契約その249 アメリカとのcontract!
「エリー!」
停止パスワードが変えられている、そんな絶体絶命の状況に、ユニはすぐさまエリーを呼んだ。
「はい。何かご用件が……」
「何者かに停止パスワードまで変えられてる。おそらく制御パスワードを変えた奴と同一犯だ。その事を地球に伝えられるか?」
ユニの頼みに、エリーはしばらく待つ様に伝えると、程なくして地球からの電話が入った。
「もしもし!ユニか!?停止パスワードも変更されてるって本当か!?パスワードを打ち間違えた可能性は?」
電話の主は紫音である。ユニは、エリーの持つ情報と照らし合わせて確認し、一語一句合っている事を伝えた。
「そうか……参ったな……まさかそこまで……」
(方法ならもうひとつだけあるが、それは……)
慌てるみんなの背後に、あの男がやって来た。
「オイ。どうしたんだ?早く止めろ」
その存在に気づいたみんなは、一斉に振り返る。
「お前は……」
「ヴァイロスキー……!」
憎悪に満ちた表情で睨みつける彼女達。そもそもコイツが賄賂を受け取らなければ、こんな事にはならなかったのである。
「何しに来たんじゃこのマヌケが」
彼に聞こえない様に毒づく紫音。
ヴァイロスキーは、そんな紫音を無視して、近くの研究員から話を聞いて状況を把握した。
「成程……停止パスワードすら変わった事で停止ができないと……そうか……」
ヴァイロスキーは、紫音からユニとの通信端末を奪うとこう言い放つ。
「メインコンピュータには自爆ボタンが存在する。それを押せ」
「ダメじゃ!絶対押すな!それを押したが最後……キミはもう……!だから何もせず!そこで待ってろ!わしらが対策を講じる!」
紫音は、再び通信端末を奪い取ると、ユニに叫んだ。
今日初めて会ったばかりの男と、自分の恋人。ユニにとって、どっちが信用に値するかは明白だった。
ユニは、パソコンの横に謎のボタンを見つけた。
「エリー、これが……」
「ええ。それが件の自爆スイッチです」
エリーがハッキリと答えた。
「そうかよかった……」
ひとまず自爆ボタンを見つけたユニは安心した。
そして、ユニはタブレット端末越しに叫ぶ。
「おれはこのボタンを押さない!だから何とか!対策を講じてくれ!」
「……!」
それを聞いたみんなの顔が明るくなる。
面白くないのはヴァイロスキーだった。彼としては、何としてもユニに自爆スイッチを押して貰わねばならないのである。
彼は一瞬の隙をつき、なるべく弱そうなみすかを拉致して人質を取るのであった。
「おいセクス・ユニ。こいつの命が惜しけりゃ、今から四時間後に自爆スイッチを押すんだ!」
みすかの喉元にナイフを突き立てながら叫ぶヴァイロスキー。
「みすか!」
それに慌てたユニは、自爆スイッチに手をかける。
「よせ!やめるんじゃ!そいつを押せば……ユニは死ぬんじゃぞ!」
紫音の叫び声に、その場が一瞬凍りついた。
「死……?死ぬってどういう事……?」
由理が聞く。口調こそゆっくりだが、動揺しているのがわかる。
「あのスイッチは、押して10分後に爆発する事になっている。10分で『アイク』を脱出し、爆発が及ばない場所まで逃げるのは、あのロケットのスペックでは不可能じゃ」
「そんな……」
彼女達は膝から崩れ落ちた。
「まったく……全部ベラベラ話しやがって……あいつが命惜しさに押さなかったら地球の終わりなんだぞ」
「何だと……!」
「元はと言えばお前が……!」
彼女達はヴァイロスキーを睨みつけた。
「いや、ユニは押すぞ。自分と地球の命を天秤にかければ、躊躇なく後者を選ぶ。そんな人間じゃ」
紫音が言う。
「でも!絶対死なせないよ!何とかしてウチ達も宇宙行ってユニち助けないと!」
アゲハはそう言うと、ロケットの発射場に向かおうとする。
その時である。
「いや、させないぞ」
ヴァイロスキーがアメリカ軍の兵士を用いてみんなを取り囲んだ。
「何……!?」
「瀬楠由仁が犠牲になるのは確定事項だ」
冷酷に言い放つヴァイロスキー。
「何だと!?どういう事じゃ!」
紫音が詰め寄ろうとするが、兵士に銃を向けられて止められた。
気を取り直して、ヴァイロスキーは話を進める。
「アメリカの決定として、この件はもみ消す事になった。人類滅亡のこの危機、『日本の一介の女子高生に救われた』とあっては、アメリカのメンツに関わるからだ。奴には死んで貰う」
「一人の人間の命より大事だっていうのか……!それが……!」
声を振り絞る様にして、丁井先生が言った。
「イヤだ!絶対認めないぞそんな事!アイツの命は……!この世界の何よりも大事だ……!お前らなんかに渡すもんか!」
断固反対とルーシーが声を上げる。当然、彼女達全員、考えは同じである。
「だからと言って、我々と戦うか?仮に戦って勝てたとして、どうやって宇宙に行くと?」
「何だと……!」
だがヴァイロスキーの言い分ももっともである。彼らの援助がなければ、ユニを助ける事はできない。
両者は膠着状態になってしまった。
そのまま睨み合う両者。この状況に待ったをかけたのはどれみだった。
「まあ落ち着いて下さい。今はお互い、『地球を救う』っていう点では利害は一致してるではありませんか」
だがルーシーは、どれみに対して反論する。
「でもよどれみ!コイツらユニに死ねって言ってんだぞ!そんな事言われて落ち着いていられるか!?」
「その点に関してはわたくしもはらわたが煮え繰り返る思いですわ。いくら何でも言っていい事と悪い事があります」
そう言った上でどれみはヴァイロスキーの方を向いて言う。
「ですがあなた方の目的はアメリカのメンツを守る事。この件のもみ消し、わたくし達も協力させていただきますわ」
「!」
それを聞いた周りに衝撃が走る。
「そもそも危うく人類は滅びる所だったなんて発表したら、余計な混乱を招くだけ。得策ではありませんわ」
確かにどれみの言う通りである。
「では黙ってて貰う代わりに、お前達に協力しろと……」
それを聞いたどれみは大きく頷くと、話を続ける。
「もしこの話を蹴るなら世間に対しこの事を公表し、その上で火殿グループは米国内から事業撤退するでしょう。それに自国民を見殺しにされたとあっては、日本との関係悪化も免れないでしょうね」
つまりどれみは、「火殿グループの米国内からの事業撤退」、「アメリカの国際世論の悪化」、「対日関係悪化」をカードとして示したのである。
ここまで言われては、アメリカ側は条件を飲む事しかできなかった。
「わかった……協力する……」
それを聞いた彼女達の間で喜びが広がったのであった。
こうしてアメリカの協力を取りつけた彼女達は、それぞれの準備に取りかかる。
通信端末越しに、ルーシーがユニに向かって叫ぶ。
「そういう事でユニ!おれ達もそこへ向かうから待っててくれ!必ず助け出す!」
「ああ!待ってる!」
ユニはそう強く答えるのであった。
通信が切れ、ユニはその場で座り込んだ。
(いい彼女達だ……!とてもおれには勿体ねェ……)
そしてユニは、手首で自分の顔を抑えると、声を殺して嬉し涙を流すのであった。
悪魔との契約条項 第二百四十九条
愛の力は、この世の全てを凌駕する。
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