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講義⑤『描写構成』はユーザーにとって全てである

 いまさらですけど、ブックマークと評価をありがとうございます。


 ブックマークされても報告音(?)や「ブクマに追加されました!」のメッセージなどがないんですよね。

 だから私はポイントが加算されたときに「!?」っとドッキリビックリマークをリアルに出したい衝動に駆られました。


 それと他もそうですが、講義の内容が他と重複している部分があると思います。改稿で削ったりして読みやすくすると思うので、わかってるよと思う部分は流し読みしてください。


 重複してそのままなのは「書いたよね?」「いや、念のために……」「締切的な威圧感が……」と私がテンパった結果です。


 よし、がんばりますん。

 ブックマークされた方が書かれる作品のクオリティ向上に役立ってるといいなあ。



 それでは講義⑤を始めます。


 講義⑤は『描写構成』です。企画書の〈描写構成方針〉を具体化する、あるいは詳細に書き込むファイルを作成する作業を説明する内容です。


 まずはおさらい的に「描写は創作者とユーザーにとってどんな存在か?」を論じてから「描写では何に気を付ければよいのか」「序破急や既存作品のストーリーの類型はどう解釈すればよいか」を説明します。最後に「描写構成のまとめ」を書きます。


 では『描写構成』を始めましょう。

 まずは「描写は創作者とユーザーにとってどんな存在か?」から始めます。


 基礎編でも述べましたが、創作者にとって「描写」は「シナリオをユーザーへ理解させること」です。文章、マンガのイラスト、ボイスなど、小説やマンガなどの作品形態を問わず「描写」という表現をしない限りシナリオやストーリーは伝わりません。当然ながら感動や爽快感なども伝わりません。


 もっと大胆に言うなら「ユーザーにとって描写はシナリオの全て」と言えます。

 創作者の頭の中にどれだけ設定の濃いストーリーがあってもそれが描写でユーザーに伝えられないからかぎり、役立たずのゴミです。


 まずはこれを思い出してください。


 そしてユーザーにとって「シナリオは商品、あるいはそれにとても近いもの」です。食べ物にも近いかもしれませんね。


 おもしろい小説でも読み続けると飽きが来るが、時間を置いてまた読むとまたおもしろい。違う工夫をされた小説を読んでおもしろいとなったら自分の脳内のお気に入りリストに記録される。


 そのため筆者は「シナリオを読む、聞く、見る」などを「消費する」という表現でまとめてきました。


 筆者は踏み込んで考えました。まず「おもしろいってなんだろう?」と。「感動」「残酷なキャラクター」「爽快な結末」「悲惨な展開」「甘酸っぱい恋愛」「突っ込みせざるを得ないコメディ」など、じぶんが「おもしろい」と感じたものを分析したのです。


 筆者の結論は「ストーリーを理解した結果、自分になんらかの感情が発生したときに感じるものがおもしろいの正体だ」というものでした。それを元に書いたのがこの創作論です。適切な言葉が思いつかなかったので「感情」としました。そしてこれがユーザーの求めるものだと解釈しました。


 逆に「おもしろくない作品とはなにか?」と考えた時には極端な例えで考えました。「設定しか書いてない小説」「登場人物一覧」「世界観一覧」といったものなどが該当しました。


 前者は仮定した作品の中に「勇者の髪型は~能力は~」という文章しかないものを思い浮かべてみました。

 うん、3行くらいでゴミって結論を出して元に戻します。そういう結論でした。


 後者の二つは長編の作品を読む際に「続きを読みたいけど最初から読むのがめんどくせえ」というときにしか利用しないな、と。それ単品で評価することはまずない、と判断しました。


