうして民間人の安全を確保する為に奔走している。
しかし、想像を超えた骸骨達の数にアリス達は押され気味。民間人達を数名、避難誘導するしか出来なくなっていた。
その過程で、骸骨達は次々と襲いかかる。民間人を守りながらでの応戦は、苦戦を強いられていた。
どうすれば……そうして困り果てながら走り回っていた時に、路地裏からある男性の声がかかる。
「おーい皆の衆! こっちだこっち!」
声のした方を見ると、そこにはコトノハの姿が。
アリスは即座に路地裏へと入っていく。そんな彼女に続いて、民間人達が続きエーテルとコルヴァスも路地裏に進んでいく。
そのままコトノハに導かれるようにして、建物の中へと入り込む民間人達。
が、その途中で。
アリスの耳に、子どもの泣き声が聞こえてきた。
顔をそちらに向け、気付けば体も動いてしまっている彼女はそのまま路地裏を出ていこうとする。
「アリス!? 何をしてるんだ早くこっちに来なさい!」
「――――っのアホ!」
「おいエーテル!?」
アリスを追いかけるエーテル。
その表情は酷く焦っており、打算抜きで心配しているようであり。
そんな彼を呼び止めようとするコルヴァスだったが、既に背中は見えないところまで行ってしまっていた。
コルヴァスはコトノハに顔を向けると、一言断りを入れていく。
「悪い、おっさん! ちょっとあの二人を追いかける!」
「うむ! 分かったよ! 気をつけて行ってくるといい!」
そんな会話が繰り広げられる中。
件のアリスはというと、骸骨に囲まれている少女の姿を捉えていた。
「あっ、あぁぁぁぁ……だれ、かぁ。おとぉさぁん、おかぁさぁぁぁん!」
今にも握られた骨の剣が少女を切り裂こうとした。
けれど。
「させない!」
アリスは駆け出し、剣を振り上げている骸骨に向かって飛び上がると、空中から蹴りを繰り出した。
骸骨はその蹴りの衝撃でよろめく。
そのまま彼女は骸骨の間をすり抜けて、少女の前へと庇うようにして走り寄っていった。
「カタカタカタカタカタ!!!!!」「ケタケタケタケタケタケタケタ!!!!!」「カカカカカカカカカカ!!!!!」
突如現れたアリスに対し、威嚇するように歯を噛み鳴らす骸骨達。
アリスはそこで、自身の中にある恐怖心と改めて対峙することとなる。
――――怖い、怖い怖い! 直にこうやって対面すると分かる。やっぱり魔獣や、厄者は……怖い!
怪我するかもとか、最悪殺される可能性がある恐怖……こんなのを、ソウジや兎の少年はずっと肌で感じてるんだ。
冷や汗が流れ、心臓は恐怖と同調する様に鳴り響いていく。
体は震えていき、今にも逃げ出したくなりそうだ。
しかし、彼女には退けない理由があった。
「うぅ、うぅぅぅぅ……!」
後ろで泣いて怯えてる子がいる。
十分過ぎる、理由だ。
震えてしまう体に無理やり発破をかける様にして、彼女は気丈に振る舞いながら叫んでいく。
「か、かかってきなさい! 鍛えてるから、貴方達なんてすぐにやっつけてやるわ!」
そう言ったアリスの言葉を理解したのか否か、骸骨達は更にけたたましい骨の音を鳴り響かせながらアリスへと剣を振るっていく。
ギュッと目を瞑りながら、少女を守るようにして腕を広げるアリス。
もう少しで剣の刃が彼女に届きそうになった――――その時。
「我が書き記す! 目の前にいる骨の怪物は五秒間、動きを止めると!」
勇敢に叫ぶ、ある人物が現れた。
それは、エーテル。
彼は手に構えた緑と黄色の色味が鮮やかな手帳に、シックな黒色の羽根ペンで何かを書き記していた。
すると。
「カカカカカカカカカカ?」「カタカタカタカタカタカタカタ?」「ケタケタケタケタケタケタケタ!?」
骸骨達の動きが止まった。
剣を振り下ろそうとする体勢で、ピタリと。
