契約その247 ユニ達のspace大作戦!
「うわァ〜!」
ユニの蹴りを食らった金賀のボディガードは、なす術もなく吹っ飛ばされ、壁に激突して動けなくなった。
「弱いな。本当にハワイ一のセレブを守るボディガードの集団なのか?」
「EDEN」が占拠されて、数十分が経過していた。
金賀は100人のボディガードに援軍の400人を加えた500人の集団で「EDEN」を占拠したのだが、その集団はユニ達の人並外れた強さで壊滅しつつあった。
ボディガード達の厄介さは数だけではない。
元軍人や傭兵、元レスラーなどを揃えており、質も申し分ないものだったのである。
そうでもなければ、現役軍人もいる「EDEN」の全域を選挙するなど不可能だろう。
その集団がユニ達になす術もなく壊滅させられているのは、それだけユニ達が強すぎるのである。
「何をやっているの!?たかだか日本人の子供達相手に!役立たずが!」
バタバタと倒されていくボディガード達に悪態をつく金賀。
「ただの子供じゃあねェからな……覚悟しろ!」
ルーシーは金賀に迫りながら言った。
「ちょっと待ってよルーシー!そいつは情報を持ってる!気絶させるのもダメだ!」
このままルーシーが金賀をぶっ飛ばすと思ったユニは、慌てて止めに入る。
ユニの意見を聞いて、ルーシーは自らの拳を解いた。
一方、金賀のボディガード達はすでに殲滅されていた。
その後、アキは金賀に対してこんな事を言う。
「お前の手駒は全員倒れた……フィナーレだな金賀アリアマリー。さあ!お前の罪を数えろ!」
ビシッと指差して、言い放つアキ。
そのの言葉に、金賀は目を血走らせながらこう答えるのであった。
「ハア……罪ですって……?神の御心に!逆らう以外に罪などありませんわ!」
その迫力に、ユニ達は思わずたじろぐ。
(神……?)
彼女の言葉に、ユニは違和感を感じていた。
「とにかく、コイツの持つパスワードを聞き出さなくちゃいけないだろ」
ルーシーはそう言うと、悪魔の姿を露わにする。
その姿に、周囲の研究員達はみな驚いた様な反応を示すのであった。
「いいのか?姿を見せて」
ユニが心配するが、ルーシーは誰かに言いふらす様な奴がいればボコればいいと気にしていなかった。
「さて、契約だ。金賀アリアマリー。契約内容は『身の安全』、代償は『パスワードの内容を洗いざらい吐く』事!」
金賀に拒否権はなかった。ルーシーは自分の髪を金賀の口に含ませるのであった。
しかし、ここで予想だにしない事が起きた。
「……あれ?」
何かに違和感を持ったルーシーは首を傾げた。
「どうしたの?」
ユニが聞く。
ルーシーは、ユニの方を向いてこう言う。
「契約が……成立してない!」
「は?」
そんな事あるのかとユニが聞く。
「勿論ある。契約者の状況と代償が矛盾する場合だ。物理的に払えない代償は設定できない。という事は……」
「こいつはパスワードの内容を知らない!?」
ユニの答えに、ルーシーは頷きながら言う。
「そういう事になる。パスワードについて知らなければ、そもそもパスワードの事を洗いざらい吐く事なんてできないから」
「そ……そんな事があるの!?だって、パスワードを弄れるのはこの人だけでしょ!?」
ヒナが叫ぶ。
だが、現に金賀はパスワードの内容を知らないのである。
こうして、事態は振り出しに戻ってしまった。
「一体どうすれば……」
頭を抱えるユニ達。
「いや、方法はある。本当は使いたくない方法じゃが……」
そんな中、口を開いたのは紫音だった。
「それはどんな方法だ!?」
「直接『アイク』に乗り込み、停止パスワードを打ち込むんじゃ。これなら制御パスワードを介さずに止められる」
「それって要するに……」
「ああ。宇宙に行くという事じゃ」
紫音は頷きながら答える。
