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始まり編 第2話 幕開けの日

ベッドの上に寝っ転がり、ネックレスを見つめる祈。一年前のあの日を思い出していた。


一年前


(学校……………つまんないな…………)

(次は…………………………理科か……………)


一人で席に座りながらそんなことを考えている祈。周りが理科室への移動をしはじめた。祈も立ち上がる。だが向かうのは理科室ではない。屋上だ。


(……………早く学校終わんないかな……………)

「…………………………」

(これがあと、5年も続くのか……………)


ガチャ。扉の開く音がした。


「……………何しに来たの?」


祈がやってきた男の子に問う。


「……………………いや…………俺はちょっと授業をサボりに来ただけだよ。」


笑ってるけど心では笑っていないような表情で言う。


「……………………………………………………」


祈は何も言わずに睨む。


「まぁまぁ、そんなに睨まないでよ。1年A組の草薙祈ちゃん」

「なんで名前知ってるの?」


祈が男の子に問う。


「なんでって、おんなじクラスだからに決まっているじゃないか。」

「同じクラスだからって全員の名前わざわざ覚える?」

「あぁ。覚えるよ。少なくとも俺はね。」

「………………………変なの………いや……………変なのはお互い様かもね……………」


笑う男の子と睨むのをやめた祈。


「ちなみに祈ちゃんは俺の名前知ってるの?」

「さぁ?私はクラスの人とかどうでもいいし。」


少しびっくりした表情を見せたがまたすぐに男の子は笑った。


「そっか……………。俺の名前は火神琉だよ。ま、これからよろしく。」

「よろしくって……………関わるつもりはないけど………………………」


祈が琉から目をそらしてまた口を開く。


「…………………………まぁ、暇にはこれでならないか……………」


それから数日間、二人は屋上でだけ色々な話をした。



祈の部屋


(明日は琉になんの話をしよう)

「っ……………」


ネックレスを見つめる祈。口角も眉毛も少し下がっている。その時。


「!?」


いきなり何かが光り始めた。眩しくて目も開けられず、目を祈は瞑った。次祈が目を開けるとそこには知らない場所が広がっていた。


「ここ……………は…?」

「…………………………水?」


晴れており、虹が架かっているが小雨が降っており、足首ぐらいまで浸かる水がどこでも流れている。


「………………………………………何もない。でも、すっごく綺麗な場所。」


その時バシャバシャと足音が聞こえる。後ろを祈が振り返ると琉がいた。


「祈」

「琉……………」

「ここ、どこだろう?祈は知っている場所?」

「ううん。私も初めて来た。」


その時奥の方から誰かの喋り声が聞こえる。


「ちょっと直人!なんとかしてよ!」

「はぁ?オレだって初めて来た場所だって言ってるよな?」


祈と琉は二人の方を見る。


「あれ……………」


琉が喋る。


「直人か?」


琉のその声に気づいたのか、二人は祈と琉を見て、こちらに走って来た。


「琉!良かったぁ〜!お前がいるとなんか安心するよ。ん?その人は?」


直人が祈の方を見て聞いた。


「あぁ、祈、こいつは俺の部活仲間。直人だ。」


琉が答える。それを聞いた直人は笑顔で口を開けた。


「俺は暁学園中等部1年D組。玄武直人!そんでこいつが………」


直人が一緒にいた女の子の方を見た。そして察した女の子は祈と琉の方を向き


「直人の幼馴染、1年C組青龍院里恵です。」


二人の自己紹介を聞いた琉が里恵に向かって


「俺は1年A組、火神琉。よろしく。」

「えっと……………同じくA組草薙祈。よろしく?」


直人が笑顔を見せる。


「それで二人はこの場所、何なのか知っているのか?」

「いや……………部屋にいたらいきなり何かが光って……………」


祈が答える。琉と里恵も頷く。その時


「この場所は聖域です。」

「だ、だれ?」


里恵が言う。姿を表したのは真っ白なドレスを来た女の子、髪も肌も白く裸足。そして何より浮いている。


「わたくしの名は天輝てんき、この聖域を守るべき定めをもって生まれた神ですの。」

「か、神……?」


直人は信じられない。


「信じられなくても無理はありませんよね。ご安心してください。しっかり一つ一つ丁寧に説明をするので。」

「まず先程行った通りこの場所は聖域。〝神の聖域〟です。そしてわたくしはこの場所を守る神。ここまでいいですか?」

「聖域とは具体的になんだ。」


琉が尋ねる。


「簡単に言えば此岸でも彼岸でもない場所です。現実の世界ではない世界。聖域ここは不思議な場所なんですよ。時間軸はいろんな聖域や現実世界で異なりますし、様々な人種が住んでおり、そして…………………………聖域ここで死んだら貴方達は現実世界でも死にます。」

