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魔法使いと皇の剣  作者: 123
2章 戦乱の序曲
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盗賊の狙い

「…わかった。話す」


 小さな声で呟いたアイシャの言葉に、部屋の空気が変わった。アイシャは一瞬、言葉を飲み込んだが覚悟を決めたのか、ゆっくりと口を開いた。


「私たちの目的は…竜族の貴方を殺すこと」


 アイリーンは驚いた表情浮かべ直ぐ様鋭い声で問いただした。


「アタシ!? 何でよ!」


 アイシャは顔を背け、言葉を濁すように呟いた。


「私はただ命令に従っただけ…けど、依頼は直接ボスにいったもの」


「何故アイリーン⋯竜族が狙いだったのかは分からないのか?」


 ジンの低い声に、アイシャは思わず身を縮めた。


「分からない…ただ⋯」


 ジンはその動揺を逃さなかった。


「ただ⋯?何だ?話してくれ、アイシャ。」


 彼女は震える声で続けた。


「ここ最近になって命令が過激な物になっていった、私達はたしかに何でもやる⋯だけども国で暮らす以上は目につかないよう行動するが鉄則だった。其れこそ暗殺だってクソみたいな連中だけが相手だった」


 ミエラが優しく問いかける。


「もしかして貴方達に依頼を持ちかけたのは⋯“真の王”?」


アイシャは驚いた顔でミエラをみて、深く息をつき、力なく答えた。


「知ってるんだ…そうだよ。あいつの依頼が入るようになっておかしくなってきた。それにあいつの仲間も我が物顔で私達に指示してくるしね」


アイリーンは話しを聞きながらも


「結局、アタシが狙われた理由は分からないじゃない!」


アイシャは疲れたような表情で笑い首を縦に振った。


「うるさいからじゃない?」


ジンがアイリーンをとめてる間にミエラは落ち着いた声で続けた。


「アイシャ、貴方達の一番偉い人に会えない?」


アイシャはミエラの静かな声に少し緊張を和らげたようだったが、それでも警戒心を完全には捨てきれない様子で、言葉を選びながら話し始めた。


「ボスに⋯?冗談でしょ、私一人で行くならまだしもあんた達を連れてのこのこアジトに戻れるわけないじゃない。それに先に戻った奴の報告でもうアジトの場所は変えてるよ」


ジンはアイリーンを落かせながらアイシャに向かい。


「アジトを変えたら、後で合流する人間達も困るだろう?なら場所は分からなくても君達には新しいアジトの場所がわかるような伝達方法があるはずだ」


アイリーンは拳を握り締めながらジンの向こう側からアイシャに投げかけた


「そうよ!アンタが分からないなら、アンタ達のボスに直接聞いてやる!それでも分からないなら“真の王”だか何だか知らないけどとっちめてやるから」


アイシャはその言葉に少し考え込み、ポツリと答えた。


「伝達方法はある、簡単だけど難しい」


「簡単だけど難しい?」


ジンが眉をひそめた。


「うん、街にいる仲間に聞けばいい。それだけ。だけども町で表立って行動出来るのは信頼されてる奴だっけ。何があっても口を割らない⋯腕と頭が回る奴だけ」


ミエラはアイシャの言葉を慎重に受け止め、深く考え込んだ。


「町にいる仲間に聞けばいい⋯アイシャ。貴方は町にいる仲間が何処にいるのか、誰なのかは分かるの?」


アイシャは小さく頷いた。


「何処にいるのかは分からない。けど誰なのかは見ればわかる」


ジンは考え深げに口を開いた。


「アイシャ。君がここ迄俺達に話してくれた事を考えたら、最期まで協力してくれるって事かな?」


アイシャは少し躊躇しながらも答えた。


「うん、私は梟の夜会に⋯ボスに拾われた。感謝はしてるけど今の夜会は好きじゃない。どちらにしろ騎士団が私達をこれから探すなら早く逃げるよう言わないとだし」


ジンは頷き、静かに考え


「因みにロスティンって男は仲間なのか?黒髪と荒れた髭が目立つ、中年くらいの」


アイシャは名前を聞いて驚いていた


「ロスティンを知ってるの?」


ジンはアイシャの反応を観察し、慎重にうなずいた。


「知っているというより、前に向こうから人探しの依頼を受けないかと言われてね」


アイシャはため息をついて答えた。


「そう⋯。ロスティンは私たちの中でも高い地位にいるし、情報網も広い。アジトの場所を知ってるはずでも⋯」


ミエラはアイシャの様子に興味深そう


「でも?」



「ロスティンからアジトの場所を聞けるとは思えない。もし私達の後始末を頼まれるならそれこそ⋯ロスティンだろうから」


ジンは一瞬考え込み、目を細めた。


「まぁ何にせよ。早く国を出るか、狙う目的を解決するか⋯二つだ、問題が広がりそうならアイリーンには悪いが狙う理由が分からずとも国から出てしまえばいい。追ってくるならその時に考えよう」


アイシャはそんな様子をみて


「だったら私の協力はもういらないでしょ、解放して」


ジンは微かに笑いながら答えた。


「君を解放したらそれこそ駄目だろう⋯他の仲間に接触するんだろう?それに君自身危ないだろう」


アイリーンが不満げに口を挟む。


「何かモヤモヤするわね⋯大体国に来たばかりで何でアタシが狙われないと⋯」


アイリーンから続く言葉は外から聞こえる声や鎧の音にかき消された。


「騎士団が騒ぎで来たみたいだ」


ジンは窓辺に立ち、外の様子を慎重に窺った。鎧の音と隊列を整える騎士団の声が徐々に近づいてくる。宿の外には既に数人の騎士が立ち並び、指揮官らしき人物が指示を出している。


「どうするの?このままここでなりゆきに任せる?」


アイリーンが険しい顔でジンに問いかけた。


「いや、どうだろう⋯この国の対応が分からないけど

、仕方ない防衛の為だったけど俺は長時間拘束されそうだな」


ジンは冷静に答え、素早く部屋を見渡して状況を整理した。


ミエラは落ち着いた声で提案する。


「騎士団がここに来たのなら、逆に利用できるかもしれない。アイシャが協力してくれるなら、彼女が危険にさらされないように一時的に保護を頼むのも。」


「待て、約束が違う!」

アイシャはすぐに反対した。


「騎士団に捕まれば、情報を持たない私は直ぐに殺される、そんなのごめん」


アイシャの言葉にミエラは不思議そうに


「いきなり処刑されるの⋯?狙いは外の国から来たアイリーンだったとしても」


「…ふん、あんた達はこの国の生まれじゃないから知らないんだよ、今の王子⋯王が何をしてるか⋯。あたし達の命なんて神を殺す為の道具にしか思ってない」


ジンは厳しい目でアイシャを見据えた。


「道具⋯?」


ジンはアイシャに言葉の真相を聞こうとしたが、外の騎士団の声が近づき、宿の扉を叩く音が響く中、指揮官の声が中にいる者たちに応答を求めている。


「ここに留まっていれば騎士団に見つかるのは時間の問題だな、アイシャ一人逃がす訳にはいかない。俺は騎士団に上手く上での事を伝えるからミエラとアイリーンはアイシャと共に」


ジンは素早く決断を下し、窓の外を指差した。

「裏手から抜けられる。アイシャ逃げないでくれよ?」


「…分かった。」

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