講義④『ストーリー構成』と『キャラクター設定』と『世界観設定』
ふう、難産でした。もしかすると講義④は大幅な改稿をするかもしれません。ただ、その際は内容の変更はほとんど行ないません。読みやすく調整するだけです。
なお私的なことですが、この創作論を作るため実際に作品のプロットを作っているのですが、脳内でこんなやりとりをして不安に駆られています。
私1「よし! これで『勇者と聖女(仮)』はおもしろい作品になる!」
私3「コンセプト違反ではないか?」
私1「……え?」
私3「特にこの部分だ。それによってあれをハンマーで叩き潰すのだろう?(私2を見ながら)」
私2「うひょう! この『ノース』とかいうツンデレがたまんねえぜ!」
私3「ああいう感じで読者が萌えているところをハンマーで叩き潰すのだぞ? そんなシナリオで本当に大丈夫か? 変更してもいいのだぞ?」
私1「……(滝汗)」
私3「忠告はした。ああ、忠告はしたからな。『マイスターマインは外道に違いないww』などの感想があっても、しっかり受け取るんだぞ。まあその前に評価されないかもしれんがな」
私1「」
講義④を始めます。
講義④では『プロット』に含まれる『ストーリー構成』『キャラクター設定』『世界観設定』を論じます。
まず『ストーリー構成』では「制作するシナリオに含まれるストーリーを全て作り上げる作業」になります。『企画書』で書いた〈シナリオ構成〉をより綿密にしたイメージの作業と考えていただければよろしいのではないかと思います。
その次に『キャラクター設定』『世界観設定』を論じます。ここの作業は「ユーザーに提供したい感情を作り上げる作業」と言っても過言ではない重要な作業です。そのため「登場する全てのキャラクターと世界観を設定する」ことになります。
ただし創作論を説明する構成上、『キャラクター設定』『世界観設定』のことが『ストーリー構成』のほうでも論じられていたりするので、注意をお願いします。
それでは『ストーリー構成』から論じます。
ここでは「シナリオを構成するストーリーの束を造り込む」「ストーリーがユーザーに与える感情」「ストーリーの成立と不成立の条件」を確認するためのものを作ることが目的です。
同時に「該当するシナリオやストーリーがどこで描写されたか」という「チェック覧やチェックの一覧表を作っておく」こともオススメします。これはあとで論じる『描写構成』で利用するとよいです。
やり方は個人によって色々あります。しかし最終的には「埋まっていないストーリーを埋める」「繋がっていない複数のストーリーを繋げられるストーリーを作りシナリオにする」などをしてシナリオを完成させればいいのです。
またこの作業は『企画書』で行なった〈シナリオ構成〉をより細かく作り上げる作業であり「作品を全て消費し終わったユーザーが理解する物語」を作ります。「どういった形で理解させるか」といったことは行ないません。「序破急はもちろん筆者の言う伏線の張り方はここではいっさい行なわない」ことをご了承ください。
そのため、ここでは筆者のオススメ、あるいは理想の構成方法を紹介することになります。
それでは「シナリオを構成するストーリーの束を造り込む」から説明を始めます。つまり「全体の流れ」「ユーザーに理解させる繋がったシナリオとその流れ」を作ります。
まずは『企画書』を簡単に作り上げましょう。その中に含まれる〈シナリオ構成〉で「全体のシナリオ」を表現した「骨格ストーリー」があると思います。これを細かく分解していき「複数のシナリオ」にしましょう。
すでに『企画書』で作っている場合はそのまま持ってきましょう。無いなら最初の作業はこの「全体のシナリオ」を「適切に複数のシナリオに分解する」ことです。必要でないなら複数のシナリオにする必要はありません。
また「基本的には時間軸の順番どおりに繋げるとよい」と思われます。複雑な作品ならこの原則を外しても良いですがオススメしません。というより『描写構成』で充分に複雑にできます。
イメージとしてはこんな感じですね。【全体のシナリオ】=【シナリオ①】+【シナリオ②】+【シナリオ③】としています。時間軸も【シナリオ①】→【シナリオ②】→【シナリオ③】という流れです。
【全体のシナリオ】
「勇者が魔王を倒して世界が平和になる話」
