第20話 追うもの達1・テイルとマジョ
ガーラ大迷宮四区。
閃光が走り、竜の頭が弾け飛ぶ。光の残滓を追うと飴色の矢が刺さっていた。射手は獲物をうまく仕留めたことで安堵し、大きく息を吐く。
琥珀色の弓を携え、髪を後ろで団子状にまとめた男“テイル・フェアリー”は翼のない竜を追っていた。九区で人間を守るように戦っていたリザードマンが気になり、単独で四区まで来たのだ。
「……誰だ」
背後に気配を感じて振り返る。
「よく分かったわね」
通路の奥から顔の右側を覆うようにやけどを負った若い女が現れた。染めた黒い短髪で歳は二十歳前後に見える。
「俺に何か用か?」
「別に。ただの通りすがりよ」
「そうか……ここは危険だ避難場所まで送ろう」
「嫌よ。変なトコに連れ込まれるかも知れないし」
テイルは鼻で笑った。
「あいにく今はリザードマンに首ったけでな。女と遊んでいる暇はない」
「それって翼のない竜のこと?」
「……お前も見たのか? 俺はそいつを追っている」
「ふーん、私は眷属竜にされかけたのを助けてくれたのよ。多分一区の方に行った。なんだろーねあれ」
「さぁな。だが、竜を倒す何らかの鍵を握っていると踏んでいる。勘だがな」
「ふーん……それじゃあ私もついて行く」
「やめておけ、死ぬぞ」
そう言った瞬間、女がナイフを投げ、テイルの足元にいた毒蛇を殺した。
「私、結構強いのよ。それに二人の方が何かと便利だと思うけど?」
「…………」
「どっちにしろ私は一人でも行くわ。探し物があるしね」
「探し物とは?」
「若返りの秘薬“魔女の腕”よ」
テイルはそれについて聞いたことがあった。指が無数にある老婆の手のようなもの。それが実在するかは定かではない。
「十分若く見えるがそんな物が欲しいのか?」
「実は三百歳くらいかもね?」
「それはないな。言葉に含蓄がない」
「……嫌な人」
テイルは女を値踏みする。華奢で少し押すだけで壊れてしまいそうだ。一人で行かれて勝手に死なれたら寝覚めが悪い。
「足手まといと判断したら置いていくからな」
仕方なく連れて行くことにした。最悪どこか途中の人里に置いていけばいい。
「それはこっちの台詞」
「俺はテイル・フェアリー。運び屋をしている」
運び屋とは、竜の襲撃により死んだ流通を補うように現れた手紙や物資を運ぶ者達のことだ。常に危険が伴い、誰でもできる仕事ではない。
「で、お前は?」
「秘密。マジョとでも呼んでよ」
「は、勝手なやつだな。まぁいい、どうせ長く居ることはないしな」
こうして妙な距離感の二人はリザードマンを追うべく一区方面へと歩きだした。




