契約その235 チャンバラ水着大battle!
「あんなに食べて大丈夫なの?」
休憩時間の間、アゲハがユニの体を労る。
それを聞いたユニは笑顔になってこう言う。
「大丈夫だよ。おれ、太らない体質だから」
優しいな、ありがとうとユニは続けるのであった。
やがて休憩が終わり、ユニ達は再び会場へと通された。
プールには大きな円形の浮島が浮かび、それを取り囲む様に平均台の様なものが設置されていた。
例によってディレクターが次の……最終ゲームの説明をする。
「最後の競技は水上チャンバラ対決です。チームの代表者一人が浮島に乗り、刀で戦います。最後に残ったチームの勝利です」
だが、代表者以外のメンバーがただ見ているだけかというとそういうわけではない。
「それぞれ水風船や水鉄砲などが支給されますので、それで相手チームを妨害して下さい」
ディレクターがそう言うと、スタッフが色々な道具が入った箱を台車に乗せて持ってきた。
この中から好きなものを取っていけという事だろう。
やがてその説明も終わり、再び撮影が始まる。
高橋が改めてルールの説明をし、代表者である五人がバトルフィールドたるプールの浮島へと降り立った。
ユニ達の代表者は勿論ユニである。
それ以外のメンバーは、バトルフィールドの周りの足場に待機する。
「それでは『水上チャンバラ対決』!よーいスタート!」
高橋の掛け声と同時に、戦いの火蓋が切って落とされた。
その直後、ユニ以外の四人が一斉に襲いかかってきた。
同盟を結び、協力する事で先にユニを倒そうという算段なのである。
「成程……それが最善だな……だけど……」
振り落とされる刀を、ユニは悠々とよける。
「速っ……!」
攻撃を仕掛けたアイドルはそのままよろける。
ユニはそれを刀で優しく押し、プールの中に落とした。
「速さが足りねェな……」
残りはユニ含めて四人である。
「やーっ!」
その時、あるアイドルがユニに襲いかかる。
確か「レッドホッパー」のメンバーのはずである。
「うおっ!」
その勢いに、ユニは思わずその刃を受け止めた。
「剣道2段の実力よ……」
「成程経験者って事か……うおらあっ!」
ユニはそのアイドルを力で押し戻した。
瞬時に反対側へ跳びのくアイドル。
「何て力……でも素人!」
そう呟き、距離を詰めるアイドル。
そんな彼女の顔面に、水風船がぶち当たった。
投げたのはミズキである。
「ナイスだミズキ!」
生じた隙を見逃さず、ユニはその勢いを利用してアイドルを場外へ叩き出したのであった。
「これであと二人……!」
ユニは、残りの二人にスポンジの刀を向けながら言った。
もうやるしかないと覚悟を決めたアイドル達は、同時にユニへと向かっていった。
その覚悟はやはりすごいものだった。さすがのユニも少し怯む。
これが厳しい芸能界で生き残ってきた者が見せる気迫なのだ。
そんなアイドル達に、水風船と水鉄砲の攻撃が炸裂する。
ユニの彼女達であった。
「みんな……」
ユニはこのチャンスを見逃さず、二人を同時に攻撃、フィールドから落とした。
フィールドがユニのみになり、ユニは拳を大きく突き上げ、勝鬨を上げるのであった。
「スタッフの方で片づけを行いますので、出演者の皆さんは一度楽屋の方へ戻って下さい」
そんな説明がされたので、ユニ達はひとまず楽屋の方へ戻っていくのであった。
この番組の司会者、高橋一令も例外ではなかった。
喫煙室でタバコを吸った後、自身の楽屋へと戻る。
「おい待てよ」
そんな彼を後ろから呼び止める声がした。
声の主はルーシーである。
「誰かな?おれのファンだったりする?」
しかし、ここは関係者以外立ち入り禁止である。高橋は、ルーシーに外に出る様に言った。
「結構だ」
だがそれを、ルーシーは強い口調で断る。
「結構も何も、部外者がここにいるのはルール違反なのだけど……」
高橋の言う事はもっともである。
だがルーシーは、その言葉を一笑に付してこう言った。
「フッ部外者か……それをいうならお前もそうだろう?『アーク』」
「!」
それを聞いた高橋の顔が急に強張る。
「な……何の話だ?」
「おれは『ルシファー』。誤魔化そうたってそうはいかないぞ」
どうにか平静を保とうとする高橋をルーシーは一蹴する。
「その体を乗っ取って、一体何をする気だ?」
続けて質問するルーシー。
それを聞いた高橋は、観念したのかニヤッと口角を上げて笑うとこう言う。
「『契約』だよ『ルシファー』。コイツの『芸人として売れたい』っていう願いを叶えたんだ。命と引き換えにな……」
「命だと……!?」
悪魔は、契約違反で命を奪う事はあっても契約として命を取る事は滅多にない。
上級悪魔にとって、契約とは娯楽。契約者が生きたまま破滅する様を見たいという願望を持つ者が多いからである。
「お前に何か問題でもあるのか?」
高橋改め「アーク」が聞く。その声は、相手を威圧する様な低い声だった。
そんな「アーク」に、ルーシーは一歩前に出てこう言う。
「……おれの大切な人に頼まれた。スポンサーの意向を無視して全部タコ料理にするとか普通あり得ないから、悪魔の関連について調べてこいってな」
それを聞いた「アーク」は、少し考えてから言う。
「それは……瀬楠由仁か?」
「そうだ」
素直に認めるルーシー。
「おれを止めるか?」
「当たり前だ」
ルーシーは毅然と言い放つ。
「お前を殺すとなると色々と面倒なんだがな……。だがどうやら許しては貰えなさそうだ……」
「アーク」はそう呟くと、グアッとルーシーに飛びかかり、蹴りをかます。
それを両腕でガードするルーシー。
「最強の悪魔だと油断してねェか?おれは悪魔の中でも『格上』……お前にも負けない!」
「ああ……わかってるよ……。でも、負けられねェなら……こっちも同じだ!」
ルーシーはそう言いながら、「アーク」の顔面に反撃のパンチを見舞うのであった。
人間には知られる事のない、悪魔と悪魔の戦いが、こうして幕を上げた。
悪魔との契約条項 第二百三十五条
契約違反以外で悪魔が人を殺す事は、基本的にはない。




