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契約その204 大江戸real大捕物イベント!

「ハアハア……」


 ある男が、京都の路地を逃げていた。


 男はスリをやった所を見つかり、警察からの逃走の最中なのである。


 スリだけではない。食い逃げに万引きに特殊詐欺と、男は数々の犯罪歴があったが、その度に逃げ切った。


 そのスリルが、男にはたまらなかった。


 全ては学生時代に陸上部で培った身体能力の賜物である。


 やがて男は、素早い動きで「京都江戸ランド」のフェンスを乗り越え、園内に侵入した。


 そこで園内の事務所に侵入し、置いてあったペットボトルの水を盗み、一息つく。


 つかの間の休息の中、机に置いてあったキツネのお面が目についた。


 そういえば、ここ「京都江戸ランド」ではコスプレができる店があった事を、男は思い出した。


 このお面を被って園内にいれば、警察に見つからずに逃げ延びる事ができるだろう。


 男はそのお面を拝借し、早速園内に繰り出すのだった。



 一方、ユニ達は中央広場で配られた人相書きに目を通す。


 その人相書きには、キツネのお面を被った人間のイラストが墨絵風に描かれていた。


 どうやら二時間経つ間に「怪盗キツネ小僧」なる人物を捕まえれば、レストランでスイーツが一品無料で食べられるらしい。


 ユニ達の他にも参加する人はいる様だが、あまりガチでやる人はいない様だ。


 探すついでに園内をたくさん見て回って貰い、露天や土産物屋で利益を出そうとする園側の思惑通りである。


 仮に捕まってデザートを無料で渡す事になっても、その利益の方が大きいというわけだ。


 ユニ達もそこまでガチる必要はないと感じた為か、あまり真面目には捕まえないつもりである。


「じゃあさ、各自別れてその『怪盗キツネ小僧』を探そうか。勿論楽しんでね」


 ユニの言う通り、みんなそれぞれ自分の行きたい場所へと繰り出していくのだった。


 七海とモミは、屋台で出されていた団子に舌鼓を打っていた。


「ん〜♡もちもちしててうまいのです〜♡」


「このみたらしもおいしいよ。甘過ぎてさっきから虫が寄ってくるけど」


 食べる?と七海はモミにみたらしを渡す。


「ありがとうございます!」


 七海が渡したみたらし団子を、モミは受け取ろうとしたその時である。


「あ!」


 うっかり手が滑り、七海の手がみたらしでベタベタになってしまった。


「ご……ごめんなさい」


 しっかりと謝るモミ。


 七海はそんなモミに、気にしなくていいと言ってくれた。


「でもこれじゃ手もつなげないなあ。そこのトイレで手を洗ってくるから、荷物を持って前のベンチで待ってて」


 七海の言う通りに、ベンチに座って彼女を待つモミ。ふと携帯の時計を確認すると、イベント開始からすでに30分が経っていた。


「このまま誰にも見つからないんですかね」


 モミがぽつりと言ったその時である。


 トイレの近くの茂みから、何者かがモミの所へやって来た。


 男は、慣れた手つきでモミと七海のカバンから財布を取り出すと、そのまま逃げようとする。


 そのあまりに鮮やかな手口故に、一瞬気づかなかったモミだが、気づいたモミは自分のお団子ヘアが飛ぶぐらい驚いた。


「え!?いやちょっと!何してんですかあなた!」


 男は、モミの事など気にせずに立ち去る。


「まさか!そうはさせませんよ!」


 モミは「乳揉み(しゅみ)」で鍛えた身のこなしで男のお尻にしがみついた。


「男の人のお尻は趣味ではありませんが……逃しはしませんよ!」


 しかし男は、優れた体幹でモミを振り解く。


「うげっ!」


 すばしっこいとはいえただの女子高生に過ぎないモミの体が地面に叩きつけられた。


「大丈夫!?モミ!」


 騒ぎを聞きつけて七海がトイレから飛び出してきた。


「モミよりも!あの人を追って下さい!」


 モミが指差した先では、もうすでに男が逃走を始めていた。


「あいつか!」


 七海はクラウチングスタートの構えを取り、女子高生最速とも言われるスタートダッシュを決めた。


 七海は元々短距離走者(スプリンター)である。じわじわ逃げられては追いつけないと、一瞬で距離を詰める事にした。


 しかし着物では走りにくい。そこで七海は草履を脱いで裸足になる事で、よりスピードアップを図る事にした。


 効果はてきめんで、ついに七海はその男のすぐ後ろに陣取った。


「このっ!」


 伸ばした長い七海の手は、男のシャツの裾を掴む。しかし、男はそれを強引に振り解いて逃げた。


「うわっ!わーっ!」


 勢い余った七海は、そのまま近くにあったゴミ箱に突っ込んだ。


「あいてて……逃しちゃった……」


 七海はゴミ箱の蓋を頭に乗せながら、悔しそうに呟いた。


 その後、ユニ達と合流した七海とモミは、事の次第を説明する。


「見たのは一瞬だけですが、あれは確かにキツネのお面でした!」


 モミの説明に、七海も頷きながら同調する。


「まさか『怪盗キツネ小僧』が本当の怪盗だったなんて……」


「いややってる事はコソ泥じゃないか?」


 七海の発言に、メイが突っ込んだ。


「いや、そいつは多分『怪盗キツネ小僧』じゃないな」


 ユニが言う。


「何でですか?キツネのお面で顔隠してるなら、盗みもやりたい放題でしょう?」


 モミが聞く。


「考えてもみてよ。確かにおれ達は『怪盗キツネ小僧』の正体を知らないが、従業員の人達はちゃんと知っているはずだろ?」


 キツネのお面を被った状態で犯罪を犯せば、疑われるのは『怪盗キツネ小僧』役の自分であるというのがユニの推測である。


 つまり、犯人は「怪盗キツネ小僧」ではない。


「確かに……」


 彼女達は顔を見合わせながら納得した。


「とにかく、従業員の人と警察に話をしよう」


 ユニ達は、事情を話しに事務所へと向かうのであった。


 悪魔との契約条項 第二百四条

 どんな理由があろうとも、盗みを行ってはならない。

読んで下さりありがとうございます。

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