契約その229 謁見!ポリプロpresident!
「ユニお願い!私と一緒にアイドルやってよ!」
7月某日、突然ユニはルアからアイドルへのお誘いを受けた。
「どうしていきなり……」
ユニに聞かれ、ルアは事情を話す。
「一週間後にね、『アイドル甲子園』っていう深夜特番の撮影をやるんだけど……」
「アイドル甲子園」という番組に関しては、ユニも知っていた。
確か「クマテレビ」の深夜枠、「爆ONテレビワイド」で毎年夏休みの時期にやっている人気特番のはずである。
深夜にやるわりにはかなりの高視聴率だという話だ。
「まさかその番組に出てほしいって事?」
ユニが聞くと、ルアは大きく頷いた。
「それって『J'S』で出るんじゃないの?」
「最初はその予定だったんだけど、メンバー間でインフルエンザが流行っちゃって。私はアルが肩代わりしてくれたからどうにかなったんだけど、私一人いてもどうにもならないからさ……」
ルアはため息をつきながら言った。
確か「アイドル甲子園」はユニットごとのチーム戦だったはずである。確かにそれならルア一人いた所でどうにもならない。
「これじゃ参戦できないから、仕方なく棄権しようって話に一度はなったんだけど、でもウチの社長が……」
ルアは自分の事務所の社長に、ユニ達の事をしょっちう話していた。それで今回白羽の矢が立ったわけである。
「とりあえず、みんなに相談しないとどうにもならないよ」
ユニはそう言った。
その夜、ユニとルアはその旨をみんなに伝えた。
「じゃあユニさんがアイドルデビューするって事ですか?」
みすかが聞く。
「いや、あくまで私のバーターという形で、夏限定の一時的なメンバーって感じかな」
ルアが説明する。
「そういう事なら……」
ユニのアイドルデビューに若干反対だった由理も、それには納得した。
ユニには、あくまでも自分達のアイドルでいてほしいのである。
「それと五人一組だから、あと三人必要なんだけど、誰かやりたいよっていう人いる?」
ちょうど三人、手を挙げる者がいた。
「成程……。うん、華があっていいと思う!」
ルアが大きく頷きながら言った。
「じゃあ明日、みんなでウチの事務所へ挨拶へ行こうか!」
ルアはおーっ!と片腕を上げながら言うのであった。
翌日。ルアはユニと、メンバーに加えた三人を連れて瀬楠家の隣にある「ポリプロ」の事務所を訪れた。
「事務所がウチの隣にある設定、覚えてた人いるのかな……読者の中で」
ユニがぼやく。
「作者すら最近まで忘れてたからね……」
ルアも同調した。
「さてと……準備はいい?ユニ、アゲハ、モミ、ミズキ」
ルアは、ユニと昨日手を挙げたアゲハ、モミ、ミズキに聞く。
ちなみに三人が立候補した理由は、アゲハは「楽しそうだから」、モミは「アイドル(の乳)を間近で見れるから」、ミズキは「神社の宣伝の為」というものである。
「社長さんに挨拶するけど……その……いい人だけどめちゃくちゃクセ強い人だから心してね」
「ああ、わかった」
特にユニが大きく頷く。そう言われて本当に驚く結果だったのは、この前の忌部家の訪問で経験済みである。
事務所はアパートを丸ごと利用している。それぞれの部屋で部門が分かれているのだ。
五人はその中の2階の一番奥の部屋を訪れた。
「社長さんに用がある時は部屋の呼び鈴を押すの」
ルアはそう言うと、古ぼけた部屋の呼び鈴を押した。
「ピンポーン」と、これまたレトロな呼び鈴の音が鳴る。
「入って」
部屋の中から機械音声が流れる。
「元軍人だからか警戒心が強いんだ」
ルアはそう言うと、ゆっくりとドアを開けて中に入る。
ユニ達もそれに続くのであった。
部屋の中はとても暗い。カーテンを閉め切っているからである。
ユニは表のメーターを確認していたが、どうやら電気は通っていて、それなりに使われている様だ。