||
【シナリオ①】
「国王が勇者に魔王討伐の命令を発して、勇者が拝命し、国を出発するまでの話」
【シナリオ②】
「勇者が各地を旅しつつ、魔王軍の妨害を受けながら、最後は聖剣を手に入れる話」
【シナリオ③】
「勇者が魔王城に乗り込み、魔王は抵抗するも、勇者に倒されて世界が平和になる話」
というように分解し、複数のシナリオを作ります。
充分にシナリオを分解したら、今度は「そのシナリオをさらに分解して細かいストーリーを作り、それらを繋げていく作業」を行ないましょう。ここで「そのシナリオの結末になる部分までのストーリーを作ればそのシナリオが完成」します。
イメージはこんな感じです。
【シナリオ①】
「国王が勇者に魔王討伐の命令を発して、勇者が拝命し、国を出発するまでの話」
||
【ストーリー①など×N】
「魔物に襲われる王国の姫を勇者が助ける。お礼に姫が勇者を王城に連れていく話」
「姫様が勇者を王城で歓待し、勇者が恐縮しつつ受け取る。王城に宿泊する話」
「深夜、姫様が国王に勇者に任命したらどうかと持ち掛ける。国王は一考する。結果、騎士団長と試合させることで落ち着き、二人は就寝」
=上記のストーリーなどを多数作る。
+
【ストーリー⑳くらい】
「出発直前。勇者が出発しようとするも、親交を深めた姫に呼び止められ、お守りを渡される。勇者がお守りをもって魔王討伐に出発する」
『このストーリーのⒶを次のシナリオのストーリーのⓉあるいはⓈに繋げる』
という感じでストーリーを繋げていき、シナリオを完成させましょう。
上記のように「シナリオが完成したらその中のストーリーを、次に繋がるシナリオのストーリーを繋げる」ことをしましょう。どのストーリーをどう繋げるかは自由です。繋げれば「そのシナリオと次のシナリオが連続したものとなり、一つのシナリオとしても完成する」ことになります。
これらの作業を繰り返し「すべての各シナリオ(複数のストーリー)を繋ぎ合わせ、全体のシナリオ(全てのストーリー)を完成させる」ことを行ないます。
確認方法は当然ながら「シナリオを全てストーリーに分解した際に各ストーリーのⒶが何処かしらのⓉやⓈに繋がっている」ことを確認すれば大丈夫です。基礎編で「ストーリー」について語った部分があるのでそちらを確認すれば大丈夫かと思われます。
イメージとしては以下のような数式でも考えておくといいでしょう。
【シナリオの式①】
全体のシナリオ=シナリオ①+シナリオ②……+シナリオN
【シナリオの式②】
各シナリオ=ストーリー①+ストーリー②……+ストーリーN
もちろんこれは基本のようなものなので、作ったシナリオによってはこのような感じでもいいと思われます。
【シナリオの式①】
全体のシナリオ=シナリオ①+シナリオ④
【シナリオの式②】
シナリオ①=シナリオ②+シナリオ③
シナリオ④=シナリオ⑤+シナリオ⑥
【シナリオの式③】
各シナリオ=ストーリー×N
というようなイメージで全体のストーリーの流れを作っていきます。この構成は創作者の数だけ存在するのでこれ以外は自分で考えてみると良いでしょう。
執筆などの制作ではこのような『ストーリー構成』を参考にして描写を行ない、作品を作ります。しかし「このストーリーだけでは描写ができない」といった場合があると思います。例えば「戦闘シーン」「キャラクター同士の論戦」などが代表例でしょうか。
そういった場合は「さらにストーリーを細かく分解する」ことをオススメします。
例として「勇者が聖なる剣で魔王を倒す」という戦闘シーンのストーリーがあるとして、これを使って説明しましょう。
厳密に言うなら「勇者が聖なる剣で魔王を倒す話」を「骨格ストーリーとして扱う」として考えることが適切かと思います。分解したストーリーは「補助ストーリー」として書かれています。
イメージはこちら。
【ストーリー①】
「勇者が聖剣で魔王を倒す」
【ストーリー①を構成する複数の補助ストーリー】
①「単独で、勇者は魔王城の玉座の間に辿り着く。魔王が両手を広げて迎え入れる」
②「勇者と魔王が〈貴様の悪逆非道、この俺が断つ!〉〈聖剣の力を全て引き出せぬ貴様が何を言うか。身の程を知れ小童!〉などと論戦してから、戦闘に移行する。勇者から仕掛ける」