 そう考えていくうちに筆者は思ったのです。創作者が「設定しか書いてなければ設定しか伝わらない」し「ストーリーしか書いてなければストーリーしか伝わらない」と。


 そうして筆者はユーザーにとって「描写」は「創作者の匙加減で決定されたシナリオやストーリーの理解方法」と結論を出したのです。

 だから「ユーザーにとって描写はシナリオの全て」と言えるのではないかと思います。



 ではこの前提を元に「描写では何をに気を付ければよいか?」について論じます。

 まとめるとこんな感じです。



①描写はユーザーに理解できるものでなければならない

②ユーザーには感情を与えなければならない

③設定などの説明の描写は苦痛やストレスである

④設定が多く存在するほどストーリーが発する感情は大きくなる

⑤描写した設定は蓄積する

⑥描写によるストレスは感情でカバーできる



 これらが大雑把に描写で気を付けなければならないことですね。


 まずは①を説明します。


 ①は当たり前のことです。想定したユーザーに相応しい表現をしなければなりません。極端で分かりやすい例だと「対象ユーザーが日本人なのに全文を英語で書く」「5歳向けの絵本でルビのない漢字をバンバン使う」などはダメということです。ユーザーが読めません。


 こういったことはまず創作者はやりませんが、細かい問題だと「複雑なシナリオや伏線をこの対象ユーザーが理解してくれるか?」「自身の文章力が幼稚すぎて逆に対象ユーザーには逆に読みづらいのではないか?」「どのレベルまでの専門用語を使っていいのか?」などといったものがあります。


 小説家なら「高尚な文を書こうとだけ意識せず、基本は万人にわかりやすい文章を書く」ことを心掛けなければなりません。ただしマニア向け(趣味層を対象とする)の場合は「万人に」というのを無視してもいいでしょう。


 マンガ家なら「ピカソ的な芸術性が高いものだけを意識せず、万人向けの表現をせよ」というのがわかりやすい心掛けでしょうか。当然これもその趣味層を対象とする場合は逆にピカソ的な芸術性の高い表現を重視すればよいでしょうね。


 この技術の向上は文章力やデッサン力の話です。ネットや参考書を手本に頑張ればなんとかなります。制作の前にあらかじめ文章力やイラストの表現力も見直すことも大切です。不安に駆られたら調べましょう。