「それで、誰が宇宙に行くんだ?」
ユニが聞く。
「まず、非常に長い停止パスワードを完璧に暗記できる記憶力を持った人物じゃ。パスワードを記したメモを見ながら打ち込む……などではとても間に合わんからな」
ふむふむとユニ達は頷きながら聞く。
「それと、長時間パスワードと向き合っても途切れない集中力と体力、そして何より大事なのが『必ず生きて帰ってくる』という強い意志を持つ者じゃ。そんな人間、この地球上に一人しかいない……」
紫音はその人物に指を差しながらこう言うのだった。
「ユニ……キミじゃ。キミを宇宙へ飛ばす事が、すでに決まっている……」
それからの「EDEN」はまさにてんてこ舞いだった。
何せハイスペックではあるが、ただの日本人女子高生をほとんどぶっつけ本番で宇宙へ飛ばすのである。
それに伴うAIによるシミュレーションをなるべく繰り返す。
ユニもまた、あらかじめ設定されている「停止パスワード」の暗記を求められた。
「こ……これを全部覚えるの……?」
高く積み上げられた紙の束に、アゲハは絶句した。試しに一番上の一枚を見てみると、紙の表裏にビッシリと英文字が書かれており、アゲハは頭が痛くなった。
「覚えられるか?」
紫音が聞くと、ユニは言う。
「意地でも全部覚える」
それを聞いた紫音は、ひとまず安心するのであった。
「よく考えてみたら、色々おかしかったな……。部外者のおれ様達がこの場にいる事、それ自体が」
必死に覚えるユニを見ながら、アザエルが呟く。
確かにアザエルの言う通りである。紫音とどれみはともかく、ユニ達は直接関係はない。
今にして思えば、ユニ達がここに連れて来られたのも、こういう事態を想定していたからかも知れない。
その事を紫音に聞いてみようかとアザエルは考えたが、今聞く事でもないと思い直したのでやめた。
数時間後、ユニは全てを暗記した。
「よしできた。完璧だ」
それを聞いたみんなは絶句する。
「さすがだ……暗記力に関しては他の追随を許さない」
それが終わったら今度は必要最小限の宇宙飛行士の訓練を行う。
全ては慌ただしく終わり、いよいよユニが宇宙へ飛び立つ時が来たのであった。
ユニが乗るのは、小型の一人用のロケットである。一人用なだけあって非常に小さく、プレハブ小屋ぐらいの大きさしかない。
これで飛び立つのはともかく、無事に地球まで戻って来れるのか。ユニ達は不安になった。
ただ一つ安心なのは、AIとしてエリーが同乗し、発射、操縦を担当してくれる事である。
「わたくしの『存在』は、ネット上を彷徨っており、様々な電子媒体にアクセスする事ができます。このロケットも例外ではありません」
曰く、いつもの体もその「端末」の一つにしか過ぎないとの事である。
「なので、ユニさんを必ず『アイク』の元へ連れて行き、そして必ず生きて帰らせます」
エリーが強く言い放つ。非常に心強い言葉だ。
「……よし」
ユニは覚悟を決めた。
「じゃあみんな、行ってくるよ。絶対、生きて帰って来る」
その言葉に、彼女達は笑顔を見せる。
ずっとその言葉が聞きたかったのだ。
「そんなの……当たり前だろ?お前はそういう人間だよ」
ルーシーの言葉に、ユニは笑いかけるのであった。
ユニがロケットに乗り込む。
小さなモニターに、エリーの姿が映し出される。どうやらこの形でコミュニケーションを取るらしい。
「よし行こう!世界を救う為に!」
ユニがそう宣言すると、ロケットは3からのカウントダウンの後に、宙へと浮かび上がる。
世界を救う使命を得た英雄を乗せたロケットは、こうして旅立ったのであった。
悪魔との契約条項 第二百四十七条
契約の代償が履行不可能の場合、契約は成立しない。
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