③「勇者と魔王が激闘する。魔王が有利。数十分の激闘後、魔王に聖剣を弾き飛ばされ、地に倒れ伏す勇者。どちらも血だらけ」
④「少し余裕のある魔王が〈てこずらせおって。だが終わりだ。絶望しながら死ぬがいい〉と言いつつ、爆発魔法を連発して勇者をいたぶる。勇者はなんとか致命傷を避ける。しかし勇者にダメージが蓄積していく」
⑤「聖女が勇者の救援に駆け付ける。聖女が〈間に合いました!〉と魔法障壁を張って魔王の爆発魔法を防ぐ。その間に勇者が落ちていた聖剣を拾い〈助かった、聖女〉と言う。第二ラウンド開始」
『⑥以降は省略。最後に「勇者が魔王を倒す話」を作って終了する』
といった感じで「必要ならよりストーリーを詳細に作ればよい」のです。シナリオを複数のストーリーに分解するときと同じです。
このようにストーリーをより詳細に書いて「描写に必要な物語の内容を具体化する」ことで描写ができない問題を解決しましょう。コツとしては「サンプルとなるセリフやキャラクターの動きを書く」ことを意識することが大切かと思われます。
以上が『ストーリー構成』の「物語全体の流れ」や「物語の時間の流れ」といったものを決定する作業です。
お気づきかもしれませんが「Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ」を重点に置いています。「どのキャラクターが問題を起こすのか」「どのキャラクターがそれに対処するのか」「それらの行動の結果はどのようなものか」といったものは必ず明記しておきましょう。
次はストーリーに含まれる詳細にはなにを書き込めばよいかを説明します。「ストーリーがユーザーに与える感情」「ストーリーの成立と不成立の条件」を書く部分ですね。
もっと言えば「各シナリオ、各ストーリーにおいて登場するキャラクターや世界観の設定がユーザーにどのような感情を与えるのか、あるいは与えたいのか」「各シナリオ、各ストーリーはキャラクターや世界観のどの設定で成立と不成立が決定しているか」などを確認するための細かい項目を作ります。
それをまとめ、筆者が考える『プロット』において「それぞれのストーリー」に書くべき項目はこちらです。いわゆる「5W1H」を意識して作っています。また作成ツールは「エクセル」で「たくさんの表を作ってそこに書き込む」というやり方がオススメです。
●それぞれのストーリーで書くべき項目は以下の通り。
【Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ】
ストーリーの内容を書く。ⓉⓈⒶを分けた書き方をオススメ。
このⓉやⓈに繋がる別のストーリーのⒶがあればそれも記載する。
またこのⒶが次のどのストーリーに繋がるかを記載する。
特に「人物が」「どの対象を」「どのような方法で」を重視して書く。
【キャラクター】
各ⓉⓈⒶが成り立つために必要なキャラクター。およびそのキャラクターの設定を記載。
必要に応じて、Ⓐでは大きく改変された「改変設定」を記載する。
特に「どの人物が」「その人物の目的や理由」を重点に置く。
詳細なことは『キャラクター設定』で確認できるようにしておく。
【世界観①=時間と場所】
キャラクターと同様に必要な世界観を書く。
「時間」「場所」は99%外せないので別個に用意したほうがよい。
詳細なことは『世界観設定』で確認できるようにしておく。
【世界観②=制作する作品専用の常識や知識】
世界観①と同様。
こちらはストーリーごとに必要な細かい世界観を記載。
魔法を使うシーンなら「魔法」。森なら「魔物の生態系」などといったところ。
特に陰謀が張り巡らせるような作品だと「勇者暗殺計画」「王都クーデーター計画」などの「キャラクターの知識関係」は世界観として書くのをオススメする。
【感情】
ユーザーに与えたい、あるいは与えるだろう感情を記載する項目。
記載した感情が発生しない場合は①~③に内容を追加、変更などの修正が必要。
【描写構成の確認】
上記のそれぞれをどこで描写をしたかを書く。
すでに描写したものは書いても書かなくても良い。
といった感じですね。一つずつ説明していきます。
まず【Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ】はそのままです。