 そういった本を読んで筆者が心掛けている文章を書くコツをまとめたのがこちら。小説でもこれを意識しているつもりです。参考になれば幸いです。




【調査と情報の整理をする】

①必要なことを調べ、書きたいことをまとめる

②無駄な情報は削除すると、それだけで読む労力が減る

 複数のことを伝えたいなら文章を分割しましょう。

③情報はトップダウンで理解させるようにする。

 トップダウン=「全体→部分」というように文章を構成する。

④文章は論理的な順序と、重要なことを先に書くようにする。

 例:「僕としては~」「~だからで、つまり僕としては~」

   「僕」が重要なら前者のように書くことを推奨。

⑤文章における漢字の含有率は30%がよい。

 意図的なもの以外は30%を意識し、ひらがなを書きましょう。


【読み手への配慮】

①1つの文章で読み手がすぐに理解できることは3つ程度

②文章で特に注意してほしいことは「アイキャッチャー」を使う。

 アイキャッチャー=「」〈〉【】などのかぎかっこが代表例。

③チャンクは7つ程度にしよう。

 チャンク=「こん」〈な〉【もの】がそれぞれチャンクです。

 「」だけでなく色を変えるなどでも分けることができます。

 日本語は漢字とひらがな、カタカナで自然とチャンク化されやすい。

 「だからひらがなおんりーだととてつもなくよみにくいんですよー」

 「当然僕は~」のように漢字が重なる場合は「当然、僕は~」のほうがよい。

 少なくとも誤読を避けやすくなります。


【文字やレイアウトの注意点・横書きについての補足を含む】

①横書きは1行35文字までがよい。

②長文は35~60文字までにしましょう。

③行間はなんでもよいです。

 ただし日本語は縦書きから始まった文化です。

 適度な間隔で1~3行ほど開けるとよいとされています。

 行間詰め詰めのメールを読むと目が痛いのはこのため(筆者の実体験)。

 3~5行ほど書いたら空白1~2行を開けるのがよいのではないでしょうか。




 こんな感じですね。上記以外にも色々な注意点があります。なにが適切かというのは個人の感覚も大きいので、自分の感覚と情報でよいと思う文章を書きましょう。



 次は「②ユーザーには感情を与えなければならない」ですね。


 これも当然の話です。ユーザーが「シナリオを読む、見る、聞くなど」を行なうのはユーザーが「感動や爽快感はもちろん絶望などの多種多様の感情を楽しみたいから」です。


 そのため「必ずストーリーを描写して感情を発生させる」ことをしましょう。


 自分もそうでしたが、駆け出しすぎる初心者の作品が酷評されやすいのは「設定だけ描写されストーリーを描写されていない」などが原因かと思われます。あるいは①と連携して「ストーリーをユーザーが理解できず感情が発生していない」なども原因と思われます。


 それを判断する方法として、筆者の創作論ですと「Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ」の式が成立できるようにきちんと対応した「Ⓣ」「Ⓢ」「Ⓐ」をそれぞれ描写しなければならないとしています。


 もちろんこれさえ描けていればどう描写しようが構いません。200ページほどの小説で「プロローグでⓉとⓈを描写」し「エピローグでⒶを描写」というものすごく間隔の空いた「Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ」でも感情が発生します。

 

 ただし上記の場合で「プロローグとエピローグの間に190ページのシナリオがある」としたら「190ページの間においては、ユーザーに『プロローグとエピローグのⓉ+Ⓢ=Ⓐ』の感情は生していない」という状態です。


 そのため「どこで感情が発生するのか」というのも意識しましょう。


 よく「プロローグで大損している」などという批評や指摘の例を見かけると思います。

 あれを筆者の創作論で言い換えると「プロローグでⓉ+Ⓢ=Ⓐが成立しておらず、感情が発生していない。そのためプロローグを読み切るまでが苦痛すぎて、ユーザーが続きを読む意欲を無くしている」という解釈になります。



 次は「③設定などの説明の描写は苦痛やストレスである」「④設定が多く存在するストーリーほど感情は大きくなる」「⑤描写した設定は基本的に蓄積する」「⑥描写によるストレスは感情でカバーできる」を説明します。


 なんだこの二律背反みたいなものは、と言いたくなります。


 ③の例を出すと「勇者の髪型は逆立っている」「勇者は20代の若者である」などの文章は設定の説明であり、ストーリーではありません。そのため「感情が発生しない」=「ユーザーの利益ではないのに理解のために時間を消費する」=「苦痛やストレスになる」という流れが発生するわけです。


 しかしキャラクターや世界観の設定はストーリーが発生させる感情を大きくさせます。④のために少なからずユーザーに設定の説明をしなければなりません。


 ではどうすればよいのか、という解決方法が⑤と⑥になります。

 まとめると「ストーリーの描写で感情を発生させつつ設定を描写すればよい」「蓄積した設定を利用して短い描写で感情を大きくすればよい」などが筆者の理論になります。


 イメージとして牛丼で例えてみましょう。


 例えば「おいしく牛肉を食べたい」となったとします。しかし「生肉で食べても美味しくない」と判断した人間はどうするのか。一般的な解決方法として料理があるわけです。


 料理中は「牛肉を食べられないというストレス」を受けますが、「おいしい牛肉を食べるために人間は我慢して料理をする」わけです。そして完成した牛丼(=感情)で最初の欲求を満たし、料理というストレス(=設定の描写)は気にならなくなるわけです。


 しかしこの料理が「15分でできる」であればほとんどの人が我慢できますが「1時間」「3時間」「12時間」とストレスが大きくなると我慢できる人間は少なります。「調理過程でのストレス(=設定の描写)に耐えられない」からですね。そのため人間は牛丼を食べたい場合は「自分に合った料理方法」というのを選ぶわけです。