アリスは驚いて目を開けながら、その光景を眺めていた。
しかし、そんな時間を無くすかのようにエーテルがアリスへと叫んでいく。
「おい! 早くそこの子どもを連れてこっちに来い! 死にたいのか!」
言われ、アリスはすぐさま子どもを抱えてエーテルの下へと走っていった。
それと同時に骸骨達も動き出していき、アリス達へと襲いかかろうとする。
しかし、それも防がれた。
何故ならば。
骸骨達の脳天を、緑色の矢が射抜いたのと同時に――――骸骨達の胴体部分が真っ二つに切断されたからだ。
正確に射抜かれた上に切断された骸骨達は倒れ込むと、やがて塵となって消滅していく。
呆けるアリスに対し、今度は矢を撃った張本人……コルヴァスが飛びながら彼女とエーテルに近づいてきた。
「アリスちゃん良かった! 無事なんだな!」
「えっ、と。はい、大丈夫です! この子も、怪我はないと思います」
「そうかい……しっかし、急に走るからどうしたのかと思ったぜ。その子の声が聞こえたんだな、すげぇよアリスちゃん」
褒めるコルヴァスの言葉に、アリスは照れ臭く頬をかいて笑う。
和やかな空気になりかける。
しかし、エーテルはそんな空気を許さないとでも言いたげに仏頂面を更に顰めさせ、コルヴァスへと人差し指を向けて苦言を呈した。
「馬鹿! それで自分まで巻き込まれてたら世話ないだろ! 褒められた行為じゃないし、そういう時は僕らに一言声を掛けてから行動してもらいたいものだけどね! 君は戦う力を有してないんだから、尚の事!」
〈そうっすねぇ。さっきの行動は、確かに中々危ないものだったっすが……それと同時に、とても勇敢な行動でもあったと思うっすよ〉
エーテルが話す事に対し、地面の人影から聞こえる謎の声がアリスを庇うようにそう言った。
突然の乱入者に、全員が身を強張らせて警戒する。
そんな彼女達の緊張感に、謎の声の主は申し訳なさそうな声を上げて地面に出来た影から姿を見せた。
〈あーっと、皆さん警戒しないでほしいっすよぉ。さっき助けたのも――――よっと。俺なんすから」
その正体は、灰色の狐の獣族の男性。彼は気さくに手をピッとカッコつけるように動かして、挨拶を交わす。
「ど~も、皆さん方。オレの名前はヴィシオ・シムラクラム。聖ドゥケレ騎士団シムラクラム隊の隊長っす。今はうちの隊で、民間人の安全を確保する為に行動してる所っす」
「聖ドゥケレ騎士団? 世界の安寧と秩序を守る為に、日夜世界中を奔走しているって噂のあの? へぇ……君みたいな人材もいるんだね、意外だよ」
「はっはぁ〜、お褒めに預かり光栄であります〜。ってまぁ、そんなふざけたコト言ってる場合じゃないっすけどね。ほら、早く安全な所へ避難避難!」
ヴィシオに言われ、アリス達はすぐに行動を開始する。
コトノハが誘導した家屋に避難する為に、走り出す。
その道すがら、アリスは顔をしおらしくさせて頭を下げていた。
「改めて、ごめんなさい。勝手な行動をしてしまって」
「……まぁ、でも。この子を助けられた事は良い事ではあるから、もう責め立てない事にするよ。早くあの怪しげなおじさんの所に戻るとしよう。すぐにまた骸骨が現れるとも限らないからね」
「はい……コルヴァスさんも、ヴィシオさんも、ありがとうございます。助けてくれて」
アリスの改まった態度に、それ以上エーテルが責めることはなく。
コルヴァスとヴィシオも、問題ないと伝えるように手をヒラヒラと振って答えていた。
そうして、アリス達は子どもと共に路地裏へと走っていくのだった。
――――――――――――――――――――――――――――
路地裏にある家へと全員が避難したのを確認した所で、アリスは息を吐き出して緊張を解いていった。
アリスは辺りを見回す。
すると、まずヴィシオの姿が消えている事に気が付いた。