最初の説明と同じく「どういったストーリーなのか」「どのストーリーから繋がるのか」「どのストーリーへ繋がるのか」といったことを書きます。特に「人物」「ⓉやⓈを行なう対象」「ⓉやⓈを行なう方法」は必ず書いておきましょう。
次は【キャラクター】ですね。【Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ】のそれぞれを行なう担当キャラクターを書き込む場所です。
そして行動には目的が伴うものですので「キャラクターの行動の目的や理由」も書きましょう。当然ですがこの「目的や理由」は「動機」「感情」などの「キャラクターの設定から発生するもの」です。しっかり練りこみましょう。
また「ユーザーに与えたい感情やストーリーの成立のために必要な設定も記載」します。その際にはあらすじや概要のような文章では長すぎるので短いものを書くといいでしょう。詳細は『キャラクター設定』で確認できるようにしておきましょう。
例えば「主人公がヒロインを美少女であると褒めたたえる話」なら必要な設定を「容姿:①美少女である:②銀髪:③線が細い」といった感じで記載します。
そして『キャラクター設定』のほうでは「①美少女」=「100人中99人が認める美少女。儚い印象を受ける」などと閲覧が容易であるように作っておきましょう。
執筆などの際にはこれを見ながら「なんて美しい銀髪なんだ」といったように描写をすればよいわけですね。必要があればより詳細に書かれた『キャラクター設定』の該当箇所を参考にしつつ描写をすればよいというわけです。
また非常に重要な「改変設定」が発生した場合も記載しておきましょう。「パンを食べた」という程度なら記載は必要ないでしょうが、「魔王に右腕を切り飛ばされた」など「明らかに影響が大きいものは必ず記載しておく」ほうが無難です。
次は【世界観①=時間と場所】と【世界観②=制作する作品専用の常識や知識など】です。
内容はどちらも「世界観」です。ここで【世界観①=時間と場所】を分けたのは、これはどのストーリーでもほぼ必ず書かなければならないので別個に書くことをオススメしているだけです。
こちらも【キャラクター】の項目と同じです。例えば「魔王城:①玉座の間」などと簡単に書き込んだりしましょう。
そして『世界観設定』のほうで「魔王城:①玉座の間」=「①ドンパチできるほど広い。②魔王の能力が強化される」などと詳細に書いて容易に閲覧できるようにしておき、執筆時のサポートに生かしましょう。
こちらももちろん、必要なら「改変設定」を記載しましょう。
【世界観②=制作する作品専用の常識や知識】も上記と同じように書きます。ファンタジーなら「魔法」「中世に近い世界」「剣と槍の使われ方」などを書きましょう。このへんはどの創作者も迷いなく書けると思われます。
ややこしいのは「勇者暗殺計画」などといったものです。このような「特定の複数人のキャラクターが共有する知識」などは「世界観の設定」として扱うことをオススメします。
こうすることでキャラクターごとに上記の詳細を書く必要がなくなります。そして矛盾を防ぎやすいと思われるからです。
特にこういった「知識の受け取り方をキャラクターごとに違いを出す」ことにも有効だと思われます。この「知識の受け取り方の違いをキャラクター設定に書き込む」とよいでしょう。
例えばこんな感じですね。
【世界観=勇者暗殺計画の全容】
①「魔王討伐後、油断している勇者を奇襲する。同行する魔法使いが担当」
②「①が失敗した場合、魔法使いは魔法で将軍にメッセージを送る。将軍は魔王城に包囲網を敷き、〈魔王の魔法により勇者乱心!〉の伝令を全軍に飛ばし、出て来た勇者を攻撃」
③「敗北した場合は魔法使いの責任にする。一族は皆殺しにし、勇者と和解を図る」
【国王&将軍】
国王が提案し、将軍が賛成している。
二人は「勇者暗殺計画の①~③」を正確に把握している。
魔王との決戦時には将軍が軍勢を率いる。
【魔法使い】
勇者の仲間。「勇者暗殺計画」に賛成した貴族の出身。
ただし③の部分は国王から知らされていない。
【軍の一部を率いる伯爵】
「勇者暗殺計画」を「勇者追放計画」として知らされている。理由は「政治上の理由で勇者の追放には渋々賛成するが、暗殺には断固反対する人格」と国王から判断されているから。