 シナリオを楽しむ際もこの牛丼を使ったイメージと同じです。「発生した感情で充分に楽しめていれば設定の描写というストレスはストレスにならない」のです。


 それから、具体的な例として「ターミネーター2」も例にしてみましょう。


 あの作品は最初から「敵のターミネーターが主人公を殺すために追いかける」というシーン(ストーリー)にはなっていません。

 最初は「味方のターミネーターが酒場でごろつきをボコボコにし、服やバイクを奪って人間に偽装する」「敵のターミネーターが警察官を殺し、警察官に偽装する」などのシーンから始まります。そしてこれらのシーンは基本的に短いものです。


 これらのストーリーで「ターミネーターやべえ」「ふぁ!? 液体!? ええ液体!?」などの感情をユーザーに与えて楽しませます。同時に「ターミネーターは普通の方法だと人間では勝てない」「味方と敵のターミネーターはそれぞれ別タイプ」「ターミネーターの目的は主人公」などと「設定を描写し、その設定を蓄積していく」ように作られています。


 上記のことを充分に行なってからようやく「もっともユーザーを楽しませるストーリー」である「敵のターミネーターに狙われる主人公を味方のターミネーターが助ける」というストーリーが描写されます。


 すると「それまでに描写した設定」=「蓄積した設定」のおかげで「敵のターミネーターに狙われる主人公を味方のターミネーターが助ける」というストーリーの発生する感情が大きくなります。

 同時にこのストーリーでは「ターミネーターが主人公を狙う目的」「ターミネーターは人間より強い」などの設定の描写をしなくてよくなり「ストレスなくストーリーを楽しめる」わけです。あるいは「最小限の描写で済むのでストレスも最小限に留まる」ことに繋がります。


 先ほどの牛丼で言うなら「牛丼食べたいなあ」と思ったら「3時間かけて作った牛丼ならもうできてるよ」と家族に言われ、すぐさまうまい牛丼を食べるようなものですね。


 こういったように「感情でストレスをごまかしつつ描写を説明し、もっとも重要なストーリーで大きな感情を発生させ、ユーザーを満足させる」ことを目指しましょう。


 なおこれらはあくまで原則です。作品には「ページ数」などの制限があります。これらとよく相談し、「ときにはストレスを与えることを覚悟する必要もある」と思います。


 個人的には創作者で大変なことのトップ3に入ると考えています。



 では次です。「序破急や既存作品のストーリーの類型はどう解釈すればよいか」ということを説明します。


 これら「序破急」「起承転結」「ストーリーの類型」「ストーリー構成の基本」「テンプレ」とは何でしょうか。


 筆者の解釈ですとこれらは「成功した歴史や経験則のようなもの」です。もっと言えば「説明と感情のバランスが素晴らしい」と一定数のユーザーから賞賛されたものですね。


 そのため「序とはどういった仕組みなのか?」などと考えても「万人に通用する最適な答えはない」というのが筆者の論になります。しかし「歴史や経験則のようなもの」であり「認められたもの」「立証されたもの」という意味も含まれているのです。これを利用しない手はありません。


 これを利用したいと考えるなら「数多くの作品の知識を可能な限り蓄えること」がもっとも重要になるでしょう。

 と言っても時間は限られているので厳選するなら「万人が認める名作」「一部のユーザーに人気を誇る名作」「自分が好きな名作」「おもしろくない自分の作品」「おもしろくないアマチュアの作品」を選び、研究や分析をすればよいと思います。


 それらを研究して以下のことを自分で考えて結論を出せばよいのではないでしょうか。あるいは「制作するシナリオに相応しいやり方を用意する」ことが大切ですね。



①設定の描写によるユーザーの限界ストレス

②各ユーザー層の限界ストレスの違い

③ストレス減少のための感情の「発生タイミングと大きさ」の必要量

④各層におけるユーザーの理解しやすい描写や伏線などのレベル



 といったことでしょう。

 これらを研究して地力を上げればおのずと良いシナリオを作れるのではと考えます。


 ちなみに「テンプレ」は「作品のストーリー構成やキャラクター要素を相似させて利用したもの」になりますね。つまり「認められたもの」「立証されたもの」を利用するわけですから「おもしろくて当然のストーリー構成や要素」であると言えます。