何度見ても、その姿はない。不思議に思いつつも、彼の素性的に忙しいのかもしれないと彼女はその事について考えるのを止めた。
そこから更に見渡すと、『凍える龍の理想郷』に所属する複数のギルド員と、恐らく避難してきたであろう民間人の姿が。
各々が体を震わして、外の骸骨に襲われた恐怖を滲み出している。
ギルド員達がどうにか宥めようとしているが、恐怖はすぐには拭えられそうにない。
――――気持ち、分かるな。私も恐怖を振り払えなかったし。
そんな中で、アリスは一先ずコトノハに声をかける。
「コトノハさん。助けてくれてありがとうございます! それと、無事だったんですね」
「いいってことさぁ! それより俺は君の方が心配だったよぉ? 大丈夫だったのかい? 子ども連れてきてたけどさ」
「……その話よりも、まずはあの骸骨達が問題だよ。急に現れて街の人々を襲い始めたんだから、たまったもんじゃない」
アリス達の和やかな会話に入り込み、エーテルは現状で起こっている問題点を挙げていく。
そんな彼の疑問に、コトノハがふーむと考え込む仕草を取り、わざとらしく声を漏らしながらも答えていった。
「もしかしたら、あれらは厄者が生み出した存在なんじゃなかろうか? ほら、魔獣って厄者が引き連れてる奴らだし? それだったら、厄者自身が魔獣を生み出すーなんて芸当も可能だとは思うけどねぇ」
彼の言葉に、エーテルも思考を巡らせていく。
「厄者、ねぇ。確かにあいつらの異常さは桁違いだけど……待てよ? ラヴィーネで龍族と戦闘を行い敗北して、その後に逃げて消息を絶った厄者がいたって情報があった筈。そいつが今になってまた行動を起こしてるとしたら……マズイ自体かもしれないな、これ」
「そうだね。市民達の安全もそうだし、何よりは城に備わっている結界石にも危害が及びそうだ。もし壊されたりしたら……外の魔獣とも相まって、ラヴィーネは陥落してしまうだろうね」
「そ、そんな! だったらどうにかしないと!」
エーテルとコトノハ、両者の会話を聞いていたアリスは焦りを見せる。
が、しかし。そんな彼女とは対照的に、エーテルは焦る様子一つ見せずにアリスへと言葉をかけた。
「そうだね。取り敢えずフロスティアさんと連絡を取ろうか。状況を把握してから動き出した方がいいだろうからさ。アリス、君あの鏡持ってたよね? 貸してくれる?」
「えっ? あぁはい、どうぞ!」
「はいありがと。じゃあ僕はこっちで通信しておくから、君達は少しでも休んで体力を回復してなよ。いざという時に動いてくれなきゃ困るからさ。あっ、でも無茶はしないでよ。絶対に、止めてよ?」
エーテルは強く念を押しながらアリスから手鏡を受け取り、そのまま部屋の隅に向かっていった。
そんな彼の姿を、アリスはジッと見つめていく。
言葉は強い。けど、他者への気配りのようなものが感じられる。
真っ先にその行動に移せる彼は、勇者としてあるべき姿を体現出来ているのではないだろうか。
落ち着いて、冷静に起きた状況に対応する。
狼狽えていた自分とは雲泥の差だ。
何より、アリスはそんなエーテルに助けられてもいる。
――――これが、勇者。口だけの私なんかよりも、よっぽど凄い。私も……頑張らないと。
そう心の中で息巻くアリスに、コトノハがにこやかな笑みを向けて話しかける。
「アリス、そう固くならない。過度な緊張は、いざという時に体を動けなくしてしまうからなぁ。程よく、心を休ませるといい」
「……でも、そんな心持ちでいいのかな? 私は皆とは違って戦えないんだから、より緊張感を持ってこれからの事に臨まなきゃならないと思うの。だから――――」
「アリス。それは、違うぞ」
コトノハの声色が、一段低くなる。
それは怒りというよりかは、窘め。