国王からなし崩しの形で「勇者暗殺計画」に参加させられようとしている。
【勇者&戦士などの他の仲間】
「勇者暗殺計画」を知らない。
このようなイメージで設定を作りこむほうが良いでしょう。
特に「長いシナリオでは重要」です。「最初のシーンでは暗殺するのに大賛成していたのに、後半のシーンでは理由もなく追放に留まらせようとしている」などのような「矛盾や破綻を起こさない」ようにしましょう。
次は「感情」ですね。もちろん「ユーザーに与えたい感情、与えるであろう感情」を想定して記載します。ここで「想定した感情がない、小さいなどで問題がある場合」は「設定が存在していない、設定が不足している」などの可能性があるわけです。
特に「執筆した作品の中にプロットで想定した感情が無い」となったらそれは間違いなく「致命的な描写不足が発生している」と思われます。あるいは「執筆した作品が創作者のイメージとかけ離れている大問題に至っている」とも言えるでしょう。
また「想定外の感情が発生した場合は基本的に喜ばしいこと」であると考えます。基礎編で書いたと思いますが、これはしっかり設定が練りこんだ結果であるからです。ただしあまりにも想定した感情と違う場合は修正を検討しなければなりません。
例を出すなら「主人公は聖人君子のいいやつ」という「感情」が「主人公は偽善者面をしたとんでもないゲス野郎」という「感情」であった場合などです。
これは下手をするとコンセプト違反でクオリティの低下につながる可能性が出て来ます。注意しておくべきでしょう。
最後に「描写構成の確認」ですが、これはどこでこのストーリーを描写したかという確認用の項目です。場合によってはなくてもよいでしょう。
以上が。「ストーリーがユーザーに与える感情」「ストーリーの成立と不成立の条件」の部分の説明ですね。
補足として「全体のシナリオや分解したシナリオなどの骨格ストーリー」にも「ストーリーがユーザーに与える感情」「ストーリーの成立と不成立の条件」で説明したことを書いてもいいでしょう。
その際は「そのシナリオで登場する全キャラクター」「そのシナリオで必要な全ての設定」「そのシナリオを理解したユーザーに与えるであろう感情のまとめ」を記載し、執筆の際の確認に活用するとよいかと思われます。「チェックリスト」のように作るのも一つの手かもしれませんね。
というわけで『ストーリー構成』の説明を終わります。
次は『キャラクター設定』と『世界観設定』ですね。説明の内容は同じなので同時に説明します。
簡単に言うと、上記の二つは『プロット』において「ストーリー構成で必要な設定の詳細な一覧やまとめを書いておく部分」と言うことができます。そのため丁寧に作りこみましょう。 また「キャラクター=特例ルール」「世界観=共通ルール」であることも忘れないように設定を作っていきましょう。
特に重要なことは「基本設定を作る」「改変設定を作る」「設定が描写された場所を記録しておく」ことです。これを少し細かく説明します。
ではまず「基本設定を書く」「改変設定を書く」ことから論じます。
本創作論でのこの二つを一緒にしたものが、一般で言う「キャラクターの設定を作る」「世界観の設定を作る」作業に該当します。
そのため「必要になりそうなことはすべて書くことが理想」です。
たしかにこれが理想です。しかしこれをやろうと思えば「永遠に近い時間を使って行なうことができる作業」になってしまい、きりが無くなります。いわゆる裏設定とかやろうと思えばいくらでもできますからね。
それをきりの良い部分で終了するにはどうするのか。簡単です。作成した『ストーリー構成』において「そこで必要になるキャラクターや世界観の設定を充分に埋める程度のものを作ったとき」を作業終了のメドにすればよいだけです。
そのため、ある程度の設定を作ったら「ストーリー構成の全体の流れを完成させる」ことを優先して行なうことをオススメします。
その際には『ストーリー構成』の「キャラクター」や「世界観」の部分を空白にしておけばよいのです。後から埋めるようなイメージで『キャラクター設定』『世界観設定』と同時に作っていきましょう。
また「基本設定を作る」ときは「どのシナリオやストーリーを基準にするのかを明確にすること」が大切です。
