契約その227 大集合!紫音family!
ユニ達が通されたのは、リビングというより「居間」と言った方が正しい様な、広い部屋だった。
雰囲気としては、やはり磯野家のそれに近いだろう。
ユニ達は、瀬楠家とはちゃぶ台を挟んで逆側に座らさせられた。
ユニ達と向かい合う形で座るのは、先程出会った紫音の両親、そして年配の男、そして男の子である。
ユニは年配の方を紫音の祖父、男の子の方を紫音の弟と解釈した。
しかしさっきの紫音の父親の様に、性別、あるいは年齢までも弄っている可能性がある事は否定できない。
ちゃぶ台を挟み、ユニ達と忌部家の間で重苦しい雰囲気が流れた。お互いに緊張しているのである。
この場を取り繕えるのは自分しかいないと考えた紫音は、家族にユニ達を紹介していく。
「こちらは瀬楠由仁じゃ。かっこいい男じゃぞ」
「そんな……滅相もないよ。よろしくお願いします」
「そして内藤・メア・ルーシー。悪魔じゃ」
「何か罵倒されてる感じだな……よろしくお願いします」
「そして佐藤陽奈。普通じゃ。そして滅多に出てこない」
「やめてよそれ!結構気にしてるんだから!私も作者も」
「それで……」
紫音が最後の風月を紹介しようとすると、紫音の祖父に風月がジロジロと見られている事に気づいた。
「えっと……おじい様?」
「……間違いないのう……」
紫音の祖父「忌部弾」は、そう呟くと、奥の部屋からアルバムを持ってきた。
「お前さんをどこかで見た事がある顔だと思っていたのだが……」
紫音の祖父はそのアルバムをペラペラとめくっていく。
「ほら、これはお前さんではないか?」
紫音の祖父が、一枚の写真を指さして言う。
もうずいぶんと古い写真である。しかし、間違いなく風月が写っている。
いや風月だけではない。そこにはイヅとしおねもいた。
「これは確か……清水寺に行った時の!」
風月が叫ぶ。曰く、ユニがタイムスリップしてくる一年前、三人で京都へ旅行に行ったらしい。
「その反応……どうやら本人らしいな。なぜこの百年後にいるのかはわからないが……」
「当然じゃおじい様。風月は大正時代からタイムスリップしてきたんじゃから」
当たり前だが、それを聞いた忌部家の皆は驚愕の表情を見せた。
「一体どんな理屈で……」
紫音の両親が言う。
あんた達がそれを言うか!?そうユニ達は思ったが、あえて言わなかった。
「えっと……詳しく話せば長くなるのじゃが……」
紫音は、家族に風月がこの時代に来た経緯を話した。
「成程……そういう事か……」
家族全員、やけに理解が早い。やはりファンタジーに片足突っ込んだ存在は違う。
「悪魔の契約の代償でここに来たのなら、確かに元の世界には戻れないか」
それで寂しくはないのかと紫音の祖父が聞く。
「寂しくない……と言ったらウソになりますけど、今のこの世界には由仁さんと皆さんがいます。それに夢だってありますからっ!」
現在風月は医者になる為に医大の受験勉強の最中なのである。
もう誰かが傷つく所は見たくない。だからこその夢だった。
「そうか。そういう事なら、きっとわしのおばあ様も喜んでるじゃろうな」
「おばあ様……」
それが誰なのか、風月にはわかっていた。
「わしが紫音に、あの木箱を受け継いだ甲斐もあったわけじゃ」
「木箱か……」
紫音の祖父のいう木箱とは、しおねが子々孫々に伝えていた、ユニと風月への手紙が入った木箱の事である。
紫音の祖父が言うには、しおねの死の間際に託されたらしい。
「そうか、やっぱりそこまでして……」
ユニもまた、しおねやイヅへ思いを馳せるのであった。
「さてと、だいぶ時間を取ってしまったな。本題に入ろう」
紫音の祖父は、紫音の父に説明を促す。
「そう。我々が紫音を呼んだのはただ顔を見たかったっというだけじゃない」
(「だけじゃない」という事は目的の一つではあったんだな……)
ユニ達はみんなそう思った。
「二年前のAPESの事件以降、紫音はIIOの資格停止処分を受けている事は知っているだろう」
ユニ達は頷く。
「まだ若い事、そして自分で事態の収束に交換した事から、中学卒業までの資格停止という寛大な措置を受けたが、本来は永久追放もあり得た事態だった」
ユニ達は「APES」との死闘を思い出す。確かにあれは大変だった。
特にユニは、電脳世界の崩壊に巻き込まれ、危うくこっちの世界へ戻れなくなる所だったのだ。
「必ずどこかで汚名返上の機会は設けなければならない。そこでだ。今年の八月、ハワイで探査ロケットの打ち上げがある事を知っているか」
「探査ロケット……」
確かどれみが言っていた。火殿グループが金を出し、宇宙を探索する無人ロケットを打ち上げると。
「それがどうかしたんですか?」
ユニが聞く。
「その打ち上げプロジェクトに、紫音に一枚噛んでほしいんだ。紫音の天才ぶりは我が家でも最高レベル。一度の失敗で腐らすには勿体ない」
「成程……」
それが成功すれば、紫音の未来もより開けたものになる。断る理由がないだろう。
「どうする紫音。キミ次第ではあるけど……」
しかし、紫音はすでに大きな目を輝かせながら父親の言葉に耳を傾けていた。おそらく断らないだろう。
父親もそれを感じ取った様である。
「決まりだな」
「いや!待って欲しい!」
紫音はいきなり声を張り上げる。
「ハワイに行くのなら、みんなも一緒じゃ!前々からみんなで旅行に行きたいって言ってたじゃろう」
確かに言っていた。つまり、そこでついでに旅行も楽しもうという事か。
ユニは、みんなの予定次第な所はあると言いつつ、みんなとの旅行が楽しみになってきた。
「よし!こうしちゃおれんな!早速家に帰って……って家はここじゃったか……」
紫音はだいぶテンパっている様である。
そんな紫音に、弟である「忌部栄太」(9歳)が話しかけてくる。
「ねーちゃん!おれ、ともだちにゲームの修理たのまれてるんだけどさ!見てくれない?」
紫音は、あーあー見てやると言い、ゲームの内部基盤を見るなり適切な部品を選んですぐに修理してしまった。
「スゲー!ありがとう!これ修理料100円な!元々おれが貰ったお金だけど、直したのはねーちゃんだから!」
「あーはいはいありがとよ」
紫音はそう言いつつ、貰った百円玉をポケットに入れた。
「お金貰っていいのか?」
ユニが紫音に耳打ちする。
「我が家の家訓は、『優れた技術には相応の対価を』じゃからな。金は取る」
それを聞いてユニは納得した。
「さてと!戻るぞ!ユニの家に!」
紫音はそう叫ぶと思い切り駆け出した。
ユニ達もまた、紫音の家族にお礼を言いつつ家を出る。
「まったく、いいお友達を持ったわねぇ……」
娘の後ろ姿を見送りつつ、紫音の母は呟くのだった。
悪魔との契約条項 第二百二十六条
悪魔の存在は文献に残っている。そこから悪魔の存在を知る事は可能である。
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