彼はアリスに対し、まるで経験者かのような口ぶりで諭していく。
「戦い方にも、色々と種類がある。怪我をした者の治療や、後方で指揮を取ったり情報を集めて戦況を有利に進める事。それらもある種の戦いだ。色々な種類の戦い方があるのは、普通の事なんだよ」
「コトノハさん……」
「言っただろう? 今の君が出来る事は何なのか。それを考えていくといい。考えて抜いて得た答えは、必ずアリスの力になってくれる筈さ」
優しい眼差しを向けるコトノハに、アリスは既視感と共に安心感を覚えた。
既視感の正体は、自分の所属するギルドの長であるイニティウム。
彼と同じような、厳しくも優しい空気に充てられたアリスは自然と気持ちが緩んでいく。
そんな彼女を様子を見たコルヴァスも、これ幸いとニカッと口の端を釣り上げた笑みを浮かべて話しかけていく。
「そうだぜアリスちゃん。物事には適材適所っつー言葉もあるぐらいだからな。今のアリスちゃんが出来ることは、きっとある筈だぜ?」
「私が、出来る事。適材、適所。……うん、そうだよね」
アリスはキョロキョロと辺りを見回す。
自分に出来ることを、考えながら。
すると、彼女は助けた少女が泣いているのを目撃する。
親らしき人物は見当たらず、一人でずっと泣きじゃくっている少女。
アリスは意を決して頬をぱちんと叩き、そんな少女の元へと歩き出した。
しゃがみ込み、少女と同じ目線になったアリスはそのまま少女の涙を手で拭っていく。
「ねぇ、大丈夫? 何があったのか、良ければお姉さんに聞かせてくれないかな?」
「うぅ……おどーざんとお“が“ぁざ“んと、はぐれぢゃって。わだじだげ、なのぉ……! やだよぉ……こわいよぉ……!」
「そう、だったんだね。……安心して。怖くないから、大丈夫だから」
アリスは少女を優しく抱擁していく。
背中をポンポンと不規則に、優しく叩きながら宥めていく。
そうしていると、少女は段々と落ち着いてきた様子で。
嗚咽が止んできた頃には、少女の涙も引いてきていた。
少女は自分でも涙を拭いながらも、アリスへと話しかけていく。
「ぐず……おねぇちゃん、ありがと。あたし、エイラっていうの。おねぇちゃんは?」
「私はアリス。エイラちゃん、強い子だね。もう泣かなくなったんだもん」
「……あたし、つよくないよ。いまだって、こわいもん。おかーさんも、おとーさんも、みんなみんないなくなっちゃって……うぅ」
エイラと名乗った少女は、また涙を目元に溜めていってしまう。
そんな少女に、アリスはどうしようと内心で慌てていく。
が、ある事を思いついた。
彼女はすぐさま行動に移していく。
自身の手を握ると、エイラへと向けていき。
「エイラちゃん。今から私がちょこっと幸せになれる魔法を見せてあげる」
「……まほう?」
「うん、魔法! じゃあ、いくよ? ワン、ツー……スリー!」
アリスがそう掛け声を言ったのと同時に、彼女の手から一本の花がポンッと飛び出した。
紙吹雪と共に華やかに現れたそれは、一人の少女を驚かせるには十分な演出だ。
エイラの顔はみるみるうちに明るくなり、やがて満天の笑顔を花咲かせながらはしゃぎ始めた。
「すごい! すごいよアリスおねぇちゃん! もういっかい、もういっかい見せて!」
「ふふっ、いいよ。今度はこっちの手からぁ〜……はいっ!」
「わぁっ! またお花がでたぁ!」
きゃっきゃっとはしゃぐエイラの顔を見て、アリスは自然と笑みが溢れる。
そんな彼女達のちょっとした騒ぎを聞きつけたのか、他の子供達も集まってきた。
「ねーねー、なにやってるのー?」
「このおねぇちゃんがまほうを使ってくれてるのー! すごいんだよ! なにもない所からお花をだしてて!」
「えー!? おねぇさんまほうつかいなの!? すげぇすげぇ、おれにも見せてよ!」
