4話 攻略、ダンジョン第1階層
「『取り出し』」
両手に銃を持ち、襲いかかる魔物達を迎え撃つ。
敵は5匹、角の生えた兎だ。一斉に向かって来る兎達。動きの軌道を予測し、銃の引き金を引く。
『ギャ!』『ギッ!』
全弾命中。銃弾をその身に受け、ばたばたと倒れる兎達。
銃のおかげで瞬殺出来たが、小さな体躯とすばしっこい動き、接近戦なら手こずっていただろう。
「確かにアンナの言ってた通り、アイアン級のソロじゃ無謀な難易度だ」
ダンジョンに入ってから約30分、魔物の襲撃はこれで8回目。
魔物の住処に足を踏み入れているのだから当たり前の話ではあるが、地上とは比べ物にならない遭遇頻度だ。チームで挑むのならば役割分担も出来るが、生憎ソロ。気を休める事も出来ない。
本来なら安全を考慮し、この1階層で魔物を狩りながら売れそうな素材を探すのがベターな選択なのだろうが。
「用があるのは2階層なんだよな」
ダンジョンには階層があり、それぞれの階層で違う様相を呈しているらしい。地図を見る限り、このダンジョンも1階層が森林エリアであるのに対し、2階層は洞窟のようになっている。そして、俺の求めている素材は2階層にある。
銃に弾を込め直し、地図を見ながら先へ進む。目指すは2階層、そこにある鉱山エリア。
「⋯⋯ってまた魔物か。今度は猪か?」
全く、気を休める暇も無い。
俺は木々の間から鼻息荒く突進してくる猪を跳躍で躱し、
「『取り出し』」
取り出したライフル(1000ゼニ)の銃口を猪の脳天に向けた。
◆◇◆◇
「ここのマッピングも終わったよ」
「ok、少し休んだら先へ進むか」
ここはダンジョン第3階層。仲間からの報告に、攻略パーティのリーダーであるヤノフは満足気な反応を返す。
攻略開始から約3週間。死傷者や離脱者も何人か出てはしまったが、それでもまだ30名以上が残っている。ダンジョンを攻略し始めてから約3週間、3週間でこれだけ残っているなら上出来と言えるだろう。
⋯⋯また、これは間違っても口には出せないが、死傷者はいずれも近隣の有志達。即ちヤノフを含めた王都組にはまだ欠員が出ていない、その幸運もヤノフの心の安定に一役買ってくれている。このままダンジョンを最後まで攻略出来たら良いのだが⋯⋯そんな淡い期待を抱きながら、ヤノフはそこそこに埋まってきたであろう第3階層の地図を受け取り、眺める。
「そろそろ半分はいったか?」
「いってるといいね」
「それより何階層まであるかの方が重要だ」
「3階層までなら嬉しいけどな」
「私は5階層に1票」
「⋯⋯嫌な1票だな」
ヤノフが仲間達と他愛もない話をしていると、
「そういえばさ」
「ん?」
「あの子達⋯⋯無事かな?」
ヤノフの仲間の1人、ジェニーが少し神妙な面持ちで嫌な話題を振ってきた。
「あいつらか⋯⋯」
ジェニーの言う『あの子達』、ヤノフの言う『あいつら』とは、離脱者の1人、いや2人だ。⋯⋯最初から離脱するつもりで入った者を、離脱者と呼んでいいのかは疑問だが。
『俺達2階層に用があっただけなんで!ここで別れまーす!』
『行きの付き添い、あざっす!あざっす!』
あれは丸一日前。憎たらしい顔でそう言い、走り去って行った若者2人を思い出し、ヤノフの表情は少し曇る。
「どうだっていいだろ、あんな奴等」
「そうなんだけどさ⋯⋯」
自分達を騙した者にまで心配の声を上げる。それは人としては正しいのかもしれないが、冒険者としては正しく無い。しなくてもいい同情をするなど、無駄に心を消耗するだけだ。
それに⋯⋯、
「逆に聞くが、生きてると思うか?」
「⋯⋯思わない」
「結論は出たな。この話は終わりだ」
そう。いくら小規模とはいえ、
シルバー級2名が生きて帰れる程、ダンジョン2階層は甘くない。
◆◇◆◇
ダンジョンに潜り始めて3時間、ようやく2階層への階段が見つかった。
入り口からこの階段まで、距離にするとおよそ4km。攻略パーティが残してくれた目印を使って尚、たった4kmに3時間もかかってしまった。少し慎重に行き過ぎた気もするが、初めてのダンジョンならまぁこんなものだろう。
「この先はいよいよ2階層か⋯⋯」
ダンジョンとは、基本的に奥に行けば行くほど難易度が上がるらしい。構造も複雑になり、何より魔物が明確に強くなる。なんでもダンジョンコアと関係があるとか無いとか。
それ故、1階層の魔物相手に苦戦しなかったからと言って2階層でも通用するとは限らない。だが、
「よし、進もう」
そんな事、考えても仕方無い。
胸を張り、堂々と淀みなく、
俺は2階層への階段を下りていく。




