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20.非常事態と非常識事態

「なんだと?リゼリアにひまるを任せたのか!?」


アルカネラ管理運営局……それはアルカネラに関する全てを任せられている組織だ。


ビギナーズデッキやタクティカルプレートの製造は勿論、カードプレイヤー同士の戦いにおいての競技性を保つ為にカードの制限をかけたり調整したカードの人為的な製造なども行っている。


何より、カードの完全な複製を行う技術を唯一保持しているため、アルカネラにおいてはこの世界で一番トップに立っている組織だ。


そして、そんな組織の本部はアルカネラ区域にあり、その最深部には接触を禁じられた最悪のカード達が封印されている。


その最深部への唯一の入り口があるとされている総管理長室の前のホールでは、ノルガマードがザビメロの言葉に驚き、声を上げていた。


「おい、そんな大声を出すな。事情は聞いたがひまるは完全に拘束されているとのことで、別に支障は無いだろう?」


「あるに決まってるだろう!?ひまるは自分を討ったリゼリアに敵意をむき出しにしてたんだぞ!?」


「おい!そこのドラゴンうるさいよ!あたいと鷹典は今打ち合わせ中なんだ!ちょっと静かにしといてくれ!」


そんな二人のやり取りに割って入る様に、一組の男女の女の方が怒鳴る。見れば男の方は直前までザビメロと酒を飲み交わしていた平間 鷹典(ひらま たかのり)であり、女の方は要請で呼び出された彼の戦力だというのが、態度や発言からして分かった。


「ああすまん……少し声を出しただけですぐこれだ、ったくルナルドネスはこれだから嫌いなんだ」


「ああ゛!?聞こえてるよクソドラゴン!」


「おいおい落ち着けよサデノール……ったくよぉ、ザビメロもなんでヴァーノミなんて連れてくんだよ」


「お前からも何も知らされてなかったからな、今夜襲撃すると予告した身の程知らずをぶちのめしてくれればそれでいいだろう」


「適当だなお前も、それよりなに騒いでんだよ」


「聞いてくれるか、調査中にリゼリアを襲った連続殺人魔を撃退して拘束したんだが、この男はそれの身柄を今リゼリアに預けてるんだ」


「はぁ!?」


それを聞いて、今度は鷹典が驚きの声を上げる。


「おい鷹典、お前もうるさいぞ」


「いやいやいや!驚くに決まってるだろ!なに考えてんだ!襲われたらどうすんだよ!?」


「現在そいつは完全に拘束されている、一晩リゼリアに面倒見てもらうだけだ。どうせこれからは俺がリゼリアと一緒に居るから心配するな、ひまるには荷物持ちでもさせればいい」


そんな風に言い切るザビメロに対し、文句を言いたそうにノルガマードと鷹典が睨みをきかせる。そんな最悪の空気の中、不意にロビーのドアが開いてギルド職員とは違う制服を着た複数の男女が入って来た。その背後には更に大勢のコロニーガードが追従している。


「おいお前たち!襲撃予告時間が迫っている!さっさと配置に……どうした?」


出て来て早々、集団の先頭に立っているウェーブのかかった明るい茶髪を、肩下まで伸ばした女性がカードプレイヤー達に命令しようとするが、すぐに異変に気がついて威を削がれた様に問いかける。


「いやー、この人が今ニュースになってる連続殺人犯の管理を任されたみたいなんですけど、それをそのままリゼリアちゃんに託しちゃったみたいでー、なんか今二人っきりみたいなんですよねー」


ふわっとした黄色の髪を持つカードプレイヤーの女性が事情を説明すると、それを聞いた女性が目を見開いて驚く。


「なんだと!?ザビメロ!貴様一体なにを考えてる!?」


「俺からしてみれば、一般人に犯罪者を任せるシステムの方がなにを考えてると言いたいがな。心配するな、これが終わったらすぐに戻る」


「貴様という奴は相変わらずふざけているな……まあいい、もうすぐ襲撃予告時間だ!ブリーフィング通りに貴様らは配置につけ!」


女性の指示が飛ぶと、それに合わせてその場の全員が予定していたポジションにつく。


即席で集めた戦力は得物を抜いてカードプレイヤーを守り、守られているカードプレイヤーもナイフを構えつつプレートの上にデッキを置いて臨戦体勢を取っており、職員達も盾を構えるコロニーガード達の背後で大型の銃火器を撃てる状態にしていた。