「あの社長さ……」
ルアが言いかけたその時である。
謎の黒い巨大な影が、五人に襲いかかった。
ユニは咄嗟に四人を玄関の方に押しやると、その影の攻撃を、辛うじて自分の足で受け止めた。
「ぐっ……強っ……」
不意を突かれたとはいえ、どうやら相手はユニと互角に戦う猛者の様である。
それでもどうにかその攻撃を弾き返して言う。
「何でいきなり仕掛けてきたかはわからないけど、覚悟できてんだろうな……?」
彼女の身を脅かす者には容赦しない、ユニの事実上の宣戦布告であった。
「一体どこの誰だ!姿を現しやがれ!」
ユニはそう叫び、影に飛びかかると、その胴体に足を絡めさらに両腕で首を絞めにかかる。
相手が人間である限り、どんな敵でも30秒で意識が飛ぶ技である。
「お前の正体を言うか、このまま落ちるか、どっちがいい?」
ユニが低い声で聞く。
「ちょっと待ってよ!ユニ!ストップストップ!あなたならそうするとわかってたけど!」
ルアが叫びながら、部屋の明かりをつける。
「社長も社長ですよ!こんなユニを試す様な事して!いくらあなたでもユニを本気で怒らせたら……」
「え?」
ルアの「社長」という声を聞き、ユニは思わず両腕と両足を離したのであった。
影の正体がポリプロの社長であった事をユニは正座をして、非礼を詫びた。
「本当に申し訳ありません!」
「うっふっふ……いいの、いいのよ。仕掛けたのはこっちだから。こちらこそごめんなさいね」
その社長も自らの行動を詫びた。
「いや社長って……」
「はい」
「もしかして……」
アゲハ、モミ、ミズキの三人はその社長の姿を見上げながらこう叫ぶ。
「オカマ!?」
その社長は、青い明るいスーツにローファーを着た、確かに男性の姿だった。
ただ、ビビッドピンクの口紅を塗り、しっかりつけまつげもつけた顔と、何より巨大な紫色のアフロヘアーが目を引く。
どちらかと言えばダンサーみたいな容姿で、お世辞にも社長とは……いや社会人とは思えぬ容姿である。
「しかもメイクも流行りのやつだし……」
「揉み甲斐のありそうな頭ですね……」
「なんか怖い……」
口々に感想を言い合う三人であった。
「ンフフ……アテクシは株式会社ポリプロ社長『ジョニー波典』よ!よろしくねっ♡」
ジョニーはそう言うと、4人にキュートに(?)ウインクをしてみせた。それを思わずよける4人。
「ジョ……ジョニー社長はものすごく特殊な経歴の持ち主なの」
「ンフフいいのよルアちゃん。その話はアテクシの方からさせて貰うわ」
さて……とジョニーは息を整えて、自らの経歴を話し始めた。
時は約50年前。幼少期の彼は、家族旅行先の中東で、某武装勢力に拉致された。
そこで紆余曲折あり、純日本人でありながら、ある独裁政権の兵士となった彼は「中東の牙」と恐れられる程になった。
しかし彼が二十歳になる年、独裁政権は崩壊。それから彼は、紛争続く中東でフリーの傭兵となった。
そこでは「最後の日本兵」「殺戮兵器」などの異名をとったが、その日常に辟易していた四十歳の頃に転機が訪れる。
訪れていたある難民キャンプで、日本から訪れたボランティアが、アイドルショーをやっているのを目にしたのである。
それに感銘を受けた彼は日本へ帰国。一から経営を学び、芸能事務所を設立。現在に至るのである。
「ちなみに『ポリプロ』は、その難民キャンプがあった地名よ♡」
ジョニーは最後にそう付け加えた。
「というわけで、よろしくねっ♡みんな♡」
そんなジョニーの圧に、4人はただただ圧倒されるのであった。
悪魔との契約条項 第二百二十九条
人生の転機は、ある日突然訪れる。
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