わらわらと集合してきた子供達に驚きながらも、アリスはニコッと微笑みを返しながら元気よく応えていく。
「よーし! じゃあ皆、よく見ててね?」
そこからアリスは様々な見世物を繰り出していき、子供達をはしゃがせた。
それから、他の大人達も。
先程まで怯えていた様子だったのが、アリスの見世物を見た影響か表情が少しだけ柔和になっていた。
――――笑顔が広がり、それが周りに伝播した。
そんな感覚を、遠くから様子を見ていたコトノハは感じていた。
何かをやろうとして即座に実行に移し、そして見事にやれる事を成し遂げた。
コトノハはニヤリと笑みを浮かべていく。
「やはり、彼女には素質があるな」
「それ、なーんの素質だ?」
近くでコトノハの呟きを聞いていたコルヴァスが、目ざとく尋ねる。
がしかし、コトノハは特に嫌な顔一つせずに鳥の彼へと質問に答えていった。
「勇者の素質さ。彼女は正しく、世の為人の為に行動出来る勇気ある者だろうからね。人前であぁして目立った行動を出来る者は、そう多くない」
「んまぁ、そうだよなー。ただ、その行動が変に重荷にならなきゃいいんだけど……アリスちゃん、ぜってぇ責任感強いぜ?」
「ははっ、そうだろうね。けど、俺は彼女の可能性を信じてるよ。今だって、民を笑顔に出来ているんだから」
そうして話を終えた彼らの下に、エーテルがやって来る。
顔は仏頂面のまま、しかし纏う空気は少しばかり緩んでおり。
彼はアリスの方を見ながら、小さく呟いた。
「……彼女、手先が器用なんだね。やるじゃないか」
そんなエーテルの言葉に、コトノハとコルヴァスはニヤニヤとからかうような笑みを浮かべていく。
彼らのニヤケ面に、エーテルは大きく咳払いをしていくと真剣な表情で現状についてを報告する。
「だいぶん状況は逼迫しているよ。どうやら鏡に出たギルド員によると、城の結界石を守る為にフロスティアさんが城に向かったそうだ。そこから連絡が一切取れないまま……危険な状況に陥っているかもね」
「ふむ……で、あれば。この中の誰かが城に向かうべきだな」
「あぁ。けど、どうするかだな。俺はともかく、アリスちゃんは戦えないしエーテルはそこまで戦闘が得意じゃねぇから。俺が離れちまったら、この家を守る人員も減っちまって良くないし」
エーテルとコルヴァスは腕を組み悩んでいく。
しかしそんな彼らとは打って変わって、コトノハはニヤリとした笑みを携えていた。
そんな彼の表情に気が付いたエーテルが話しかける。
「何か案があるの?」
「ふっふっふっ……実のところを言うとね、俺は戦えるのさ! 即ち、そういう事だね!」
「……あぁ、まぁ。そんな気配はしてたから分かってたけど」
ずっこけるコトノハ。
そんな彼を見たコルヴァスも苦笑いをしながら、話を続けていく。
「あんたもエーテルみたいに、それ程戦いに秀でた感じじゃないと思ってたんだよー。だから勝手に除外してたけど……ほんとに行けんのかー?」
「むむっ、信用無いな? ならば君達にだけある事を教えよう! 耳を貸しなさい」
そう言って、コトノハはコソコソと二人にある事を話していった。
瞬間、表情を驚愕に染めるエーテルとコルヴァス。
片や信じられないものを見る目、片や感心したような目を向けていた。
そして、その情報を聞いた彼らは頷いていく。
「……なら、コトノハさん。貴方に城へと向かってもらいますね。頼みますよほんと」
「あぁ、任せておきたまえ! こんなふざけた事をしてくれる元凶を……とっちめてくるとも」
最後に発した、一段低くなった声色と共に。
さっきまでのひょうきんな態度から一転し、威圧感が増した鋭い空気を纏うコトノハがそこにはいた。
身震いする二人。
かくして、店組の動きも決まった。
ラヴィーネの行方は、如何に――――。




