3話 初めてのダンジョン
今回は4時間程馬車に揺られ、近辺で降ろされてから1時間程歩く。アロナ町に着いたのは12:00前、丁度昼時だ。
サージの町からリャンド町までは2000ゼニ、対してリャンド町からアロナ町までは5000ゼニ。⋯⋯危険度が違うとはいえ、少々ぼったくられてるとは思うが仕方ない。
「流石に活気は無いな」
常に生命の危険に晒されている上に近隣との交流も絶たれ、国からの支援があるとは言え経済的な損失も大きい。明るくいろと言う方が無理な話であろうが。
適当な飯屋で昼食を済ませ、一度ギルドを覗いてからそのままダンジョンへ向かう。思っていた以上にすぐ近く、歩いて15分の所にダンジョンはあった。
「ここが⋯⋯」
案内された場所には、草原には似つかわしくない洞穴の入り口のようなもの、そしてその左右には一目見ればそれが一昼夜過ごす類のものでは無いと分かる立派なキャンプがあった。
洞穴付近には見張りと思われる男が一人、立っている。
「級は?」
「アイアン級だ。入る権利はあるだろう?」
俺が目に付くなり嫌な顔をして尋ねてきた見張りに冒険者証を見せながらそう返す。すると、
「アイアン級か。それなら素材狙いか?」
見張りは意外にも態度を軟化させ、朗らかに話しかけてきた。
「いやすまんな、場所が場所だけに町の無鉄砲がよく来るんだよ。それでつい、な」
事情を聞くと、町を救いたい、俺なら攻略できるから俺をダンジョンに入れろと、血気盛んな若者達がちょくちょく尋ねて来るらしい。俺のこともその一人だと思ったとのこと。
「入る権利がちゃんとあるなら話は別だ。と言っても深入りはするなよ?危険だと思ったら直ぐに引き返すことだ」
「あぁ、わかってる」
「口だけじゃないと信じてるぜ。ところで地図はいるか?1階層は30000ゼニ、2階層3階層はセットで50000ゼニだ」
「高いな」
サージの町で聞いた話では、ダンジョンの地図は1階層あたり10000ゼニが相場らしいが。
「地図の売り上げは町に寄付することになってるからな、町を助ける為にも少しばかり値段を上げてる。これ位ポンと出せる奴じゃないとダンジョンに入ったところで何も出来ずに死んじまうぜ?」
「⋯⋯そう言う理由じゃ文句も言えないな。ほら」
見張りに金貨を8枚渡し、代わりに3枚の地図を貰う。1、2枚目は内部の様子がびっしりと描かれていたが、3枚目はまだ描きかけのようだ。
「3階層は今攻略中だ、もし行くことがあるなら地図を出してくれればその時点での追加は描いてやるぜ。つってもソロのアイアン級じゃ2階層にも降りられないとは思うがな」
「覚えておくよ。じゃあな」
「気をつけてな」
「ああ」
見張りに別れを告げ、ダンジョンの中に1歩足を踏み入れる。初めてのダンジョンに、大きな期待と少しの不安を胸中に入り混じらせながら。
洞穴の中に入るとそこには階段があった。先の見えない階段。ファイアで足元を照らしながら慎重に1分程降りたところで急に景色が変わる。そこには⋯⋯、
「凄いな。不可思議だ」
地下に降りた先の光景とは思えない、壮大な森林が広がっていた。