契約その210 大阪食い倒れtrip!
ユニ達の修学旅行は、いよいよ最終日の大阪となった。
ホテルをチェックアウトしたユニ達は、バスに揺られて大阪駅前に着くのだった。
バスが止まり、ドアが開くと、ルーシーは軽くスキップしながら地面に降り立った。
大阪観光は、ルーシーが修学旅行で一番楽しみにしていたものである。
足取りからもそれが伺える。
「たこ焼き!お好み焼き!串焼き!全部楽しみにしてたんだ」
ルーシーはそう言い残すと、飛び跳ねながらバスから出て行った。
「ちょっと待ってよ!おれ達みんなで一緒に回る約束だっただろ!?」
慌ててユニ達もそれを追って行くのだった。
「おばちゃん!たこ焼き一つ!シンプルなやつね」
ルーシーは、たこ焼き屋のテーブルに千円札を叩きつけながら言った。
「はいよ!威勢ええな姉ちゃん!」
「そりゃ数千年生きてるからね」
たこ焼きとお釣りを受け取りながら、ルーシーはそう返した。
まいど!という店員のハキハキした声を背に受けながら、ルーシーはユニの元へと戻って来た。
ルーシーは、ユニが座っている長椅子の隣に座ると、買ってきたたこ焼きを差し出してこう言う。
「はいこれ。あげる」
ユニは、厚意に甘えて一つ頂く事にした。
「ハフッハフッ……うん。おいしい」
ユニの感想を聞いて、ルーシーはでしょでしょ?と言わんばかりの笑顔を見せた。
「みんなはどうしたんだ?」
ユニがたこ焼きを飲み込むのを待って、ルーシーが聞いた。
「七海は部活のお土産、アキと萌絵と風月はヒーローショー、藤香とルアとメイはそれぞれ食べ物買いに行って、それ以外のみんなは通天閣に行ってる」
近くの自動販売機で買って来たお茶を飲んでから、ユニは答えた。
「そうか……じゃあ今は二人きりなんだな……」
ルーシーはそう静かに呟くと、たこ焼きを長椅子の前にそっと置く。
そして、ユニの方へゆっくりと唇を持って行って……。
「あ!ちょっと待って!」
何かを察したユニは、慌てて一旦ルーシーに待って貰い、たこ焼きのソースを拭った。
「ソース味じゃ勿体ないからな」
気を取り直して、ルーシーはユニにゆっくりと唇を近づけていって……。
ちゅ……っ!ちゅぅぅ……!
ルーシーのキスはだいぶ激しい。ユニは、勢いで長椅子に押し倒されてしまった。
その衝撃で地面に落ちそうになったたこ焼きを、ユニは慌てて右手で受け止めた。
公衆の面前で口づけをし合う女子二人を、通行人がジロジロと見ながら通り過ぎていった。
ちゅぱっ……!
だいたい一分程過ぎて、ようやくルーシーはユニから唇を離し、体を起こした。
「ハアハア……いつもに増してずいぶん激しかったな……」
長椅子に押し倒されたままの体勢で、ユニが言った。
「長らくやってなかったからな。限界だったんだ」
ルーシーが言う。
ユニも体を起こすと、持っていたたこ焼きをルーシーに渡し、お茶をがぶ飲みして喉を潤すのだった。
それからみんなと合流し、ユニ達はお好み焼き店へと足を運んだ。
「いつもこういうのは由理がやるんだけど、今はいないから……」
ルアが中々に慣れた手つきでお好み焼きを焼いていく。曰く、大阪ロケの打ち上げの時によく焼いているらしい。
「こういうのの手際がいいと、その次も使ってくれる様になるんだ」
トップアイドルと言えども中々大変である。
「これがお肉でこれがチーズ。そしてこれがシーフードね」
「わーいありがとう!」
ユニ達は、ルアにお礼を言いながらお好み焼きを味わうのであった。
時間も過ぎ、ユニ達はバスへと乗り込んだ。
修学旅行を終えて学校へと帰還するのである。
行きは京都へ、帰りは大阪からなので、道順は少し違う。とは言えそれ程変わらない道順である。
少しすれば、行きの景色が逆再生される様になった。
ユニ含め、ほとんどの生徒は疲れて寝てしまっている。
だが、ルーシーだけは起きていた。
悪魔の睡眠は浅いのだ。
「たぶん何百年、何千年と経とうが忘れないだろうな。この旅行の事は。お前もそうだろ?」
ルーシーは、隣に座るユニの方を向いて呟く。
酔うからという理由で、ユニの隣に席を代わって貰ったのである。
バスの車内に差す夕陽が眩しかった。
数時間後、ユニ達は懐かしの我が家へと着いていた。
「ふーっ!ただいま!」
留守を預かっていた由理、紫音、どれみ、みすか、エリーが玄関まで迎えに来てくれた。
「お帰り姉さん達。ご飯できてるよ」
「ホントか!やったー!」
やっぱり我が家が一番だとユニ達は思うのだった。
食事の場は修学旅行の思い出話になった。
「それでスリ犯から……」
「また犯罪者に会ったんですか」
どれみが呆れ半分に言う。
「それは……さすがにおれもそう思うよ。でもさ……」
ユニは意を決した様に言う。
「また全員の時間が取れる事になったらさ、旅行に行きたいよな。例えばハワイとか」
ニコッと笑いながら言うユニ。
そんなヒマがあるのかとみんなは思うが、旅行に行くのは賛成である。
「全員の時間が取れるとなると……夏休みとかだろ。ほら二年前も全員が休暇を取れる時期あったじゃん」
ルーシーが言う。
成程、その時期になるのか……。
みんなは顔を見合わせる。
「よし。決まりだな。夏休みはでっかく海外旅行だ!」
「おー!」
そう言いながら拳を突き上げるみんな。
しかしこの時その旅行が、ユニ達にとって最低最悪なものになろうとは、この時は誰も夢にも思わなかった。
悪魔との契約条項 第二百十条
悪魔の睡眠は短い。
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