表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
238/300

契約その238 あくまでもinterviewです!

「面白い話ですか?」


「そうなんだよ!何かないかな」


 藤香に「面白い話」を聞かれている風月。


 藤香は漫画のネタに困っていて、何かネタになる様な話を風月に聞いているのである。


「あまりそういうのはわかりませんけど……」


 風月はそう言いつつもしばらく考え込むと、あ!と何か思いついた様な顔をした。


「ありました!『面白い話』が!」


「本当?教えて欲しい!」


 ワクワクしながら聞く準備をする藤香。


「全身が真っ白な犬の話です!」


「まさか『()()()()』っていうの?」


「うっ!」


 どうやら図星だった様である。


 風月はそれ以降黙ってしまった。


 しかし、こうしていても仕方がない。


 藤香はスックと立ち上がると、こう言う。


「やっぱりやるかな……取材!」



 翌日。紫音はユニを誘って都内にある水族館へとやって来た。


 誘ったら二つ返事で来てくれたのが幸いした。


「いやー久しぶりだなー!藤香と二人でデートするのは」


 水族館の建物を前にしてユニが言う。


 ユニは半ズボンに白いTシャツという比較的ラフなファッションでデートに臨んでいた。


 本当はしっかりした服装でいきたかったらしいが、藤香自身に「普通でいい」と言われたからである。


「デートじゃない。あくまで取材だ。漫画のネタ作りの為の」


 そうは言いつつも、藤香は大きなベレー帽にロングスカートに踵が低い靴を履いており、しっかりおしゃれをしていた。


 これは「せっかくのデートなんだからおしゃれしないと」というアゲハの厚意である。


「ユニの事は勿論好きだけど、強いて言えば僕はマンガに恋している身……デートじゃないんだけどな……」


 だが、何となく悪い気はしなかった。


 受付でチケットを買い、中へ入る。


 中に入った二人を待っていたのは、大きな水槽のトンネルだった。


「うわー!キレー!」


 自分の上をジンベエザメが泳ぐ様に、ユニは驚きの声を上げる。


 そんなユニの隣で、藤香はしきりに首からかけたカメラを向けていた。


「やっぱり水族館デートは定番中の定番……定番ゆえに盛り上がりに欠ける事も多い……どう盛り上げるか……。絵で魅せるか?」


 どうやら書くネタは「水族館デート」に決まったらしいが、カメラを向けながらブツブツ言う姿はあまりに怪しい。


「魚が驚くからって理由でフラッシュを焚けないのが残念だな……」


 そう呟きつつズンズン前へ進んでいくので、ユニは彼女について行くのが精一杯だった。


 水槽のトンネルを抜けると広い場所に出る。中央に休憩用のベンチがあり、それを丸く囲む様に水槽が設置されている様だ。


 水槽のそばには、魚の説明が書かれたプレートが設置されている。


 どうやら深海魚を主に展示しているらしい。


「成程成程……キャラクターデザインに使えそうだな……」


 そう言いつつ、藤香は中央のベンチに座ると、持ってきたスケッチブックに魚の絵を描く。


 意外と写実的に描く様だ。


「魚の生態を……設定に活かして……それなら……」


「ねえ藤香」


「ん?」


 一通り魚の絵を描き終わった事を確認してから、ユニは藤香に話しかける。


「……屋上でイルカショーやるらしいから行こうよ」


「イルカショーか……」


 イルカショーなら、イルカがジャンプした衝撃で水が飛び散るだろう。


 スケッチブックが濡れるから断ろうと思ったが、わざわざ付き合って来てくれているのである。


その厚意をムダにはできない。


「……わかった」


 藤香は、ゆっくりと頷くのであった。


 二人は、屋上のステージを目指す。



 夏休みシーズンなだけあって、ステージには家族連れが多く訪れていた。


 勿論カップルの姿も。


「スケッチブックが濡れるのがイヤなら、奥の席に座ろうか」


 藤香が渋っていた事を、ユニは当然知っていた。


