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【完結】竜殺しのリザードマン 〜竜に支配された世界で自分だけ“竜殺し”の力を手に入れて“劣等竜リザードマン”になった男の逆襲物語〜  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第1章 ガーラ大迷宮編

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第15話 白獅子団1・団長と副団長

 緑眼の竜を倒したリンドウと鍛冶屋ドゥワフ。


 コバコは、やけどの女が他の人間と合流したのを見届けて戻ってきていた。


 それから休憩を取りながら先へ進み、ドゥワフの第二工房がある四区へ無事にたどり着いた。


「尻尾は治んのか?」


 鍛冶屋ドゥワフが兜を取り、左眼の眼帯のズレを直しながら問いかける。


『ああ、手足と尻尾は再生する』


 およそ一日で治る。


「便利なこって」


 【脱皮】も一日経てばまた使えるが、荷物を置き去りにしてしまうのであまり多用はしたくない。特にネックレスを失うのは避けたいのでコバコに預けることにした。


 雑談をしながら進んでいるとドゥワフの第二工房へ到着。


「やっぱ武器はあらかた持ってかれてるな」


 竜と戦うためか、あるいは火事場泥棒的な奴に盗まれたか工房は荒れていた。


「こんなこともあろうかと隠し部屋を作っといて良かったぜ」


 棚をずらして、偽の壁を外す。現れたもう一枚の壁の(くぼ)みを押すと、(きし)むような音を立てながら隠し扉が開いた。中は無事であり、年代物の武器や防具が溢れていた。


 ドゥワフはさらに奥の隠し棚から琥珀(こはく)色の武器を取り出した。


「ほれ、“鉤爪(かぎづめ)ヘルタロン”だ」


 謎物質でできた鉤爪。五本爪で指に嵌めることができ、腕に巻くベルトで固定する。リンドウが左手に装着してみると不思議と手に馴染んだ。さらに体の色に合わせてベルトごと黒く染まっていく。


 リンドウが驚いた顔を見せる。


「生きてるみてぇだろ? 装着者の爪の大きさ、色に合わせて変化するんだ。ベルトは別の素材なんだが“避役爬(ひえきは)竜”の体でできていて、こちらも周囲の色に合わせて変わる」


 避役爬(ひえきは)竜はカメレオン型の竜のことだ。


 したり顔のドゥワフ。相当お気に入りのようである。


「片手分しかないから無くさねぇようにな。あと他にも似たような武器があるらしいぞ。九つ集めると願いが叶うとかなんとか」


 リンドウは迷信を信用しないので軽く流した。


 光を反射して光る鉤爪に少しだけ見惚(みと)れていると、手首のベルトに文字が刻まれていることに気付く。


「その文字は古代語で“(いただき)で女神は目覚め”って書かれてんだ。どういう意図で書かれたのかはわからん」


『随分寝相の悪い女神のようだな』


 と、木の板に書いた。


 たしかにな、と、ドゥワフは鼻で笑った。


「この鉤爪なら王竜……は分からんが雑魚竜ぐらいは難なく狩れるだろうぜ」


『家宝だろ? いいのか?』


「道具は使ってこそだ。武器なら尚更な」


 リンドウはありがたくもらい受けることにした。


「それから体を採寸させてくれ。鎧をお前用に加工すっから」


『いや、鎧は擬態の関係上着けられない』


 【体色変化】がある以上ほぼ半裸でいなければならないのだ。


「ばーか、そんなことは百も承知よ。その鎧は鉤爪のベルトと同じ避役爬竜の体を使う。さっき見たとおりこいつは周囲に溶け込むように色が変化するんだ。ほぼ透明と言っていい。つまり今と変わらずに攻撃を防ぎつつ持ち運べる荷物の量が増える。さらに! コバコちゃんの入れるポケットを付けよう!!」


 コバコが触手を二本掲げ『うぉー』と歓喜のポーズをとり、ドゥワフとハイタッチした。リンドウはヤレヤレと肩をすくめた。


 結局、作成することとなり、適当に採寸が終わった。


「さて、天才の俺様でも加工に半日はかかる。それまで適当に休んどいてくれ」


『いや、先に進む。一区のアマゾ大森林方面にある第三出入口に持ってきてくれ。竜を殺しながら行くから一区を攻略する頃には合流できるはずだ』


「……マジかよ。いいけどよ、お前ホント戦闘狂(バトルバカ)よな」


 呆れつつもこいつなら成し遂げそうだとドゥワフは顔を引きつらせる。


 リンドウとしては竜を殺したいというのもあるが気になる人間がいた。


 迷宮の自警団である“白獅子団団長のリダ”だ。リンドウを何度か白獅子に入団しないかと勧誘してきた男だ。兵士()になりたくなかったため断ったが、マジメで実直な人物という印象を受けた。