極端な例えだと「主人公が8歳のときのストーリー」と「主人公が16歳のときのストーリー」があった際、どちらの年齢の主人公を基準に設定を作りこんでいくかを考えます。
当然ですが「主人公が8歳の時のストーリーは回想シーンのもの」であれば「16歳の主人公」を基準にしたほうが楽な作業になると思われます。話の中心が「8歳の主人公」で描かれるならそちらを基準にしたほうがいいわけです。
そうして「基本設定を作る」ことができたら「改変設定を作る」ことをしましょう。これは「シナリオによって大きな設定の変更が発生した際に箇条書きのような形で記録する」とやりやすいと思われます。
イメージではこんな感じです。
【勇者の基本設定=基準はシナリオ②】
「強い」「正義感があふれる」「優しい」「王女に惚れている」
「勇気がある」「聖剣を持っている」「天涯孤独」など設定を多数記載する。
【改変設定=シナリオ②以降の未来】
・シナリオ④―ストーリー③・
「聖剣を持つ」→「魔王軍との戦いで聖剣が損傷。鍛冶屋に預けて不所持」
・シナリオ⑤-ストーリー②・
「五体満足」→「魔王が王都を襲撃した際に応戦し、負傷。以後、左腕がない」
【改変設定=シナリオ②以前の過去】
・シナリオ①-ストーリー⑤・
「父母妹の三人家族」→「家族を魔王に殺されて天涯孤独という基本設定になる」
といったイメージで設定を作ると良いでしょう。
このように「基本設定」「改変設定」を作っていきます。そして最終的に『キャラクター設定』と『世界観設定』は「ストーリー構成で当てはめる設定の詳細に確認できるものを完成させる」ことを行ないましょう。
実際の作業において「容姿」「人格」などどんなことを書けばよいのかというのは「作品専用の設定項目を作らなければならない」という以外には言えません。
それも当然で「サッカー」を題材にした作品なら「フリーキック」「ロングスロー」などの能力の設定を作る必要がありますが「魔法」についての設定はいりません。逆に「魔法でバトル」をする作品なら「サッカー関係の設定は必要ない」わけです。
そのため「何にでも通用するテンプレの設定項目」は厳密には作れません。
ただし「性格」「容姿」など「ほとんどの作品に流用できる設定」はあります。そういったテンプレの設定は創作者が自分用のものを作るべきでしょう。その際には一般に流通する創作本を参考にすると良いかと思われます。
最後に「設定が描写された場所を記録しておく」ことですね。
これは執筆などの作品制作の際に「矛盾や破綻を発生させない」「ユーザーに必要な設定を説明したかどうか」などを判断するために使います。
つまり「チェック項目」です。「30ページ目に描写」「第4話で魔法の②~⑤の設定を描写」などと書くとよいでしょう。
これをしていくと制作作業中に「チェックができていない」=「描写していない」=「ユーザーにとってその設定は存在しない状態である」ということを把握できるわけです。
基礎編では「描写しない設定はユーザーにとって存在しない設定と同義」であることを書いたと思います。しょうもないミスが致命的なミスにならないように注意しましょう。
以上で『キャラクター設定』と『世界観設定』の説明は終わります。
そして講義④も終了です。
お疲れさまでした。
〇講義④『ストーリー構成』と『キャラクター設定』と『世界観設定』まとめ〇
●『ストーリー構成』は「制作するシナリオに含まれるストーリーを
全て作り上げる作業」である。
●『キャラクター設定』『世界観設定』は
「ユーザーに提供したい感情を作り上げる作業」と言っても過言ではない。
●『ストーリー構成』で行なうことは以下のことである。
「シナリオを構成するストーリーの束を造り込む」
「ストーリーがユーザーに与える感情」
「ストーリーの成立と不成立の条件」
●『ストーリー構成』ではまず
「ユーザーに理解させる繋がったシナリオとその流れ」を作ろう。
●その際には「全体のシナリオ」を
「適切に複数のシナリオに分解する」ことを行ない、次に「そのシナリオを
さらに分解して細かいストーリーを作り、それらを繋げていく作業」を行なう。
●イメージはこのような感じである。時間軸順に並べるのが基本。