「なるほど」


琉が言う。


「そして、聖域はたくさんの数がある。どの聖域にもわたくしのような管理人がいますわ。」

「聖域に出入りできる条件は?」


今度は里恵が尋ねる。


「それは聖域によって違います。自分たちの意思で入れる聖域や管理人が招待や追放をしないと出入りできないような聖域も。今回の場合はわたくしがお呼びしました。」

「なるほど。聖域についてはだいたい分かった。じゃあ、もう一つ。貴方が私達をここに連れてきた理由は?」


里恵が問う。


「貴方がたは神に選ばれたのです。」

「は?神?」


直人が言う。


「えぇ、現実世界には能力者がいるですよ。実は今、聖域が何者かによって支配されている。そしてそいつ等は管理人を操り殺人を犯している。能力者は管理人を助ける者たち。わたくしはその管理人を操っている奴らを〝殺人ギルド〟ど名付けました。殺人ギルドを倒してほしい。貴方がたは選ばれし者なのです。」

「…………………………殺人…………」

「……………ギル……ド…」


里恵と琉が言う。直人もつばを飲み込む。祈は天輝に向かって聞く。


「一応聞くけど、拒否権は?」

「ふふっ。貴方がた、少なくとも貴方はもう感づいてるでしょ?祈。」


天輝が微笑みながら言う。


『………………………………………』


4人は黙って天輝を見る。天輝は少しあきれた顔をしながら口を開く。


「貴方がたは、まるでわたくしが選んで、呼んだと思っているでしょうけど違いますからね?神とわたくしはまた別人です。」

『………………………………………』

「まぁ、そんなにすぐに決断できるとも思っていませんでしたけどね。仕方のないものなんですよ?これは、“運命”ってやつです。運命を変えられるのは神ぐらいでしょうね。」

『………………………………………』

「さっきからだんまりばっかり…わたくしだってそりゃあ命の保証くらいはしてあげたいですよ?でもわたくしにそんなことはできないのですよ。」

「はぁ~。さっきも言ってたけど拒否権ないんだもんね、だったら数少ない能力者に選ばれたって、名誉に思ったほうが得かもね。」


祈が口を開く。天輝は少し驚きながら口を開く。


「祈……………」

「やるよ……………能力者。てか、この答えしか残ってないしね、」


全員が祈に注目する。琉をはじめとして次々と口を開く。


「それもそうだなぁ~」

「死ぬかもしれないってすっごく怖いけど…………………………」

「能力者ってなんかかっけぇし!」


天輝は驚いたあと優しく微笑み話しかける。


「ありがとう。すごく嬉しいです。」


4人の周りが光りだした。


「これ、は……………」


それぞれ違うものが光りから出てきた。

祈はつるぎが、琉は銃が、里恵はマントが、直人はナイフが出てきた。服装も軍服のようなものに変わっている。


「一人ずつ説明いたしますね。まずギルド能力から、左手人差し指を、空中ではじいてください。そうするとメニュー欄が開けます。こちらは現世でも聖域内でも使える能力で、管理人が許可している聖域を押せばその場所にとべます。現世に帰りのたいときもこの能力を使います。しかしこの能力は管理人が許可している聖域でしか使えないのでご注意を。次に聖域内でしか使えない能力。みなさん先ほどと服装が違いますよね。それは聖域内での衣装です。それを着ているときは普段の身体よりも頑丈になります。聖域内ではあなたたちのギルド能力として、運動神経が向上します。


それじゃあ、一人ずつの能力について解説いたしましょうか。まずは祈。あなたの能力はつるぎよ。そのつるぎはダイヤのつるぎ選ばれていないものには、触ることすら許されない。あなたは相当な原石ね。

次に琉。あなたは……銃ね。その球は特殊でね、普通に貫通してしまうときと同じくらいの痛さは感じるけど、人は殺せない銃。あなたの能力は殺人ギルドに対してもだけど、操られている管理人にも使いやすい能力ね。

次に里恵。そのマントは有能よ。被れば透明にだってなれるし、敵の攻撃も跳ね返すことができる。みんなを守ることもできるし、反撃にだって使えるわ。

最後に直人。そのナイフは一気に10本投げれる。途中で起動を変えたり10本を何連続でも投げれる。」

「やっぱり、怖いな、」


里恵が、言う。天輝が優しく話しかける。


「大丈夫よ。きっとあなた達なら管理人を、聖域を、世界を救える。何かあったらわたくしが相談にのってあげます。まあこの神の聖域には貴方達の方から入ることはできないんですけどね。それじゃ、また機会があったら」

4人の周りが光りだした。


現在


祈の部屋


「……………」


(あれから、色々な聖域を、管理人を助けてきた。でも私達は、まだ……………殺人ギルドを、一人も倒せてない……………)


祈はネックレスから視線を天井にむけ、両手を伸ばす。


(この力、この命賭けた戦いはいつまで続くんだろ……)

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