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契約その203 出発!school trip!

 ―――5月下旬の午前5時―――


「それじゃあ行ってくるよ」


 ユニは、家に残る由理達にそう言う。


「行ってらっしゃい」


「お気をつけてですわ!」


「お土産期待しとるぞ」


「頑張って下さい!」


「楽しんできて下さい」


 それぞれ由理、どれみ、紫音、みすか、エリーの見送りを受けて、ユニ達は修学旅行へ出発した。


 行き先は関西、奈良、京都、大阪を三泊四日で回るのである。


 学校に着くと、すでに何台かのバスが路肩に停まっていた。


 クラスごとに別のバスに集まり、点呼を取る。全員が集まり次第、バスは出発した。


 一日目の目的地、京都までは数時間かかる。ユニ達は、サービスエリアまで思い思いに過ごすのであった。


 二時間程経って、バスはトイレ休憩の為にサービスエリアに立ち寄った。


 トイレ休憩とは言うが、ここのサービスエリアは一時間程停まる事になる。


 時間までは、自由に買い物をしてもいいとの事である。


 バスを降りたユニは、まずはぐーっと伸びをする。


「おーいユニー!」


 バス内では席が離れていたルーシーが、そんなユニを呼んでいた。


 ルーシーの元へやって来たユニに、ルーシーは言う。


「どうする?何か食べる?」


「そうだな……」


 ユニが食べるものはもう決まっていた。


「このサービスエリア限定の巨大シュークリーム!これ食べたかったんだ!」


 ユニは、自分の顔程の大きさはあるシュークリームを買って来た。


「レビューによれば生地はサクサクで中は近くの牧場で採れた生ミルクをふんだんに使っているらしい」


 ユニが興奮した様子で話した。


「わーいいね!映えるなー!」


 アゲハも気に入ったらしく、写真を撮りまくっていた。


 そのシュークリームを胃の中に収めたユニは、意気揚々とバスに乗り込むのであった。


 修学旅行は、クラスごとに決まった順番で各観光地を回る事になっている。


 昔はクラスでいくつかのグループを作り、各自決めた場所に行く事になっていたのだが、昔の先輩が問題を起こしてなくなったという。


 正午前になり、何事もなくバスは京都の清水寺へと着いた。


「京都に〜!キター!」


 大きく両手を上げながら喜ぶアキ。どうやら楽しみだったらしい。


 観光地につけば、ある程度は自由に動く事が認められる。ユニ達は、早速かの有名な「清水の舞台」を見に行くのだった。


「結構高いね」


 月並みな感想を言うヒナ。


「明治時代に禁止されるまで、本当に飛び込む人がいたらしい。それも江戸時代では200人以上も」


 ユニがヒナにそう解説する。


「いたんだそんなに……」


 ヒナが呆れながら言うのだった。


 その後、ユニ達が訪れたのは金閣である。


 当然ユニ達以外にも人はおり、観光客がしきりに写真を撮っていた。ユニ達も例外ではない。


「金ピカだー!」


 そう言いながら写真を撮りまくるアゲハ。カメラを使い慣れている為、今回クラスの写真係になったのである。


「足利義満が建てたんだ」


「ヨシミツ?」


 アゲハの頭にクエスチョンマークが浮かんでいた。


「室町幕府の三代将軍だよ。南北朝の合一とか、北山文化とか、授業で聞いた事ないかな?」


「うーん……ある様な……ない様な……」


 アゲハは首を傾げながら考えていた。


 ともあれ、すごい人だという事はアゲハにも理解できたので、みんなで金閣を背景に写真を撮るのであった。


 その後も色々な寺社仏閣を訪れたユニ達が次に訪れたのは、「京都江戸ランド」である。


 江戸なのか、京都なのか、どっちなのかとユニは思っていた。


 しかし、シンプルに楽しそうな場所だからか、今まで寺社仏閣ばかりでつまらないと言っていた者も、露骨にテンションが上がり出した。


 その気持ちを尊重したのかどうかはわからないが、この場所だけ時間をかなり取っている。


 やがてバスは駐車場に着き、整列、点呼を取った上でそれぞれがそれぞれの場所へ駆り出すのであった。


 当然ユニは彼女達と回る事にしている。


「どこから行く?」


 七海が入り口で配っていた地図を広げて聞いた。


「まずは……ここだよ!」


 アゲハに連れられて、ユニ達が訪れたのは「貸衣装屋」であった。


 時代劇で見る茶屋みたいな建物の前に、「貸衣装屋」というのぼりが立っていた。


「ここで着物を着るのがおすすめなんだって!」


 スマホ片手にアゲハが言う。どうやらネットの情報らしい。


 ユニ達は、アゲハの進言に従って「貸衣装屋」の門を叩くのであった。



 ユニ達には一人一人の衣装部屋が与えられ、プロの着付け師やスタイリストに着替えさせて貰った。


 衣装部屋といってもかなりせまいが。


 そして数十分後。


「みんな着替えたか?」


 着替え終わったユニが聞く。


「大丈夫」


「OK」


「いつでも」


 全員分の返答が聞こえた所で、みんなは一斉に衣装部屋のドアを開くのであった。


「へへっどうだ」


 ルーシーが言う。彼女は、赤い着物というか浴衣に身を包み、足には厚底の草履を履いていた。


「中々いいんじゃないか?」


「みんなかわいい!」


 口々に言い合うみんな。


「それで……」


 ユニはアキの方に目をやった。


「それって……」


 アキは、白い無地の着流しに刀(模造刀)を腰に収めていた。


「みんな女性もの着ると思ったから、私だけは浪人風にして貰ったんだ」


 アキが言う。


「何だか沖田総司みたいですね」


 萌絵は評した。


 着替えたまま「貸衣装屋」を出て、どこへ行こうかという話になるユニ達。


 その時、またアゲハがスマホを見て言った。


「これとかどうかな!『大江戸大捕物イベント』!今から10分後、中央広場で人相書きが配られるからその人相書きに似ている人を探し出して捕まえるイベントなんだって」


 曰く、犯人役の人は元駅伝ランナーやパルクールの選手などのアスリートで、中々捕まらないらしい。


「でも面白そうでしょ?」


 そう言うアゲハに、ユニ達は顔を見合わせ、大きく頷いた。


 それをみんなOKという意味と捉えたアゲハとみんなは、意気揚々と中央広場へと向かうのであった。


 悪魔との契約条項 第二百三条

修学旅行、それは学生生活最大のイベントである。

読んで下さりありがとうございます。

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