 しかし問題も相似させていることにあります。つまり多くの人が「読んだことがある」という既視感を覚えやすく、ユーザー評価点が高くなりがちなのです。テンプレの利用比率を極力抑えたり、あるいはまったく新しい要素を組み合わせなければ評価されにくいのです。


 イメージとして「多勢に無勢の状況で、織田信長は奇襲を行ない、桶狭間の戦いで今川義元を討ち取った」という話を使ってみましょう。


 上記の話は小学生でも知っているくらい有名な話ですよね。だからこのまま聞いても「ほーん」「知ってるよ、だからなに?」という反応が返ってきますよね。これ以外の反応をさせるためにどう説明すればよいか。

 より詳しく「桶狭間の戦い」を説明すればいいんですよね。筆者が驚いた「桶狭間の戦い」がこちら。

 

「多勢に無勢の中、ヤケクソになった織田信長は神社で願掛けした後、偶然にも降り始めた雨を利用して玉砕突撃を行なった。そしたらたまたまそこが今川義元の本陣であり、そのまま総大将が討ち取れたのので織田信長の勝利になった」


 という説を聞いた時ですね。「知的なイメージ……」「いや奇襲じゃなくてただの突撃かい」という感情と共に強烈な印象ですぐに覚えました。


 こういったように「同じことを説明しているけど違うことを説明しているようにする」=「テンプレなんだけどテンプレに感じさせない」という工夫が大切になります。

 だからテンプレでは特に細かな設定が大切になるでしょう。


 次に移る前に、もう少し補足を。

 筆者の「序破急」についての考えを述べます。「起承転結」も似たようなものです。参考程度に考えてください。


 この「序破急」は「一つのシナリオを三つのシナリオにわける。ユーザーの理解促進のため、それぞれのシナリオに役割を持たせる描写方法である」と考えています。「序=序盤」「破=中盤」「急=終盤」という認識でもかまいません。


 まず「序」です。

 この段階だとユーザーは「そのシナリオの知識を一切持っていない」という状態になります。


 大きな感情を発生させるためには設定の説明をしなくてはなりません。しかし設定の説明は基本的に苦痛やストレスです。

 そのため「序」は「短いストーリーを繰り返してユーザーを楽しませつつ、少しずつキャラクターや世界観の設定を説明する段階」と解釈できます。


 90~120分の映画で序盤に「主人公が奥さんと喧嘩する」「主人公が友達と談笑する」「テロリストがなにか悪だくみを話している」などといった短いストーリーが多いのは「主人公の性格」「主人公の過去や現在の環境」「悪役の目的」などの設定を説明しつつ、ユーザーを楽しませるストーリーを描写しているわけです。


 流通している作品、あるいは創作本などで「序:破:急=1:4:1」などのように「序」の割合が少ない理由は「感情を発生させなくてはならない=感情が小さいのでストレスも少なくする必要がある=説明も短くなりがち=描写量が抑えられてしまう」というのが原因だと考えられます


 続いて「破」を。

 当然ながらこの段階でのユーザーは「序で描写された設定を理解している」という状態です。そのため蓄積された設定により「ストーリーから発生する感情は序のストーリーよりも大きなものとなる」わけです。


 つまりこの段階のユーザーは「感情が大きいのでその分だけ大きなストレスに耐えることができる状態」であると言えます。そのため「終盤のストーリーのために設定の描写を最大限に行なえる段階」とも言えます。可能なかぎり感情の発生に必要な設定を説明するため、必然的に「破」の描写量が多くなるわけです。


 続いて「急」です。

 これが終わるとエンディングです。当然ユーザーは「序と破で描写された設定を理解している」という状態です。つまり「ストーリーが感情を発生させるたびに大きな感情が生まれる状態」ですから「もっともストレスなくシナリオを楽しめる段階」ですね。