 だからせめて、藤香が望む席に座らせようとしたのである。


 だが藤香は違う。


「大丈夫だ。()()()に描く」


 藤香はカバンからタブレット端末を取り出しながら言う。


 勿論水場でも使える特別防水性(紫音制作)である。


「どうせなら臨場感のある前方で観察したい」


 よく考えてみたら近くでイルカを観察できるいい機会である。


 飛び散る水飛沫も、きっと貴重なサンプルになるだろう。


 二人は前から二番目の席に座るのであった。


 程なくしてイルカショーが始まる。


 飼育員のお姉さんが岸に立ち、イルカ達が挨拶をしてくれた。


「カイル君とナミちゃんっていうらしいな」


 さっき調べたと、ユニはスマートフォンを藤香に見せる。


「成程()()()なんだな……」


 スマホの画面を見ながら、藤香はそんな感想を漏らした。


「あ!始まるぞ!ほら!」


 ステージの方を指差すユニ。


 流れる音楽に合わせ、二匹のイルカは思い切りジャンプをするのであった。


「わーすごーい!」


 タブレット端末でも写真を撮る藤香。


 そんな時である。


 イルカが着水した衝撃で、大量の水が二人に襲いかかった。


「危ない!」


 ユニは、身を挺して藤香を水から守った。


「濡れなくてよかった……」


「でもあなたが……」


 その代償として、ユニは全身がびしょ濡れになってしまった。


「いや、大丈夫だよ。いずれ乾く。あまりおしゃれしてなくてよかったな。キミのお陰だ。ありがとう」


 びしょ濡れのユニは、笑いながら藤香に語りかけるのであった。



 一通り水族館を満喫した二人。帰る時にはすでに夕方になっていた。


「どうかな?ネタには困らなさそう?」


 ユニの疑問に対して、藤香はグッとサムズアップして見せた。


「それならよかった」


 笑顔で答えるユニ。


「さて!帰ったら原稿だな!」


 そう言いながら、藤香は少し早歩きになる。


 そんな中、ユニの少し前を歩いていた藤香が突然振り返る。


「ユニ……」


 振り返った藤香は、そのままユニの方に自分の唇を持っていって……。


「……今日のお礼だよ。……最近、やってなかったからな」


 少し照れながら言う藤香。


 目を逸らし、自分の横髪を弄りながら言っているのが可愛らしい。


 藤香と付き合い初めて約二年、彼女の髪も肩にかかるぐらいまで伸びてきた様だ。


「でも……へへっ!これもまたマンガのネタにできそうだ!」


 藤香はそう言うと、はにかんで見せるのであった。



 2、3日後。藤香は担当編集者からその週のエピソードの評判を聞いていた。


「アンケートで一位!?」


 目を丸くしながら驚く藤香。


「そうなんですよ!人気作の『手術(しゅじゅつ)海鮮(かいせん)』を押さえてのトップです!」


 おめでとうございます!と、担当は拍手して祝ってくれた。


「手術海鮮」とは、その名の通り魚の世界を舞台にした新感覚医療マンガである。


 作品としては佳境を超えている「初恋エターナル」を超えて掲載誌(週間少年チャンプ)の次世代看板作品と据えられる事が多い。


 その作品を今週は超えたという事である。


「いやー面白かったですねえ。何より先生が楽しそうに描いてるのが伝わってきて!」


()()()()お陰ですよ」


 作業机に向かいながら藤香が答える。


 担当は、藤香のある変化に気ついた。


「何か最近の先生、おしゃれにも気を使い出した様な気がしますね」


「それって僕がいつもおしゃれに気を遣ってないって事ですか?」


 事実ではあるが、藤香は少し担当をからかう。


 いえいえそういうわけでは……と否定する担当。


「マンガに恋してる僕ですけど……()()をしたんですよ。先日ね」


 藤香はそう言うと、再びペンを走らせるのであった。


 悪魔との契約条項 第二百三十八条

「恋」は、人を強くする。

読んで下さりありがとうございます。

いいね、感想などをよろしくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