 今日(こんにち)まで彼とその団員によりガーラ大迷宮の治安は守られてきた。信頼できる男だ。


(竜が一区から来ているとしたら白獅子はほぼ全滅していてもおかしくないな)


 それでもリダは生きていると半ば確信していた。簡単にくたばる奴ではない。


 リンドウは身支度を済ませ、ドゥワフと別れてコバコと共に三区へ向かった。



 ガーラ大迷宮二区避難所。獅子の紋章が刻まれた純白の外套(がいとう)を羽織る集団“白獅子団イノセントレオ”が広場に集まっていた。


 その一角にあるテントに団長と副団長、幹部が椅子を並べて厳しい顔で座っている。重苦しい雰囲気の中、白髪で二十代後半の若き団長リダが口を開く。


「これより竜対策会議を始める。サンボ、現状報告を」


 眼鏡を掛けた生真面目そうな男サンボが前に出る。


「はい。現在ガーラ大迷宮は一区を中心に竜が溢れており、四区以降も同じ状況と思われます。無事が確認されているのは三区と二区の避難居住区のみ。壁のカムフラージュでなんとか誤魔化している状態です」


 三区と二区は横並びにあり、どちらからでも一区に行けるようになっている。三つの区の中心点を結ぶと三角形になる位置関係だ。


「人員についてですが、我らが白獅子団は三区と二区それぞれに約二百名、四区と一区に派遣中の五十名を確認。市民については現在調査中で五百は超えているとのことです。市民の精神状態は極めて不安定であり、狂った行動や暴れる者、自殺者が散見されています」


 状況は(かんば)しくなかった。


「赤眼竜の居場所は掴めたか?」


「一区に向かった偵察隊の一部が音信不通。中央溶岩帯付近で消えた隊が多いことからそこに赤眼の竜——通称“ティラノ”の巣があると思われます」


 幹部の一人の老躯(ろうく)の男が鼻を鳴らす。


「ふん、寄生虫どもがやはり居着いたか。これで戦うしかなくなりましたな」


 竜が迷宮外に出ていってくれれば多少は助かったが、そう上手くはいかない。巣を作り繁殖されたら人間は全滅しか道がないだろう。


 団長リダが厳しい顔をしながら発言する。


「……まだ時間はそれほど経っていない。巣の防備も完全ではないだろう。潰すには今しかない」


「無謀ですな」


「だが他に有効な手段はない。残されているのは地図外から新たな出口を探すか、食料を手に引きこもるか、あるいは自害か。それとも英雄が空から降ってくるのを待つか?」


 沈黙。誰も反論する言葉を持たない。見かねたサンボが進言する。


「戦うとして作戦はどうしますか?」


「三区側の隊が(おとり)となり敵勢力を巣からおびき寄せ、我らのいる二区側からティラノを叩く。頭を叩けば後はどうとでもなる。今いる白獅子ほぼ全員投入するぞ」


 ほぼ全戦力を投入する総力戦。一度敗北すれば終わり。退路はない。


「人同士の殺し合いで終わるよりはマシ。といったところですかな」


「勝つさ。白獅子は負けない」


 その後、団長は作戦を煮詰めて団員に指示を出した。



 二区避難所三区方面出入口。二十代半ばくらいの金髪の男“白獅子団副団長デプティー”とその配下が白磁(はくじ)のような鎧を着込み、作戦のため三区へ向かおうとしていた。


 見送りには団長リダがいた。


「損な役回りですまない」


「なーに言ってんすか。オレ的に一番良いとこっすよ」


 三区の囮側を指揮するのは副団長デプティーだ。危険かつ作戦の(かなめ)だ。


 デプティーは団長の肩に手を置いて続ける。


「ま、オレが死んだら白獅子は任せるぜ」


 二人は幼馴染で白獅子も一緒に作ったのだった。


 五年前、衛兵がいなかったガーラ大迷宮で真っ先に兵団を作ろうと言い出したのが二人だった。初めは軽い気持ちで作り、小規模で終わると思っていた兵団が気付けばあれよあれよと大きくなっていった。言い出しっぺの二人はそのまま団長と副団長になった。誰からも文句はなかった。


 そして白獅子のシンボルを作った。


「白獅子は正義の証。暗闇でも民を導けるよう白い体をしている。我らの敗北は民の死だ。デプティー、死ぬな」


「お前もな」


 お互いに剣を抜き、打ち合わせる。


「チンタラしてたらオレがティラノを倒しちゃうぜ?」


「ふっ、期待している。あとで会おう」


 そして副団長の部隊は移動を開始した。

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