 つまり「描写による設定の説明は必要最小限でよい=ストーリーを詰め込めるだけ詰め込むことができる=多種多様の大きな感情を発生させやすい」わけです。同じ理由で描写量が少ない理由は「無駄な設定を説明する必要がないから」となります。


 例えば「ターミネーター2」の「急」で「味方のターミネーターが親指を立てつつ別れを告げる」という名シーンがあります。時間的には2~3分ですが、あれが絶賛されるのは「短い描写なのに感情がとてつもなく大きいから」というのが理由の一つでしょう。無駄な描写を徹底的に省いているのもそうかもしれませんね。


 また「序破急」はシナリオの大きな構成だけで使われるものではありません。「全シナリオ=序破急①」「序①=序破急②」「破①=序破急③」「急①=序破急④+序破急⑤」というように細かく分かれている場合もあります。


 先ほど例に出した「ターミネーター2」も「序①=序破急②」のように細かく分かれていたと思います。「急②=敵ターミネーターの襲撃から味方ターミネーターが主人公を助ける話」になっていたと記憶しています。


 以上が筆者の「序破急」の考え方になります。これをどのくらい割合にするかというのは自分自身で考えるしかありません。というか正解なんてないです。

 使うのならば「シナリオ専用の序破急の割合を考える」ようにしましょう。




 では次に移ります。ようやく「描写構成のまとめ」を論じます。とは言っても全てを論じるのは不可能なのであくまでイメージとして考えてください。


 やらなければならないことは以下の4点です。エクセルやワードで『描写構成』のファイルを作りましょう。



①シナリオとストーリーの描写を決定する

②キャラクターと世界観の設定の描写を決定する

③『ストーリー構成』で作ったシナリオを全て理解できる構成を作る

④想定した感情が発生している構成である

⑤納得のできる構成である(企画書に沿っている)



 これらを順守しなければなりません。


 最初は基本的に「ストーリーを理解させる順番」の決定から始めるといいでしょう。もちろんストーリーは『ストーリー構成』で作ったものを持ってくることをオススメします。


 筆者の論じた『ストーリー構成』で時間軸通りに作成しているなら、これを参考に描写を考えれば「ユーザーが理解する物語の、物語上の矛盾や破綻を防げる」と思います。


 そうして「どこで?を描写し、どこで?を描写し、どこで?を描写するか」を決定し、「どこで『?+?=?』が成立してストーリーとなり、感情が発生するのか」を確定させていきます。

 最終的に「ユーザーがおもしろいと感じるポイントや場所が理解できる」という客観的視点から見ることが可能になるわけです。


 例を上げるなら「1~3ページでストーリー①の『Ⓣ→Ⓢ→Ⓐ』と描写する」などですね。この場合は「Ⓐを描写した段階で感情が発生する」ことになります。

 もちろん「1~2ページでⓉを描写。10~12ページでⒶ1を描写。18~20ページでⓈを描写。70~71ページでⒶ2を描写」などのように複雑にするのも良いでしょう。この場合は「Ⓣ+Ⓢ=Ⓐ」が成立するのは71ページ目であることに注意します。


 このように「ストーリーを理解させる順番」を決定します。



 次に「ストーリーの描写内容」「キャラクターや世界観の設定の描写内容」を「対応したストーリーのどこにどんな描写をするのか」を決定しましょう。


 特に『ストーリー構成』で記載したと思われる「ストーリーの成立不成立に関わる設定」には注意を払いましょう。くれぐれも設定を説明し忘れてユーザーから「矛盾している」「おもしろくない」などの批評を受ける凡ミスは避けるようにしてください。


 例えば小説なら「ストーリー①は地の文や会話文で描写する」「キャラクターAのセリフはひらがなだけで表現する」などという描写の制限などですね。必要なものをこれに記載しておき、制作の際の参考資料にしましょう。


 そしてキャラクターの「①ヒロインは好きな人と話すとき緊張してしまい、ツンデレのツンの成分で感情表現する」「②ツンの1:殴る、ただし力は弱い」などの設定をどう描写するかも決定しましょう。


