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鉄と真鍮でできた指環 《4》 ~魔窟のエクストリーム~  作者: とり
 第2幕 芸術の都(みやこ)にて
20/66

20:スケッチブック


 ・前回のあらすじです。

 『和泉いずみたちのまわりに、妖精ようせいらしきひかりがあらわれる』





 ガイドの女性じょせいは白いてぶくろをはめた手で、あたまのよこに飛んできた妖精ようせいをしめした。

「すでにお気づきのかたもいるかも知れませんが。これらは【幻覚】の一種いっしゅであり、ほんものの【妖精】ではありません」

「へえー」

「はあー」

 とおどろきと感心のまじった声が、団体客からあがる。

 和泉いずみはうしろのほうからみみおおきくして、彼女かのじょたちのやりとりを聞いていた。

(幻覚……。ってことは魔術まじゅつか。これが?)

 ふわふわとただようはねのはえた小人こびとをつつむ光を、また手ですくったりしながら、和泉はおずおずあるきだす。

 ひるの日光に全身を白く輝かせた荘厳そうごんな大建築物が、ぽっかりと門戸もんこをあけて、茫漠ぼうばくとした前庭まえにわをさらしていた。

 中央ちゅうおう大噴水だいふんすいがあり、東西南北とうざいなんぼく舗装路ほそうろがかよっている。

 芝生しばふのあちこちに東屋あずまやのようなはしらと天蓋の休憩所きゅうけいじょがある。

 『宮殿きゅうでん』――プリンピンキアの校舎だ――までの通路には、和泉が【おもて】の『日本にほん』でにしたような、食べものやジュース、ゲーム、福引ふくびきなどの屋台が立ちならんでいた。

 よくみてみれば、学校のいりぐちの『プリンピンキア学園祭がくえんさい』とかざりつけられたはなのアーチから、はしのあたりで目にしたような『妖精』がふわりと出現しゅつげんして、飛んだりはねたりしている。


 看板かんばんにえがかれた絵が、ホログラフのようになって飛び出しているらしい。

「なんか魔法まほうらしい魔法だよなー」

 学生や近隣の住民じゅうみんでごったがえす前庭まえにわを、和泉いずみはクロとあるいていった。

 店番みせばんをしているこの学校の生徒らしき青年せいねんのひとりが、屋台のすみに三脚さんきゃくを出して、スケッチブックにマーカーで絵をかいている。

 彼がペンをはしらせたそばから、紙面しめんからイラストタッチの【すずめ】が六羽ろくわ飛び出して「おかいあげ、ありがとうございました」と声をそろえて礼を言う。

 ひたいに書かれたしるしが名前なまえだとすると、すずめは左からじゅんに、『いーちゃん』、『ろーちゃん』、『はーちゃん』、『にーちゃん』、『ほーちゃん』、『へーちゃん』となる。

 母親ははおやに手を引かれたちいさい子どもがふたり。めいめい買ってもらったばかりのタイ焼きをほおばりながら、【すずめ】の一座いちざに手を振っていた。

「はーちゃんがあのなかで一番いちばんかわいかったね」

「えーっ。ろーちゃんだよお」

 という声がとおざかっていく。


「こーゆーのでいいんだよ。こーゆーので。うちんとこのはどーにも、殺伐さつばつとしてて……」

 和泉は腕組うでくみをして、うんうんうなずいた。

 和泉の所属しょぞくしている【学院がくいん】は、むりにカテゴリ分けするなら「攻撃型」の魔術まじゅつ研究けんきゅう・開発がさかんである。その反面はんめん医療いりょうめんにもひいでているのはたしかだが。

 【呪文じゅもん】を媒介ばいかいした、はやさを重視じゅうしした魔術は、どういうわけか基本きほんとして、他者にダメージをあたえることを得意とする。


 つかいかたによる――ともおもわないではないのだが。

 実際の利用頻度(ひんど)として、空を飛んだりする以外には、『戦い(バトル)』や『侵入しんにゅう』において真価を発揮はっきする技がおおいのはいなめない。

「ボクたちあんまりみたことないよね。【学院】もさー。こーゆーはなやかなの研究けんきゅうしてみればいいのに」

「それもそうだな」

 クロがくすくすと言うのでおもい出した。

 和泉いずみはフィレンツォーネに、見聞けんぶんをひろめるのもねて来ているのだ。

 すこし勇気ゆうきを出して、スケッチブックをひらいている青年せいねんに、魔法まほうの仕組みをたずねようと声をかける。


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