【全体のシナリオ】
「勇者が魔王を倒して世界が平和になる話」
||
【シナリオ①】
「国王が勇者に魔王討伐の命令を発して、勇者が拝命し、国を出発するまでの話」
【シナリオ②】
「勇者が各地を旅しつつ、魔王軍の妨害を受けながら、最後は聖剣を手に入れる話」
【シナリオ③】
「勇者が魔王城に乗り込み、魔王は抵抗するも、勇者に倒されて世界が平和になる話」
●複数に分けたシナリオの一つがが完成したら
「その中のストーリーを、次に繋がるシナリオのストーリーを繋げる」
ことをする。
●これを繰り返し「すべての各シナリオ(複数のストーリー)を繋ぎ合わせ、
全体のシナリオ(全てのストーリー)を完成させる」ことをする。
●執筆などの際に「このストーリーだけでは描写ができない」などの
問題が起きた時は「さらにストーリーを細かく分解する」ことをする。
●その際は以下のことに注意をする。
「描写に必要な物語の内容を具体化する」
「サンプルとなるセリフやキャラクターの動きを書く」など。
●それぞれのストーリーで書くべき項目は以下の通り。
【Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ】
ストーリーの内容を書く。ⓉⓈⒶを分けた書き方をオススメ。
このⓉやⓈに繋がる別のストーリーのⒶがあればそれも記載する。
またこのⒶが次のどのストーリーに繋がるかを記載する。
特に「人物が」「どの対象を」「どのような方法で」を重視して書く。
【キャラクター】
各ⓉⓈⒶが成り立つために必要なキャラクター。およびそのキャラクターの設定を記載。
必要に応じて、Ⓐでは大きく改変された「改変設定」を記載する。
特に「どの人物が」「その人物の目的や理由」を重点に置く。
【世界観①=時間と場所】
キャラクターと同様に必要な世界観を書く。
「時間」「場所」は99%外せないので別個に用意したほうがよい。
【世界観②=制作する作品専用の常識や知識】
世界観①と同様。
こちらはストーリーごとに必要な細かい世界観を記載。
【感情】
ユーザーに与えたい、あるいは与えるだろう感情を記載する項目。
記載した感情が発生しない場合は①~③に内容を追加、変更などの修正が必要。
【描写構成の確認】
上記のそれぞれをどこで描写をしたかを書く。
すでに描写したものは書いても書かなくても良い。
●「特定の複数人のキャラクターが共有する知識」などは
「世界観の設定」として扱ったほうがよい。
例:「勇者暗殺計画」「勇者追放計画」など。
●『ストーリー構成』で記載した「ユーザーに対して想定した感情」が
「無い、小さいなどで問題がある」場合は以下が原因である可能性あり。
例:「設定が存在していない、設定が不足している」など
●「執筆した作品の中にプロットで想定した感情が無い」の場合は
「致命的な描写不足が発生している」
執筆した作品が創作者のイメージとかけ離れている大問題に至っている」
などが発生している。
●「想定外の感情が発生した場合は基本的に喜ばしいこと」である。ただし
あまりにも想定した「感情」と違う場合は修正を検討するべし。
●『キャラクター設定』と『世界観設定』は
「ストーリー構成で必要な設定の詳細な一覧やまとめを書いておく部分」
と言える。これらを丁寧に作ろう。
●特に重要なことは以下のこと。
「基本設定を作る」「改変設定を作る」
「設定が描写された場所を記録しておく」
●「基本設定を作る」ときは
「どのシナリオやストーリーを基準にするのかを明確にすること」
が大切である
●「改変設定を作る」ときは「シナリオによって
大きな設定の変更が発生した際に箇条書きのような形で記録する」ことを
オススメする。
●上記の作業における終了の判断は「ストーリーで必要になる
キャラクターや世界観の設定を充分に埋める程度のものを作ったとき」
をオススメする。
●実際の作業では「作品専用の設定項目を作らなければならない」ことに
注意する。
「何にでも通用するテンプレの設定項目」は厳密には作れない。
●「設定が描写された場所を記録しておく」ことの目的は
「矛盾や破綻を発生させない」
「ユーザーに必要な設定を説明したかどうか」
などを執筆などの制作作業の際に判断するために使うからである




