閑話.神々の宴
僕は、周囲の明るさと騒がしさに目を覚ました。
ここはどこだろう?
ふわふわとした白いもやが広がり、まるで雲の上にいるような感覚だ。
わはははは……
ん? この声は?
僕は、雲の中を進んでいく。
雲を抜けると、開けた草原に出た。
大きな切り株の周りに、人が集まっている。
アマテラスさん、シンノウさん、そして、やっぱりガイアさんだ。
雲の向こう側から、人影が現れる。
「これはこれはご無沙汰しておりました! ウマヤドさん、ようこそお越しくださいました」
幼い女の子が、髪をオールバックに固め、横長のメガネをかけ、あごひげを申し訳程度に生やした男性を招き入れた。
「やー! アマテラスちゃんかいな? よー見んうちに、可愛らしゅうなってからに!」
この、ウマヤドと呼ばれた男性は、かなり訛りが強いようだ。
「はて、ウマヤドノミコ殿、たしか一度、どこかでお目にかかりましたかな?」
シンノウが声をかける。
雰囲気は全く違うが、顔のつくりは似ているので、同じ地域なのだろう。
「あー! シンノーはんでしたな? ご無沙汰しとります。調子はどないですか?」
「おかげ……いや、ボちボちでンナ!」
シンノウの訛りが片言すぎる。
ノリはいいようだが……
だが、ウマヤドさんは、右から左に受け流したようだ。
「いやま、それが一番でっせ! んで、お隣の、お姉さまは、初めましてですな? ウチは、ウマヤドと申します。人間の世界では、ショートクとか呼ばれて、建築を専門にしとります。よろしゅうに!」
「あっはっはっ! 俺はガイアだ。俺は熱くたぎるマグマ、大地を司っている! そこんとこ、ヨロシク! あっはっはっ! 底とそこをかけたんだ! おもしろいだろ? だろ?」
もう既にハイテンションのガイアさん。
もしかして、かなりお酒をのんでますか?
「まあ、えらいことになっとりますな? 神さんが三柱もおるっちゅうのは、初耳でっせ!」
受け流すのが上手なウマヤドさん。
「えぇ、わたくしたちもビックリしておりますの!」
僕自身が、一番ビックリしてるんだけどね。
まだまだスキルをもて余してる気がするし。
なんでこんな力がもらえたのか、一番わかっていないと思うし。
「しかし、ウマヤド殿ほどの神霊が、一人の娘に力を貸すというのも珍しいのじゃが?」
あぁ、この人(?)はフリンに授けられた力の持ち主なんだ。
普通は、爪の先ほどの「力」しか貸さないらしいから、フリンもスゴい「力」を100%使えるのか。
だから、あの「仮の家」ができたんだな。
「そーなんですわ。ウチもビックリしましたわー、力を貸したはエエんですけどね、突然、食うに困るようになってもーて、ほしたら、おたくらの兄さんが、助けてくれましてな、ほんま、おおきに!」
「まあ、今はそんな硬い話、いーじゃねーか! とりあえず、飲も! 飲も!」
あ、やっぱり、酒が入ってる……ガイアさんは「そんな話」で流すんだ。
「あー、おおきに! オトトト、グビッ、プハァ! いや、こらまた、エエ酒ですな!」
あなたもちゃっかり飲むんですね。
「今日は、わたくしがどぶろくをお持ちしましたの! 昨日は、シンノウさんが老酒を、明日は、ガイアさんがワインを持って来てくださるのですよ!」
毎日、酒盛リナンデスカ?
ドブロクッテナンデスカ?
ラオチュウッテナンデスカ?
この人(?)たちの感覚が理解できない。
「いや、そないなことになってるとは! わかりました、ウチも一発で酔える酒をお持ちしましょ! えー、そらもー! 一発でノックアウトですわ!」
いやいや、一発で酔えるって、どういう酒ですか?
それより、また来る気なんですか?
「また、酒が飲めるんだな! ヒャッホーッ!」
いや、ヒャッホーじゃないですよ、ガイアさん……
「ウマヤド殿、気をつけなされ。ガイア殿は、カラミ酒になりますからな……」
うーん。そうでしょうね。想像できます。
ベロンベロンに酔っぱらって、説教されそうな気がします……
「さすがに、裸踊りをしたりはせーへんでしょ?」
「それはありませんが、どちらかというと、ガイアさんはキス魔になることが多いと思いますよ」
うわ、説教よりも質が悪いじゃないですか!
「そうなんじゃ! ハンパないんじゃ!」
「なんだよ、シンノウも泣き上戸じゃねーかよ! てか、どれだけ飲んでも変わんねーのは、アマテラスだけじゃねーか?」
「へぇー、アマテラスはん、そんなにお強いんでっか?」
たしかにアマテラスさんは、どれだけ飲んでも、ずっとニコニコしてそうだ。
すでにシンノウさんは、涙目になっていますが……
「いえいえ、嗜む程度ですよ。量でいえば、ガイアさんの一人勝ちです!」
ガイアさんは、いったいどれくらいの量を飲むのだろうか……
「あっはっは! そーだなー、もう二本目が無くなるかもな! まあ、パーッと行こうぜ!」
え? その容器は、かなりの量が入りますよね?
もう、二本目がなくなるんですか?
だれか、ガイアさんの暴走を止めましょうよ?
「無理です!」
「ムリじゃ!」
「あんさん、やってみなはれ!」
うわぁぁぁぁっ!
僕は叫び声と共に目を覚ました。
朝日が窓から差し込んできていた。
夢の中で、僕は一滴も飲んでいないのに、割れるように頭が痛かった。
ナゼデショウカ?
歳末大感謝祭!
ブックマークしてくださった28名の皆様!
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おかげさまで92ポイントとなりました!
つきましては、歳末大感謝祭として、30日まで毎日更新します!
これからもどうぞよろしくお願いいたします!




