契約その239 第一prince決定総選挙!
八月の二週間程を利用して、コンセプトカフェ「王宮」では「第一王子決定総選挙」が開催されている。
言わば人気投票の様なものであり、一番人気の「第一王子」になれば、給料にも反映される。
何より、それが業績最優秀者である「王」への最短ルートでもあるのだ。
「だから投票をお願いしたいんだ」
投票期間が始まってすぐ、アザエルはユニ達に頭を下げて頼んだ。
「第一王子」になる事で給料が上がれば、必然的にこの家に落とす金も多くなる。
そうアザエルは強弁する。
そんなアザエルに、ユニはこんな提案をした。
「でもさ、一度アザエルの仕事ぶりを見てから決めた方がいいんじゃないか?」
ユニの言う通りである。ユニ達は、早速「王宮」へ向かう事にするのだった。
「王宮」を訪れたのは、ユニ、ルーシー、アゲハ、萌絵、みすか、ヒナの六人である。
「そもそもどういう店なんだっけ」
ヒナが聞く。そういえば彼女も含め、みんな「王宮」は初めてであった。
「要するにコンセプトカフェですよ。店員は魔界の『王子』として客を持て成すんです」
萌絵が説明する。
「まあ、設定の詳細は契約その224と225辺りを読んで貰うとして……早速中に入ろうか」
ユニはそう言いながら、メインの入り口の扉に手をかける。
以前は従業員として裏口から入ったが、今回は客として入店する事になる。
「外観からしてものすごかったですけど……たぶん中もすごいんですよね……」
洋風のおとぎ話に出てくる城みたいな外観を思い出しながら、みすかはぼやいた。
「失礼しまー……す」
ユニは恐る恐るドアを開いた。ユニは、この前応援で入った時に例によって派手にやらかしたので、他の従業員にも顔を知られているのである。
だがユニは、彼女達には元気よく紹介をする。
「みんな、ここが『王宮』だ!」
「いらっしゃいませご主人様♡にゃんにゃん♡」
「!?」
そこで待っていたのは、猫のつけ耳と肉球の手袋をはめたメイド服姿の女の子達だった。
「えーっと……」
あまりにもこの前とは違う状況に、ユニは一瞬混乱した。
一旦外に出て、そこにある看板と、建物の全体像を改めて確認する。
間違えるわけがない。少なくとも、こんなすごい外観の店を間違えるはずがない。
「何なんだ?一体」
そう思いつつも、ユニはまた、さっきよりも恐る恐るドアを開けて入店した。
「あ、ユニ。聞いてた話と全然違うけど何なんだ」
「それはおれが聞きたいというか……」
ルーシーからの質問に、ユニは頭をかきながら答えあぐねていた。
「それはおれ様から教えよう」
その時、店の奥から聞き慣れた声がした。アザエルである。
「アザエル!」
ユニの声が明るくなる。
「でもその前に、ご主人様を席にご案内しないと……」
アザエルは、ユニ達を店の奥の席へと案内するのであった。
「それで……今は『猫耳メイドフェア』っていうキャンペーン中なんだ。王子が無理やり女装させられてるっていう設定で接客してる」
「それまたずいぶんと複雑だな……」
出されたお冷を飲みながら、ユニが呟く。
「だから、コンセプトカフェが一周回って普通のメイドカフェになったんだ」
アザエルはため息をつきながら言った。
「でもそれって本末転倒っていうんじゃ……むぐっ!?」
そんなルーシーの失言に対して、みすかが慌ててルーシーの口を塞いだ。
「でも、服自体はかわいいよ!」
すかさずフォローするアゲハ。
それに対して、アザエルはありがとうとお礼を言うのであった。
「それで、どうやって投票すればいいんだ?」
ユニが聞く。
「ああそれは……」
「それは私からお答えするわ。ユニちゃん♡」
「店長!」
ユニ達の前に現れたのは、ここ「王宮」の店長であった。ユニも一度店を手伝った時に面識がある。
店長は、アザエルに接客に戻る様に促す。店が繁忙期を迎えたからである。
アザエルが接客に戻るのを確認してから、店長は説明を始めた。
「と言っても、方法は簡単よ♡ 期間限定の『投票メニュー』を頼んで、貰った投票用紙に好きな『王子』の名前を書けばいいだけだから」
確かに、テーブルに置いてあるメニューに期間限定と大きく書かれた「投票メニュー」が写真つきで書かれていた。
だが、他のメニューよりも割高な様である。
「ぶっちゃけ食べ物の内容自体はいつもと変わらない……買えるのは王子への愛のみ……どうかしら?」
それから店長は、ごゆっくりどうぞと言いながら去っていった。
「確かに高い……」
ヒナはメニューを見ながらぼやいた。頼みあぐねている様だ。
そもそもこういったカフェのメニュー自体、他のカフェよりも高価な事が多い。
それがさらに割高になるのだから、高校生の経済力では頼みあぐねるのは仕方がない。
「どうしようかな……」
ヒナ達が悩んでいるその時である。
店長が慌ててユニ達のテーブルにやってきた。
「ごめんみんな!今からここで働いてくれるかしら!?」
それを聞いたユニ達は、一瞬フリーズした後で驚く。
「え……いや何で……」
「ちょうど六人!いきなり休みが出ちゃって!六人も抜けられるとさすがにお店が回らないから……」
その分給料は高くつけると言う店長。
「またこのパターンか……」
ガクッと肩を落とすユニ。
だが忙しそうなアザエルを見過ごすわけにはいかない。
ユニは、みんなの顔を見合わせる。
みんな、もうすでに覚悟は決めている様だ。
ユニは、店長の申し出を快く引き受ける事にするのだった。
少しだけ、イヤな予感を感じながら。
そしてその予感は、早くも的中する事となるのだった。
悪魔との契約条項 第二百三十九条
困難とは、常に畳み掛けるものである。
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