契約その223 Angelとのデート!
ユニは、アザエルを伴って外に出た。
「それで……どうやっておれ様を惚れさせるっていうんだ?」
アザエルが聞く。
それを聞いたユニは、アザエルの方に振り返って言う。
「それはまだわからないから……キミに任せるよ。どこでもついて行くからさ」
そうか、それなら……とアザエルはそう静かに呟くと、ある場所を指定するのであった。
―――駅前のカラオケ店 「ヒビキ」―――
「一度行ってみたかったんだ。カラオケ」
アザエルはそう言うと、機械を操作して曲を入れた。
入れた曲は、意外と普通なJ-POPであった。
アザエルは、玉の様にきれいな歌声を披露する。まさに文字通りの「天使の歌声」というものである。
カラオケの採点は、99.9点を示した。どうやら全国で一位らしい。
「へー……すごいな」
ユニは拍手をしながら感心する。それに対し、アザエルは「だろ?」と言わんばかりにピースして応えた。
「次は……そうだな……」
二人は、続けてバッティングセンターへ足を運ぶ。
「でぇぇぇ!」
ユニが思い切り振ったバットは、虚しく宙を切った。
しかし、その衝撃で建物全体がビリビリと震えた様である。
「ハアハア……やっぱり当たらないや……球技苦手だからな……」
ユニは千切れた金属バットを片手に持ちながらぼやいた。
ユニがバットを振った遠心力で、千切れてしまったのである。
「金属バットが千切れるなんて現象、人間界じゃ中々お目にかかれないぞ」
ネット越しに、アザエルが呆れながら言った。
「これもやっぱり、悪魔の力が目覚めたからか……」
アザエルがそう呟いたその時、ふと彼女の携帯が鳴る。
「はい天上です。はい。はい?まさかそんな……!はい。わかりました……!今行きます」
アザエルは電話を切ると、新しいバットに持ち替えたユニに向かって言う。
「すまないユニ!用事ができたから帰る!急なバイトが入ったんだ!」
「え?ちょっと待ってよ!」
いきなり言われたユニは驚く。
「一気に店員が休んじゃった上に、たくさんのお客さんがいて、首が回らない状態になってるんだ。猫の手も借りたい状況らしい!」
「そのバイトって、飛び入り参加もできるか?」
ユニは、一度は持ったはずのバットを元の位置に戻しながら言う。
「え?ま、まあ店長は、手伝って貰えるなら誰でも来てほしいって言ってたけど……」
アザエルは驚きながらも答えた。
「じゃあおれも行く!うまくできるかどうかはわからないけど……何よりおれは困ってる人を助けたい!」
ユニはそう言いながらじっとアザエルを見つめる。そんな態度をされては、アザエルも応えるしかなかった。
「…….おれ様は堕ちても天使だからな。そういう意思には逆らえない」
つまり一緒に来いという事である。そう捉えたユニの顔は、パアっと明るくなった。
自分について来いと言うアザエル。ユニはその案内に従い、急いでアザエルの職場へ向かうのであった。
二人が向かった先にあったのは、こじんまりとしたお城を模した建物だった。
城といっても和風ではなく洋風のもので、どこかおとぎ話に出てきそうなデザインである。
場所は飲食店が立ち並ぶ駅前にあるのだが、他の店と比べて場違い感がすごい。
「これがキミの職場?」
その異様な雰囲気に呆気に取られるユニを引っ張る様な形で、アザエルはその裏側へと向かう。
従業員用の入り口はそっちの方にあるらしい。
アザエルは、普通に裏にある扉を開いて中に入る。ユニもそれに従った。
「こんにち……」
「アザエルちゃんね!その後ろにいる子は誰?」
二人を出迎えたのは妙齢の女性だった。赤いドレスも相まって、クラブにいそうな雰囲気である。
「えーっとおれ……いや私は瀬楠由仁と言いまして……」
「私の友達で、今回応援に来てくれました」
アザエルが手早く紹介する。
「あらそう。じゃあ早速だけど、これに着替えてくれる?」
その女性は、ユニに持っていた服を押しつける様にして渡した。どうやらこれが制服らしい。
「じゃ!そういう事で、よろしくね!」
女性はそう言い残すと、小走りでユニ達の元から去っていった。
その後、ユニは自分で更衣室を見つけると、適当なロッカーの所で着替える。
「結局何だったんだあの人……まあ何となく予想はつくけど」
その隣のロッカーで、アザエルは着替えながら答えた。
「キミの思った通り、あの人は店長だよ。せっかちな人だけど中々のやり手なんだ」
そう言いつつ、二人は急いで着替えた。
「これが制服……?」
着替えてみて、ユニは驚いた。
その制服は、ビシッとしたスーツに長いローブを纏ったものだったからだ。
頭の大きな王冠も相まって、まるで王子様か王様の様である。
もはや制服というより「衣装」と言える。
「中々似合ってるな」
着替えたアザエルは、ユニを見定める様な目をしながら言う。
彼女もまた、ユニとは色違いの衣装を着ていた。
「そりゃ美少女にして貰ったからな」
戸惑いながらも、ユニは答えた。
「そろそろ、答えて貰おうか。この店が何なのか。まあ、おそらくコンセプトカフェの類だと思うけど」
「その通り。ここは魔界の王子様が市井を学ぶ為に給仕をするという設定のコンセプトカフェさ」
やっぱり……。そうユニは思った。
「業績最優秀者は『王』と呼ばれるんだ。みんなそれを目指してる」
だからアザエルは、自己紹介の時に自分は「魔界の王」になると言ったのである。
「あの時はまだキャラ設定が抜け切ってなかったから、あんな痛い事言っちゃったけど……」
アザエルは照れながら言う。
「さてと!急がなくちゃな。早くしないと仕事に遅れてしまう」
アザエルは、自分の頰を軽く叩いて気合いを入れ直す。
「さあ行こうか。『王宮』に!」
アザエルはそう言うと、ユニを引き連れて「王宮」、つまり店内へと向かうのであった。
悪魔との契約条項 第二百二十三条
悪魔との契約で生まれた子供も、人間とは比べ物にならない、強大な力を秘めている。
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