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魔法使いと皇の剣  作者: 123
2章 戦乱の序曲
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盗賊ギルド

 襲撃から夜が明け、冷たい朝の空気が一行を包み込む中、ジンたちは捕らえた襲撃者二人を馬車に乗せてオーデント国に向けて馬を走らせていた。


 リーダーの男は相変わらず頑なに口を閉ざし、険しい表情を崩さないが、もう一人の襲撃者は、バスバの冷静かつ的確な脅しに屈し、徐々に口を割り始めた。


「話すんだ。今ここで正直に話さなければ、次の瞬間どうなるか分かっているな。」



バスバは冷徹な目で男を見据えながら低い声で脅す。その威圧感に負け、男の顔が青ざめていく。


 ジンはそのやり取りを、バスバの馬にまたがったまま馬車の横につけてじっと耳を澄ませて聞いていた。



 バスバの声には、脅しというよりも確信に満ちた冷酷さがあった。男は一瞬ためらったものの、バスバの眼差しを正面から受け止めると、たまらず視線をそらした。


「…わかった、話す! だが、命だけは助けてくれ…!」


 男は震える声でそう言うと、リーダーの男と目線を合わせないように話し始めた。


 その間リーダーの男は睨みつける標的を自身の仲間に変えて冷徹な目を向けていた。


 ジンは、バスバの隣に馬を寄せ、話の一言一句を逃さないように耳を傾けていた。


 バスバは冷たい口調で襲撃者に


「…目的はなんだ? 襲撃の背後にいるのは誰だ?」


 襲撃者の震える声が、馬車の揺れに合わせて低く響いた。


「俺は、オーデント国の盗賊ギルド【梟の夜会】に所属してる。ピリ厶だ⋯雇い主は“真の王”を名乗る男だった。」


 バスバの眉が一瞬だけ動いた


「真の王だと?詳細を話せ。」


 男は視線をそらしながら続けた。


「奴は、ケイオス様の統治に反発している者たちのリーダー格だと名乗ったらしい⋯詳しい事も分からねぇんだ!直接依頼を受けたのはボスだ!俺たちはただ、七騎士の一人であるお前が国から離れて、ある村の調査に少数でいったから狙うよう命じられただけだ!」


 ジンは隣でその話を聞きながら、冷静に質問を投げかけた。


「その“真の王”とやら、顔や特徴は誰か知っているのか?あるいは何か特別な目印、例えば紋章や身につけている物など、何か聞いていないか?」


 ジンの質問に、男は首を振りながら言った。


「いや、直接会った奴なんてほとんどいない。ただ……奴の使いとして来るのはいつも黒いフードを被った連中だ。彼らが『真の王』の言葉を伝える。紋章や目印なんて見たこともねえ。あいつらがいる場所が、どこなのかすら分からないんだ。」


バスバは男の言葉に眉をひそめた。


「使いの者……組織的に動いているということか。それに“真の王”を名乗る者がいるとなると、この反乱者たちは単なる盗賊団ではないな。背景にもっと大きな力がある可能性が高い。」


 ジンはさらに問い詰めるように言葉を続けた


「お前たちのギルド、“梟の夜会”にはどれくらいの規模がある?盗賊ギルドと言いながら、ただの盗賊以上に組織的に動いているように思えるが。」


男はうつむきながら答えた。


「“梟の夜会”はただの盗賊ギルドじゃない。情報収集や暗殺、妨害工作なんかも引き受けてる。規模はわからねえが、この大陸中に俺たちの仲間が散らばってるって聞いたことがある。俺たちは、その一部だ。」


 ミエラは盗賊ピリムに


「でも、盗賊ギルドがこれほどまでに組織的に動いているのって、何か理由があるんでは…?」


 ミエラの疑問を後押しするようアイリーンも


「結局、そういう連中って、どこかから資金や物資を引っ張ってくるんでしょ?そういう手がかりも持ってないの?」


 その言葉に、男はしばらく沈黙した後、小さな声で言った。


「本当に知らねぇんだ、俺が盗賊ギルドに入ったのはつい最近だから。だけど大量の物資を受け取ったって噂は聞いた。どこから来たのかは知らねえが、奴らが言うには『神の意志に基づく支援』だとか」


 その言葉に一行は一瞬黙り込んだ。神の意志――その言葉が持つ意味の重さが、彼らの胸に響く。


ジンが慎重に言葉を選びながら問いかけた。


「神の意志……それがどの神のことなのかは、わからないのか?」


男は首を横に振った。


「そこまではわからねえ。ただ俺たちに渡された物資の中には、妙な文様が刻まれた箱があった。何かの儀式に使うようなそういうものだった気がする。」


バスバはその情報に思案するような表情を浮かべた。


「文様か。それを見れば、どの神が関わっているのか見当がつくかもしれん。だが、ここで得られる情報は限られている」


ジンは刀の柄を軽く叩きながら言った。


「今わかっているのは、『真の王』と名乗る者が何かでオーデント国を揺るがそうとしていること。そして、その背景には神の存在が絡んでいる可能性が高いということですね。」