 またこのときに「ストーリーの成立不成立」には関係しないものの「大きな感情の発生には必要な設定を描写できるようにしておく」ことが大切です。


 小説なら「キャラクター像」や「世界観像」が代表例ですね。マンガや映画などは視覚で強制的に認識できますが、小説は文章にしないかぎり存在しない上に、ユーザーはキャラクター像を視覚化せず、イメージ化して捉えることになります。


 この「イメージ化」には設定の説明が不可欠です。それがないというのは「白紙のコピー用紙を渡して、そこにかわいいキャラクターが描かれている」と納得させるレベルの無理無茶無謀の極みです。


 しっかり「キャラクター」「世界観」「ストーリー」を「ユーザーの頭の中で物語をイメージ化できるようにしてあげる」ことが大切になります。


 また制作の際の補助のために、サンプルとして具体的に「セリフ」「仕草」「心理描写」などを書いたりするのも効果的かと思われます。


 それから筆者の語った「伏線やどんでん返し」=「後半に描かれたストーリーで前半のストーリーを誤解させる」といったことを行ないたい場合は「一週目の理解=勇者が魔王を倒す話」「80ページ目以降か2週目=勇者が父親である魔王を倒す話」ということなども記載しておくといいでしょう。制作において伏線の失敗を防げます。

 これはミスリードなども同じと思われます。


 そして「基本的に設定の描写は一度でいい」ということを強く意識しましょう。ストーリーの最初で説明した設定を後半でも説明する必要はありません。それでも必要だ、と強く感じた時にようやく検討するくらいで大丈夫です。


 そのため「描写した設定のチェックリストを作る」ことをオススメします。ワードやエクセルで作った「ストーリー構成」「キャラクター設定」「世界観設定」のファイルに「ヒロインは美少女=10ページ目で描写済み」などと記載しておけば良いでしょう。


 こうしておけば「設定によるストーリーの成立と不成立」を「ユーザー視点で確認できる」ため「作品の矛盾や破綻を防ぐ一助になる」はずです。


 こうして『描写構成』を作成していき、最終的に「描写されたシナリオを理解すると、ストーリー構成で作ったシナリオを理解できるようになっている」ようにしておけば、あとは作成した『描写構成』に従って制作をすれば作品が完成するということになります。


 最後にまとめると、これを全て意識しつつ『描写構成』を完成させた際、以下のことなどを「客観的に近い視点で確認できるようになる」と思われ、そうなっていることが理想になります。


①どこで感情が発生しているか

②どこでユーザーはストレスを感じるか

③感情とストレスのバランスは適切か

④「描写構成」を「ストーリー構成」「キャラクター設定」「世界観設定」

 と比べた際、矛盾や破綻がないことを確認できるか。

⑤描写の表現はユーザー層にふさわしいか


 

 作品を制作する前に「5ページまで感情が発生しねえ! 書いてもおもしろくねえ!」「この感情だけだとストレスに耐えられなくない?」「なぜ終盤で設定の説明しかできておらず感情が発生してないのか、コレガワカラナイ」などを発見できるだけ発見し、作品のクオリティ向上を目指しましょう。



