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19.遅い帰りと早すぎる再会

「どーも、ギルド調査局のバデラ・カノマルでーす。そこに転がってるのが最近いろんな区域で命の()り取りしてたっていう馬鹿野郎ですか?」


薄緑の長い髪を整えていないせいで顔の半分が隠れているギルド職員の制服を着た女が、コロニーの治安維持部隊であるコロニーガードを連れて蘇生院に現れた。


「随分早かったな、税金ドロボーのくせに」


「ちゃんと仕事してるのに悪態つかれるのは心外ですね、まあ人殺しの言葉なんてどうでもいいですが」


バデラを睨みながら罵倒するひまるに、バデラも冷たい視線を返す。


「しっかし、この口の悪さは致命的ですねー、顔が好みなだけに残念」


「ウチもあんたみたいな女は無理だからお互い様」


「ギルドも随分と癖の強いやつを寄越したな、まあ仕事してくれるならなんでもいい、さっさと連れ帰ってくれ」


この場に居心地の悪さを感じたノルガマードがそう言うと、バデラは無の表情でリゼリア達の方を向く。


「まあそうしてもいいんですけど、この人かなり実績があるみたいなんですよねー、なので特別措置を施します」


そう言って、バデラはひまるの首に手を掛けるとカチャッという音を鳴らして何かを付ける。


「え?なにこれ首輪?くっ、取れねぇじゃん……」


「爆破機能付き監視装置です。中を暴こうとしたり、周囲の解明者を切りつけたりしたらボンってなりますよ」


「中々エゲツないものを用意してるね、そこまでしてこいつ使う気なの?」


「実力者はいくらいても足りないくらいですからねー、それに使うのは私じゃないですよ」


バデラは二人を見比べるように観察する。


「というわけで、この狂犬を躾けたい人はいますか?」


それを聞いて、察した二人が顔を見合わせる。


「おれは傭兵だ、こんなのを連れてたらパーティに雇われない。つまりリゼリア、こいつはザビメロに押し付けろ」


「はーい」


「では監視員はザビメロさんで通しておきますね。まあ本人が許可しなかったらギルド(うち)で引き取るんで心配しないでください」


「別に心配はしてないよ」


リゼリアの素っ気ない返事に、「そうでしょうね」と言ってバデラはひまるを連行していった。全てのいざこざが済んだことを確認して、オーナイドが手を叩くと、流石にギルド職員が登場して沈黙していた外野が再びテーブルを向いて騒ぎ始める。


「ん〜……っと、全く初のダンジョン調査なのにとんでもないのと出会っちゃったよ、ザビメロが警戒してなかったら少し危なかったかも」


「ハハハ!そりゃ災難だったな!だがアルカネラの技術を上げていけば、どんな事態にも恐れることはないぞ!」


全ての処理が終わり、ググッと腕を伸ばして背伸びするリゼリアに、やはりズレた助言をオーナイドがする。


「リゼリア、お前ももう疲れただろう。だから今日はひとまず帰るぞ、おれはザビメロに報告しなければならんし」


そう言って蘇生院を出て行こうとした時、ノルガマードの端末がけたたましく鳴り出した。


「ん、ザビメロか?もしもし」


端末に耳を傾けて何かを話し合うノルガマードの表情が少しずつ曇っていく、だが何かの拍子に顔が明るくなり、そのまま上機嫌に端末を切った。


「リゼリア、すまないが一人で帰ってくれ」


「電話の相手はザビメロ?随分と表情がコロコロ変わってたけど、何があったの?」


「いやなに、ちょっと仕事を頼まれたんだ。実入りがいいそうだから報告も兼ねて話を聞いてくる」


それを聞いたリゼリアの眉間に皺が寄る。


「ザビメロがあなたを雇ったのって、私を守る為だったのに彼はそれすっぽかして別のこと頼もうとしてるの?明日も調査行きたいのに」


「それについては本人が戻ってきた時に聞け、どっちみち今のお前は自身が思ってる以上に疲労している。まずは宿に戻って休め」


「……分かったよ」


リゼリアは何か言いたげに口を尖らせたが、実際目の前の雇われただけの傭兵に行っても仕方ないと理解し、素直に帰路へとついた。


………………


「いや遅すぎ、端末に連絡しても通じないし、何やってんだろ」


宿に戻り、下着にブラウスだけの姿でベッドに腰掛け足をブラブラさせながら、リゼリアは端末を持ってザビメロからの連絡を待っていた。


「なんで私がおっさんからのメッセージを待たなきゃいけないのよ、待つならもっと……」


(もっと……なんだろ……?何か、何か大事なものを待ってた気がする……)


ベッドに倒れ込み、天井を眺めながらリゼリアは一人考え込む。


思い返せば、自分のことは一切分かっていないまま、目まぐるしい展開で今日この瞬間まで来ていたことをリゼリアは気づいた。


(そういえば、私は元の世界のことも、自分のことも分からないままだ。今の私にはなにもない)


だがすぐにそんな空っぽだった記憶が、ザビメロとの出会い、人々に揉みくちゃにされた初日、強敵との出会いで満たされていることに気がつく。


(でも、今はザビメロやノルガマードがいる。それに萌丹歌やオーナイドみたいな変な絡み方する連中も……今はそんなこと気にしても仕方ない)


デッキケースを握り、それを腕を伸ばして自分の前まで持ってくる。今の自分を形作ったこの小さな紙札たちを眺め、いつか出会う切り札に想いを馳せた。


するとそこへドンドンドン!!というドアを叩く音が強烈に鳴り響いた。


「はーい、すぐ出るから待って!」


慌ててシャツを着て部屋の入り口へと向かうリゼリア、連絡もせずにやってきた事に疑問を感じつつも、ようやく帰ってきた事に安堵して確認もせずにドアを開いた。


「あ……え?」


「…………」


ドアを開け、無言のまま立っているノックした人物と目が合ったリゼリアは思考停止してしまう。そこに立っていたのは……


「ひまる……?」


腕に大きな拘束具を付け、何か巨大な器具がぶら下がったマスクを付けているが、その服装や薄ピンクのフワッとしたウェーブの掛かった長髪はリゼリアの記憶に焼きついていた。


それはリゼリアが殺し、そして復活させた殺人鬼、羽田原 ひまるだった。

        本日のカード紹介コーナー

白 ギムレット 2

オブジェクト カクテル

このオブジェクトが出た時デッキの上から五枚のカードを見る、その中から一枚選んで消滅させる。

コスト3 このオブジェクトを破棄:このカードによって消滅しているカードを手札に加える。

フレーバー:ジンにライムジュースと糖類を混ぜた「コーディアル・ライム」をシェイクしたカクテル。

伝説的ハードボイルド小説の有名なセリフ、「ギムレットには早すぎる」からカクテル言葉は「遠い人を想う」となっている。

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