バスバは静かに頷き、ピリ厶に対して冷たい目で言い放った


「お前達の処遇は国に帰ってきめる」


バスバの言葉にピリ厶は慌てたように


「分かる範囲の事は話した!俺をこのまま解放してくれ⋯!俺は盗賊ギルドの掟に反して情報をあんたらに渡したんだ⋯このまま帰れば刑を待つ前に殺される⋯頼む⋯。」


懇願するピリ厶にバスバは冷たく


「お前が話せば見逃す約束等はした覚えはない。どちらにしろ貴様らの行為は反逆罪だ。盗賊ギルドにかかるか、我らから首を落とされるかの違いでしかない」



 ピリ厶の顔が青ざめ、目には絶望の色が浮かんだ。しかし、バスバの言葉に反論する気力もなく、ただ俯くだけだった。その場の空気は一層冷たく、誰も声を発しなかった。


 そんな中、ミエラがその静寂を破るように、小さな声でバスバに問いかけた。


「この人たちは、本当にもう助ける道はないのでしょうか?たとえ盗賊ギルドの一員でも、彼のように情報を話してくれた人を、ただ処罰するだけでは⋯」


 バスバはミエラの言葉に一瞬だけ考える素振りを見せたが、その目は冷たいままだった。


「ミエラ、反乱に加担した者を見逃すわけにはいかない。それは秩序を守る者として当然の義務だ。彼がどのような理由で盗賊ギルドに加わったのか、私には関係がない。行動には責任が伴う。それがオーデントの掟だ。」


 ジンはミエラがバズバの返答に何と返すか興味があった。


「彼が話した情報が有益であることは確かです。それをもってしても、減刑や他の道を模索する余地はないのですか?」


 バスバはミエラの質問に静かに首を振った。


「それを決めるのは私ではない。彼の処遇はオーデントの裁定に委ねられる。私がここで情けをかければ、秩序そのものが揺らぐ危険がある。」


 アイリーンが軽い調子で肩をすくめながら口を挟んだ。


「まあ、そういう堅物なとこが騎士らしいっちゃらしいけどね!でも、情報を話してくれたことには感謝するべきじゃない?」


「感謝はしている。だが、それと掟を曲げることは別の話だ。お前たちが外から来た者だからこそ分かってほしい。この大陸では、秩序を維持することがいかに困難かを。」


 ミエラはその言葉に返答せず、ただ俯いて考え込んでいた。ジンはそんなミエラを気遣いながらも、バスバの決意に反論することはなかった。


 沈黙の中、ピリ厶は無力感溢れる声でミエラに語りかけた


「いいんだ。俺のが間違ってる⋯ありがとな」


 そのピリ厶の反応にミエラは驚いたように


「何故、盗賊ギルドに入られたんですか⋯?話の中ではつい最近に入ったって事ですが⋯」


 ミエラに疑問に答えるようピリ厶は


「俺は元々貴族様の私兵で雇われていたんだ。そんな時に雇い主様がベイルガルドと繋がってる罪で死刑になって。その奥方や息子さんまで原因不明の病で命を落として食いぶちに困ってな⋯」


 ピリ厶は静かに言葉を続けた。


「俺も他の私兵たちも路頭に迷ったんだ。貴族に仕えてた身だから、次の仕事を探すのも一苦労だった。そんな時に声をかけてきたのが『梟の夜会』だったんだよ。」


 彼の声には、自嘲と後悔が入り混じっていた。


「だけども、この仕事を選んだのは俺だ勝手に国や騎士を恨んでな⋯」


 そう言うとピリ厶は静かに俯き静かになった。

 ジンはそんなピリ厶とミエラのやり取りを見ながら、ただ一人冷たい目を変えない、襲撃者のリーダーをみていた。


(仲間がべらべらと喋ったわりには、最初以外、反応がないな⋯、大した情報でもなかったのか?)


 ジンは目線をバズバに移すと、バズバは静かに頷き、同じ考えをしていた事に気づいた。ジンはバスバの頷きを確認すると馬をバスバの近くによせた


近寄ってきたジンにバスバは


「聞いても話さんだろ、それでいい。こいつを捕まえたとオーデントに戻った際に広めれば動きがみられる筈だ。それに見ろ。」


 ジンはバスバに言われ前方をみて、思わず声をあげた。見るとミエラやアイリーンも同じだった

そんな様子にバスバが誇らし気に



「我らがオーデント国だ」

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