 以上が『描写構成』です。

 これにて講義⑤を終了とさせていただきます。

 お疲れさまでした。今回も長いよ……。


〇講義⑤『描写構成』はユーザーにとっての全てであるまとめ〇


●創作者にとって「描写」とは「シナリオをユーザーへ理解させること」である

●ユーザーにとって「描写」とは「シナリオの全てである」

 あるいは

「創作者の匙加減で決定されたシナリオやストーリーの理解方法」。


●創作者が「描写」で気を付けなければいけないことは以下のこと

①描写はユーザーに理解できるものでなければならない

②ユーザーには感情を与えなければならない

③設定などの説明の描写は苦痛やストレスである

④設定が多く存在するほどストーリーが発する感情は大きくなる

⑤描写した設定は蓄積する

⑥描写によるストレスは感情でカバーできる




●筆者的な文章の書くコツの一覧。他にもいろいろある。

【調査と情報の整理をする】

①必要なことを調べ、書きたいことをまとめる

②無駄な情報は削除すると、それだけで読む労力が減る

 複数のことを伝えたいなら文章を分割しましょう。

③情報はトップダウンで理解させるようにする。

 トップダウン=「全体→部分」というように文章を構成する。

④文章は論理的な順序と、重要なことを先に書くようにする。

 例:「僕としては~」「~だからで、つまり僕としては~」

   「僕」が重要なら前者のように書くことを推奨。

⑤文章における漢字の含有率は30%がよい。

 意図的なもの以外は30%を意識し、ひらがなを書きましょう。


【読み手への配慮】

①1つの文章で読み手がすぐに理解できることは3つ程度

②文章で特に注意してほしいことは「アイキャッチャー」を使う。

 アイキャッチャー=「」〈〉【】などのかぎかっこが代表例。

③チャンクは7つ程度にしよう。

 チャンク=「こん」〈な〉【もの】がそれぞれチャンクです。

 「」だけでなく色を変えるなどでも分けることができます。

 日本語は漢字とひらがな、カタカナで自然とチャンク化されやすい。

 「だからひらがなおんりーだととてつもなくよみにくいんですよー」

 「当然僕は~」のように漢字が重なる場合は「当然、僕は~」のほうがよい。

 少なくとも誤読を避けやすくなります。


【文字やレイアウトの注意点・横書きについての補足を含む】

①横書きは1行35文字までがよい。

②長文は35~60文字までにしましょう。

③行間はなんでもよいです。

 ただし日本語は縦書きから始まった文化です。

 適度な間隔で1~3行ほど開けるとよいとされています。

 行間詰め詰めのメールを読むと目が痛いのはこのため(筆者の実体験)。

 3~5行ほど書いたら空白1~2行を開けるのがよいのではないでしょうか。




●描写で行なうべき具体的なことはこれらがある

 「ストーリーの描写で感情を発生させつつ設定を描写すればよい」

 「蓄積した設定を利用して短い描写で感情を大きくすればよい」


●「序破急」「ストーリーの類型」「テンプレ」などは

 「過去に成功した歴史や経験則のようなもの」である

●「序破急」などを研究するなら以下のことを意識をするべし

 ①設定の描写によるユーザーの限界ストレス

 ②各ユーザー層の限界ストレスの違い

 ③ストレス減少のための感情の「発生タイミングと大きさ」の必要量

 ④各層におけるユーザーの理解しやすい描写や伏線などのレベル


●「序破急」を簡単に説明すると

 「一つのシナリオを三つのシナリオにわける。ユーザーの理解促進のため、

  それぞれのシナリオに役割を持たせる描写方法である」


●「序」は「短いストーリーを繰り返してユーザーを楽しませつつ、

 少しずつキャラクターや世界観の設定を説明する段階」

●「破」は「終盤のストーリーのために設定の描写を最大限に行なえる段階」

 である。

●「急」は「もっともストレスなくシナリオを楽しめる段階」である。


●『描写構成』の作業でやらないといけないことは以下のこと。

 ①シナリオとストーリーの描写を決定する

 ②キャラクターと世界観の設定の描写を決定する

 ③『ストーリー構成』で作ったシナリオを全て理解できる構成を作る

 ④想定した感情が発生している構成である

 ⑤納得のできる構成である(企画書に沿っている)

●完成した「描写構成」は以下のことなどを確認できるように

 なっていることが理想である。

 ①どこで感情が発生しているか

 ②どこでユーザーはストレスを感じるか

 ③感情とストレスのバランスは適切か

 ④「描写構成」を「ストーリー構成」「キャラクター設定」「世界観設定」

 と比べた際、矛盾や破綻がないことを確認できるか。

 ⑤描写の表現はユーザー層にふさわしいか

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