「10、9、8、7……」


時計を見ながらリーダーの女性はカウントダウンを行い、それを片耳で聞きながらその場の全員が神経を尖らせる。


「3、2、1……」


0の代わりに銃を構える女性、それに合わせて場の緊張感が最大まで高まり、空間そのものが凝固したような雰囲気が場に流れる。


「………………なあ、襲撃予告時間はもう過ぎてるよな?なにも起こらねえじゃねえか」


暫しの沈黙の後、おもむろに鷹典が誰に言うでもなく、皆が口に出せずにいた事をずけずけと言い出す。


「油断するな。そうやって油断させるのが敵の狙いかもしれないのだ」


リーダーの女性が銃を構えて神経を張り詰めたまま、鷹典の言葉に返答を返す。


「それ言い出したら今回の予告は嘘で、別の目的の為に俺たちをここに固めた可能性だってあるだろ」


そう言い捨てながら、鷹典は手に持っていた銃を指でクルクルと回して緊張を解き、サデノールと呼んでいた女の方を向く。


「サデノールもそう思うだろ?襲撃予告なんて大胆な事をしたからといって、その後の行動が馬鹿正直とは限らないって」


「……?タカノリ、なんだかいつもと違……」


鷹典とそれなりに付き合いが長いのだろうサデノールは、いつもとは何かが違う彼に対し疑問を投げかけようとしたその時、油断していた彼女の喉を鷹典は手に持っていたナイフで切り裂いた。


「……ガフッ!?タカノリ……なんで……!」


「しまった!」


リーダー含め、その場の全員が鷹典の豹変に驚きつつもすぐに武器を向ける、が……いつの間にか現れていた透明な触手が、全員の腕を包む様に拘束してしまう。


「どうなっている……ん、アルガーか?もしもし、こちらセレナ、たった今襲撃を受けている、増援を要請したい」


驚くリーダーの女性だったが、すぐに通信が入ると冷静に対応を始める。


「……セレナさん、ですか?……残念ですが、こっちはアタシを除いて全滅しました……」


「なんだと![策謀の隷属器]はどうした!」


「鈍いこと言うなぁ、目の前に見えてるでしょ」


部屋全体から響くようにして嘲笑気味な声が広がり、その発生源らしき壁から怪しく七色に輝くローブを着た男がぬるり、と現れた。


その男の側に鷹典が側近のように従うが、見ればその鷹典の頭上に手のような奇妙な機器が稲妻をほとばしらせながら浮かんでいる。


「んーふふ、便利だろうなぁと思って最初に奪っといて正解だったよ、だってこんなに綺麗に嵌ってくれるんだからさぁ〜」


「お前は何者だ?何が目的だ」


「さぁ〜?だれなんだろうねぇ〜」


危機的状況でも冷静にザビメロは男を問い詰めるが、ふざけた態度で流されてしまう。


「ふざけるな!何故秘匿されているカードの情報を知っている!いや、そもそもどうやって封印を解いたんだ!?」


崎山(さきやま) 那恋(なこ)、今回の作戦リーダーで、アルカネラ支部のギルド長の右腕……[策謀の隷属器]を守ってたコロニーガードの隊長さんもそうだけど、肩書きばかりでお話にならないね」


怒りを露わにしながら質問責めをするリーダーの女性を見下ろし、男がフフッと笑う。


「さて、まともに抵抗出来ないだろうし、大人しく奥のものを貰えればこれ以上は何もしないであげるよ」

「貴様の下らない要求など呑めるか!封印カードを世に放つ訳にはいかない!」


ザビメロはそう啖呵を切ると、拘束された腕を無理やり動かしてカードをプレイした。


「『アネルベスに潜むもの』を召喚!」


ザビメロの前に大きな体躯を持つ怪物が現れる。


昆虫の様な細長い脚が黒い甲殻で覆われた身体の側面に並び、骨が剥き出しになったような巨大で凶悪な顎は形容する言葉が出ないもので、その姿はまさに異形だった。


その異形はすぐに召喚者と敵対しているローブの男に襲いかかるが、軽い身のこなしであっさり躱すと男もタクティカルプレートを目の前に呼び出す。


「デワース、そんなにやる気なら少し遊んであげようか!」

        本日のカード紹介コーナー

黒 リバース・オブ・ザ・デッド 5

スキル

墓地のユニット一体を対象とする、それを場に出す。

フレーバー:次の死は完全なものであってくれと祈っておくんだな

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