17.アルカネラ狂いと怒り狂う獣
「ふーむ、すまないそこのブーソフィアの青年、ちょっと聞きたいんだが、ここは蘇生院で合ってるのか?」
「おっとあんた、この区域は初めてかい?驚いたろ、ここの蘇生院は一般住民も普通に出入りするんだ。その理由は見ての通りアルカネラさ」
ノルガマードが一番近い位置にいた狼の耳を持つ青年に話しかける。すると、こういった事は珍しくないのか青年はすぐに意図を察して説明を始める。
「だからここは常に人で賑わってるんだ」
「だが、何故蘇生院なんかでやっているんだ?他にも良い場所はあるだろう?」
「もちろんそれにも理由はあるさ、なにせここの司祭はアルカネラの実力者なんだ、だから挑戦者や教えてもらいたい人がここに集まってる」
「お前たち!今日も元気にデワースしてるな!」
ノルガマードの質問に青年が丁寧に答えていると、急に施設全体に響くような大声の挨拶をしながら如何にも司祭といった風貌の男が出てきた。
「え……あれが司祭なの……?」
「あんなに快活とはな、院内の様子も特殊だが、司祭自身も変わり者のようだ」
「いや、態度の話じゃなくてあの顔……」
その司祭の種族も、ヒューマンとは違うものだった。その体色は見事に青に染まっていて、短髪で剥き出しの額から二本の白い線が流れており、それは白目も黒目もない青白い光を漏らしているだけの双眼を通って首元まで続いていた。
体色、眼の輝き、そして顔の模様……その全てが彼がヒューマンではないことを表していた。
「おっ!新入りがいるじゃないか!ようこそストレンジフィールドへ、そして最高の勝負を約束する地アルカネラへ!」
司祭はリゼリアの方を向き、何やら盛大に歓迎の言葉を唱える。どうやら恒例の挨拶のようだ。
「……なんで私が新規の流されモノって分かったの?なんか気持ち悪い」
「ハハハッ!当然のセリフだな!信じられないかもしれないが、オレたちブドン=ジュナ族は大地と繋がってそこから力を受け取って暮らしているんだ。だから大地から伝わる気でその人が何者か分かるんだよ」
にわかに信じられない話を聞かされ、リゼリアは反応に困る。しかし、その男の見た目はその不可解な理屈を補強するには十分な異様さであり、リゼリアは強引に納得せざるを得なかった。
「初めましてだな、おれはノルガマードだ」
「初めまして!オレはオーナイド、ここは他と違って騒がしいだろ!オレは賑わってる方が好きだからこうして皆で楽しめる場を作ってるんだ!トユナエィン族長が見たら大層お怒りになるだろうがな!ハハハッ!!」
ノルガマードに自己紹介をされ、返事としてオーナイドも自己紹介をしながら豪快に笑う。
「私はリゼリア、ところであんたもカードプレイヤーなんだってね、強いからみんな集まってるって」
「それもあるが……オレのカードが有用だからそれを貰う為に集まってるというのもあるな、新規入場者には必ずやるようにしてるからお前たちも受け取ってくれ」
そう言って、リゼリアとノルガマードにオーナイドがカードを渡す。
黒 アルカネラの司祭 オーナイド 3
1/3 オンリー・ユニット ブドン=ジュナ 聖職者
【加重】:3(このカードをプレイする際に追加で加重のコストを支払ってもよい。そうした時、追加で下の+の能力を発動する。
このユニットが出た時、自分の墓地からカードを一枚手札に加えてもよい。
自分の場にユニットが三体以上いる時、このユニットは+3/2の修正を受ける。
+このユニットが出た時、自分は墓地からユニットカードを一枚場に出す。
「ふーん……黒か、私は今のところ使う気ないな」
「そうか、だがおれの分も貰ってくれ。おれはもっと使う機会がないからな」
「ちなみに本来なら二枚目以降はおれが開催するプライベート大会の参加商品なんだ。複数欲しいなら蘇生院でやる大会に参加してくれよ!」
「はあ、分かったよ。それよりここに書かれてるオンリー・ユニットって何?」
元気よくそう伝えるオーナイドに、リゼリアがやりずらさを感じつつも、カードプレイヤーとして気になる点を質問する。
