契約その213 Rainy seasonの始まり!
6月に入り、日本全国で梅雨入りが宣言された。
ユニ達の住む徐氏堂市も、先週からずっと雨が降っていた。
そんな中、紫音がかなづちと工具箱を持ってきて言った。
「おーい、誰か天井の雨漏りの修理手伝ってくれる者はおらんか」
「エリーに手伝って貰えばいいんじゃないのか?」
アキが言う。
「いや、この時期彼女はモーター部分がカビる恐れがあるからな、今はバラしてモーター部の掃除中なんじゃ」
紫音が残念そうに言った。
「わかった。おれが手伝うよ」
ユニが名乗りを上げた。
「おおそうか!すまんのう。雨が激しくなる前に済ませたいから、誰かの手伝いが必要じゃったんじゃ」
早速ユニ達は、最上階へと上がって状況を確認する。
「成程ここか……」
雨漏りの箇所はすぐにわかった。下にバケツが置いてあるからである。
今はまだ雨は激しくないので、そこまでは漏れていない。しかし、雨は今後ますます強くなる予報である。
そうなる前に対策しなければならないだろう。
ユニは紫音が持ってきてくれた脚立に登ると、長方形の板の四方をマスキングテープで固定する。
「これでまあ、しばらくは大丈夫だろう。もっとも、なるべく早くに業者に頼んで直して貰った方がいいけど」
ユニは脚立から降りながら言った。
「うむ。十分じゃ。ありがとう」
とりあえずの応急処置をしてくれたユニに、紫音は感謝した。
そうこうしている内に、雨風はどんどん強くなっていく。テレビをつけてみると、全てのチャンネルが緊急特番を流していた。
「すごい……テ◯東まで……」
次々とチャンネルを変えながら萌絵は絶句した。
「これ、ただの雨じゃないんじゃないですか?」
みすかが疑問を呈する。
「そりゃテレ◯が特番やるレベルですから」
萌絵が言った。
その時である。
ピンポーンとチャイムが鳴った。
表ではなく、地下室の方のチャイムである。
瀬楠家に住んでいないミズキと丁井先生が地下道を通ってこちらを訪れる時に使う様に設置されたものだ。
慌ててみんなは地下室を訪れる。
「二人とも!」
「ハアハア……危なかった……」
二人はびしょ濡れのまま、息を切らしながら床に横たわっていた。
「こんなびしょ濡れで……大丈夫ですか!?」
心配するユニを、丁井先生は制止する。
「いやそんな事より大変だ。安行和田川が氾濫したらしい」
「安行和田川が!?」
その情報にショックを受けるユニ達。
安行和田川は、瀬楠家の近所にある川である。
名前は徐氏の家臣で治水工事を担当した和田安行という人物から取られており、現在その河岸は住民達の憩いの場になっている。
その安行和田川が氾濫したのである。
幸い瀬楠家は高台に位置するので浸水する心配はないが、沿岸の地域はすでに浸水しているらしい。
「だからクラス全員の安否確認と学校の土嚢積みで駆り出されてな、大変だった」
着ていたレインコートを脱ぎながら丁井先生が言う。
「うちの神社にも避難してきた人達が大勢やってきてて……みんなに手伝って欲しくて来たんだ」
丁井先生に続けてミズキが言う。
「そんな……もはや災害じゃないか……」
ユニが焦燥しながら言った。
「災害」という言葉を聞き、風月がガクッと肩を落とし、震え出した。
やはりまだトラウマが残っているらしい。
「う……くう……」
その事に気づいたユニは、慌てて肩を貸す。
「風月!ごめんな。災害なんて言って。大丈夫だ。大丈夫だから」
とにかくこの異常事態に、ユニ達は把羅神社へと行く事を決意した。
「生憎だが、アタシはダメだ。キミ達の安否を確認したから、今すぐ学校に戻らないといけない」
「じゃあ家に残る組と、学校へ行く組と、神社へ行く組とに分けようか」
ユニが言うのだった。
神社へ行く組は、地下道を通って神社へ行き、そこの避難民をボランティアとして世話する組である。
瀬楠家に備蓄された救援物資をなるだけリュックサックに詰める。
「こんなに持っていっていいのかな」
ミズキが遠慮ぎみに言った。
「いいのいいの。まだまだあるから。むしろ足りなくなったらこっちに戻ってきて補充すればいいよ」
由理が言う。
そもそも普段から十数人を抱えているのもあり、食べ物は潤沢にあるのである。
「ありがとう。じゃあ行ってくるよ」
ミズキ達はそう言うと、地下道へと入っていった。
「全員無事にな!」
その後ろ姿に、ユニは叫んだのだった。
家に残る組は、パニックを起こした風月を介抱する組である。人数はそれ程必要ない。
さて、問題は学校へ行く組である。瀬楠家と学校を直接繋ぐ通路は残念ながらない。
つまりこの雨の中を大荷物を持って行かなければならないのである。
「どうするべきか……」
雨の中を生身で移動する事は危険である。最悪何か移動手段がなければならない。
「丁井先生の車は?」
アゲハが聞く。
確かにそれなら比較的安全に行く事ができる。
しかしそれを、丁井先生自身が却下した。
「いや、まずそこまで行くのが危険だ。さっき車はウチのアパートの駐車場に停めて来たからな」
ではどうするべきか。
うーんと唸るユニ達。
そんな中、どれみが手を挙げてこう言った。
「その事ですが、すでに解決しましたわ」
「どういう事だ?」
「だって……ほら!ちょうど来た所ですわ」
どれみに言われ、窓の方を見るユニ達。
「呼んでおいてよかったですわ」
どれみが呼び寄せたのは、火殿グループのヘリコプターだった。
「これなら学校まで行けます。ある程度の医療設備も備えていますから、簡易的な病院としての役割も果たせるでしょう」
さすがは火殿グループである。ヘリコプターの一台ぐらいを動かす事など造作もないのだ。
これで移動手段の目処は立った。
神社組同様に、ユニ達はリュックサックに物資を詰め込み、さらに瀬楠家の屋上に降り立ったヘリコプターにもダンボールを詰め込む。
「必ず!生きて帰って来てね!」
家に残る由理が叫ぶ。
「ああ!必ず!生きて戻る!」
人員と物資を乗せたヘリコプターは、雨風が吹き荒ぶ中、飛び立ったのであった。
「雨風が強いな。ヘリコプターも大丈夫かな」
「大丈夫ですわ。火殿グループの世界一の操縦技術を甘く見ないで下さい」
ユニの心配を、どれみはそう言って一蹴した。
それならいいとユニは安心した。
「じゃあ行こう!おれ達の学校へ!」
ユニの叫び声と同時に、ヘリコプターは一路晴夢高校へと向かうのであった。
しかしこの未曾有の大災害、その恐ろしさをユニ達はまだ知らなかった。
悪魔との契約条項 第二百十三条
災害については、日々の対策が重要である。
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