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契約その230 Idol猛特訓、目指せ頂点!

「ンフフ成程……この子らがルアちゃんの選んだ子達って事ね?」


 ジョニーは、ユニ達をじっと見つめながら聞いた。


「え、ええ。そうですけど……」


 ルアも若干戸惑いながら言う。


「さすがはルアちゃん♡中々センスあるわね♡」


 ジョニーはそう言うと、ウィンクしてみせた。


「さて、アイドル甲子園の収録までは一週間程……それまでに!アテクシの手であなた達を一流のアイドルにしてみせるわ!」


 ジョニーはそう言いながら、ユニ達の方をビシッと指差すのであった。



 それから、ユニ達の社長直々の特訓が始まった。


「はいっワンツーワンツー!そこでくるっと回って決めポーズ!」


 しっかり決めポーズを決めた五人に、ジョニーは五分間の休憩を命じる。


 ジョニーには、長年アイドルを見続けてきた故の確かな審美眼がある。


 ここまで特訓をして数時間、五人の事がよくわかる様になってきた。


 まずルアは一流。トップアイドルの「意地」と「美しさ」を兼ね備えた見事な体さばきである。


 次にアゲハ。インフルエンサーなだけに「自分や仲間をよく魅せる」能力には長けていて、それが特訓にも表れている。一流。


 そしてミズキ。巫女仕事で鍛えた体幹と身体能力は高く、有望株。どうやら神様に舞も奉納するらしく、もはや慣れすら感じる。一流。


 さらにモミ。彼女が一番の未知数。踊る女の子達の揺れる胸についつい目がいく欠点があるものの、身体能力、リズム感のポテンシャルは高い。一流。


 そして最後に……。


 ジョニーは、ユニの方に目を向ける。ユニは一応飲み物は飲んでいるものの、ほとんど汗をかいていなかった。


「身体能力は天才超えて化け物クラスなんだけど……」


 ユニについて問題なのは、優れた身体能力と体幹を持つものの、それら全てをムダにするリズム感のなさである。


「まさかここまでなんてね……」


 ジョニーは頭を抱える。


 ユニは、本来ダンスには向かない人間である。なので見込みなしと見限ってもよかった。


 しかしそれ以上に、ジョニーはユニに光るものがあると見抜いていた。


「おれにリズム感がないのなら……ハナからリズムは考えずに、振りつけを完全に覚えて……体に染みつかせて……」


 飲み物を飲みながら、ユニはそう呟いていた。


 その姿を見て、ジョニーは静かにこう呟く。


「己を理解し、別の角度からでも課題の解決に挑む……一流ね」


 とりわけ芸能界は、才能が全ての世界である。


 その才能は前提として、その上でいかに努力をするかが、この世界では求められるのである。


 長く芸能界に触れてきたジョニーは、それを強く理解していた。


 彼が「一流」と評価する者は、たとえそれがどんな形としても、才能にあぐらをかかずに努力する者である。


 そういう意味で、ユニはジョニーのお眼鏡に適ったという事だ。


「これは面白くなりそうね……」


 ジョニーはそう呟くと、一人静かに笑うのであった。



 アイドルの特訓はダンスだけではない。ボイストレーニングもあるのである。


「いい?アイドルにおいて、正直な話歌の上手さは見られないものよ。大事なのはより楽しく歌うか!それが求められていると言えるわね」


 だがそれでもやはり、ボイストレーニングは大事らしい。


 ジョニーの指示に従い、ユニ達はボイストレーニングに励む。


「あめんぼあかいなあいうえお!」


「あめんぼあかいなあいうえお!」


「うきもにこえびもおよいでる!」


「うきもにこえびもおよいでる!」


 ジョニーの言った言葉を、ユニ達も続けて言うのだった。


 こうしてレッスンを続けていると、素人である四人もよくなってきている様である。



 こうしてダンスやボイストレーニングを続けていき、いよいよアイドル甲子園の放送日の前日、特訓の最終日を迎えたのであった。


 五人を前にして、ジョニーは言う。


「さて、これまで特訓を続けてきたわけだけど……、みんな見違える程よくなったわ。本番で披露するのは一曲だけだから、今のあなた達の全力を、アテクシにぶつけてみなさい!」


 ジョニーはそう言うと、自分の胸を叩いてみせた。


 曲は「J'S」のデビュー曲である「Don't cry-sis」である。


 この曲を、ルアはさすがの貫禄でやり遂げる。続くアゲハ、モミ、ミズキもこれまでの特訓の成果を出してやり遂げた。


 問題はユニである。絶望的にリズム感がない。しかし、ユニには策があった。


 まもなく曲のイントロが流れる。


「落ち着け……おれが失敗すれば、みんなに迷惑がかかる……」


 ユニは、曲をリズムではなく「タイミング」で覚える事にした。


 つまり、「十秒後にこのポーズ、その後三秒後にこのポーズ……」という様に記号化したのである。


 さらにそれに加えて歌も歌わなければならないが、ユニは元々マルチタスクは得意な方である。


 その上歌詞が同じ所は同じ振り付けである事が多いので、それもまた覚えやすさに拍車をかけた。


 そしてユニもまた、一曲をミスなしでやりきる事ができたのであった。


 曲が終わり、ユニはガクッと膝から崩れ落ちる。緊張の糸が切れたのである。


「やった!ユニー!」


 駆け寄る彼女達。それを見届けたジョニーは、ユニ達に向けてこう言った。


「ンフフ……免許皆伝よあなた達……本当はチームワークの特訓もする予定だったけど、あなた達なら大丈夫ね……」


 その言葉に、ユニ達は大きく頷く。


 いよいよ明日、「アイドル甲子園」の収録が幕を開けるのであった。


 悪魔との契約条項 第二百三十条

やり方を工夫すれば、苦手をも克服できる。

読んで下さりありがとうございます。

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