「オンリーと書かれたカードは場に一つしか出せないんだ、ユニットでもインポートでもオブジェクトでもな。既に同じカードが場に存在する時に出したらどっちかを破壊する必要があるし、『出た時』で発動する効果も発揮できない。」
「へぇ、それは大事なことを聞いたかも、ありがとうね」
「ワハハッ!為になったのなら良かった、オレは新入りに教えるのが大好きだからな!それより蘇生する者がいるのだろう?そろそろ始めようか!」
リゼリアが素直に礼を言うと、オーナイドは快活に笑い、そして唐突に本来の業務の話に戻る。そんなオーナイドの言葉に、衝撃で本来の目的を忘れていた二人はハッとなった。
「そういえばそうだったな、蘇生は他と同じでいいんだな?なんだが人がいる中でやるのは中々気が引けるな……」
「よほど酷い状態か、酷い臭いを放ってなければ皆慣れてるから心配ない。酷い時は事前に知らせてもらって人払いを行うが」
「治療院の受付で他の区域では聞かれない死体の状態を聞かれた時は謎だったが、そういうことか……」
困惑しながらもノルガマードは、蘇生院の中心にある陣の彫られた平らな台座にひまるの入った袋を置き、それを開封する。仄かに血の匂いが院内全体に広がる。
「では頼む」
「よし、では上手くいくよう祈っててくれ」
「あれ?その言い方って、失敗する可能性もあるってこと?」
オーナイドの言葉に引っ掛かったリゼリアが蘇生の直前に問いかける。
「そうだ、オレたちも全力は出しているが、それでも稀に塵となって消滅してしまうんだ、そうなると再生の洞窟で蘇るのを待つしかない」
「だが再生の洞窟は蘇生するタイミングがまちまちなんだ、消滅してからすぐに再生することもあれば、数十年経っても未だ戻ってこないやつもいる。解明者の間じゃ常識だ」
「失敗する可能性も、その後蘇る可能性も全てその時振ったサイコロの目次第ということだ、まあカードの引きと一緒だな!」
そう言ってハハハッ!と笑うオーナイド、そんな彼のあまりに簡単な考え方に、リゼリアは内心ドン引きした。
「よし!じゃあ改めて始めるぞ」
そう言うとオーナイドは手を前に突き出して組み、聞き取り不可能な謎の言葉で呪文らしきものを呟きだす。
すると、台の紋様が青白く輝きだし、次第にそれは院内全体を包み込む程まで強い光となっていく。
やがて光が収まり、元の景色に戻る。光の中でひまるの身体は完全に修復されていたようで傷一つない姿になっており、そんな彼女が少しずつ体を動かしてゆっくりと目を開けた。
「う……ここは……」
「成功だな、リゼリアこれが蘇生だ」
「正直、これが当たり前ってのがこの世界に来て一番の驚きだよ」
「あ゛あ゛っ!?てめえらよくも!」
目を開けて状況を理解したひまるがノルガマードとリゼリアに飛びかかる。しかしそれは寸前でオーナイドに抑えられてしまった。
「本当に狂犬だな」
「ビビったぁ、さっきまで死んでたのに活きが良すぎでしょ」
「このっ!離せ!」
「事前情報通りの人物のようだな。もうすぐコロニーガードとギルド職員が来るから大人しくお縄につくといい」
「事前情報通りって、こいつが危険人物って知ってたんなら人払いしときなよ。というか先に縛れば良かったじゃん」
リゼリアが真っ当な事を言う中、ひまるはオーナイドにやって完全に拘束されて動けなくなった。
「ああクソッ!こんな連中のふざけたお遊びカードで終わりとか最悪……」
「そうやって見下してるから足元を掬われるんだ。ちゃんと反省してアルカネラの素晴らしさを理解するといい」
(なんかズレてるなぁ……)
身動き出来ないひまるが悪態をつく。するとそんな彼女にオーナイドがアルカネラを馬鹿にしたことに対する説教をはじめ、それに対してリゼリアが心の中でツッコミを入れた。
本日のカード紹介コーナー
黒 アルカネラの司祭 オーナイド 3
1/3 オンリー・ユニット ブドン=ジュナ 聖職者
【加重】:3(このカードをプレイする際に追加で加重のコストを支払ってもよい。そうした時、追加で下の+の能力を発動する。
このユニットが出た時、自分の墓地からカードを一枚手札に加えてもよい。
自分の場にユニットが三体以上いる時、このユニットは+3/2の修正を受ける。
+このユニットが出た時、自分は墓地からユニットカードを一枚場に出す。




