始まり編 第1話 能力者
この世の中に不可能なんてないのではないか、根拠もないそんなバカなことを大学生になってまで考え続けているのはこの私、草薙祈だ。
――超能力――。それはフィクションであり現実には存在しないもの。多くの人間がそう思っているだろう。
だがこの世界の人間の中には能力者という超能力を扱う人間がいる。それは学生だったり、会社員だったり、お年寄りだったり、どんな人間でもなれる。〝この世界〟と、さっき言ってしまったがそれは少し誤りだったかもしれない。確かに能力を扱うのはこの〝地球の人間〟だ。だが能力を使う場所は〝地球〟ではない。じゃあどこかって?
それは〝聖域〟とよばれる世界だ。
肘をつきながら窓の外を見る女の子。今は帰りのHR中。先生は生徒たちに向かって何かを語っているがその女の子は目も耳も向けない。その女の子の名は草薙祈。ここ中高一貫私立暁学園という日本でも有名な学校に通う中学2年生だ。チャイムがなり、先生が日直に号令をお願いする。日直は小走りで教卓の前へと行き、号令をする。まわりがゾロゾロと立ち上がり始め、まわりの音に合わせて祈も立ち上がる。
『さよなら〜』
多くのクラスメートがそう言い放ったあと、仲の良いクラスメートのところに行ったり、ロッカーに荷物を取りに行ったりとしている中祈は再び椅子に座る。目を瞑り考え事をしていた時、
「祈ちゃん!」
とある女の子が祈に後ろから抱きつく。学級委員の青龍院里恵だ。祈は振り返り口を開く。
「急に抱きついてこないで。びっくりするでしょ?」
「祈ちゃん。今日あなたはなんと__」
「ちょっと聞いてる!?」
祈は里恵が離し終わる前に聞く。笑顔だった里恵が少しムッとして答える。
「聞いてるよ〜!…………ていうかそんなことより!祈ちゃん今日は授業を一時間もサボらなかったんだよ!」
「え?何?サボる?」
「うん。自覚なかったの?」
祈が首をかしげながら里恵に聞き、里恵も首をかしげながら祈に返す。祈は斜め上を向き、少し考えるがすぐに考えるのをやめ口を開く。
「そんなどうでもいいこといちいち確認してなくていいでしょ!?」
「そーゆうわけには行かないよ。だって私学級委員だし。」
「……………」
祈は納得できないような表情で里恵を見つめる。里恵は微笑みながら祈を見る。
「祈」
『っ………………!』
後ろから呼ばれ、祈と里恵は振り返る。手を小さく振りながら2人の近くに歩いてきた男の子。名は火神琉。サッカー部で成績優秀。おまけに顔もよく誰にでも優しい言わばモテない理由が見当たらない男の子だ。
「琉…………」
祈が言うと琉はニコッと微笑み口を開く。
「なんの話をしてたの?」
「今日、祈ちゃんが優秀だったっていう話。」
里恵がニコニコしながら琉に向かって話す。琉も優しい声で里恵に対して質問する。
「優秀?祈って普段勉強しないのにいつもテストで平均点以上とってるよね?いつも優秀じゃない?」
「ほんと〜に!勉強してなくてなんでそんなにいい点数がとれるの?うらやましい…!」
「うんうん。」
「なんで2人して私のテストの点知ってるの!?」
琉と里恵が一緒に「いいなぁ〜」と言い合っている時、祈は少し怒りながら言う。琉と里恵は同時に祈の方を見て、同時に口を開く。
『 祈
のテスト覗き見したから?
祈ちゃん 』
「こいつらやべぇ!」
祈は不満そうに、琉と里恵は微笑みながら見つめ合っていた時、
「オレだけはぶいてて楽しい?」
「直人…!」
ニヤニヤしながら話しかけてきた男の子の名は玄武直人。琉と同じくサッカー部で里恵の幼馴染である。琉が直人に向かって口を開く。
「別にはぶいたつもりはないよ?」
「わぁってるって、そんなこと」
「ていうか直人も祈ちゃんを見習ったらどうなの!?今日も五限目居眠りしてたでしょ!?」
「別にいいだろ!!」
「よくないわよ!アンタの場合、勉強しなかったらテスト赤点だし余計にダメ!」
「お前はたかが学校のことでギャーギャー言い過ぎなんだよ!」
「アンタがしっかりしないのが悪いんでしょ!?」
「ちょ、ちょっと二人とも〜」
「…………………………」
里恵と直人が言い合いをするのをなだめる琉と何も言わずに見ている祈。直人が祈の後ろにまわり、祈の肩に手を置く。
「……っ……………」
「なんでお前はいつもいつもオレにばっか言うんだよ!」
「何度も言わせないでよ!アンタができてないからでしょ!?」
里恵と直人が睨み合う。二人が同時に顔をそらし口を開く。
「もう知らないんだからね!」
「オレになんかあっても、テメェには関係ねぇだろ!」
「もぉ~……二人とも……………」
祈が3人を見たあと、チラッと時計を見て口を開く。
「帰ろっか……………」
帰り道
4人は琉と直人が前で、祈と里恵が後ろに並んで帰る。
「いい加減仲直りしなよ。」
『うるさい……』
学寮の前へとつき、祈は里恵を引っ張りながら二人に手を振る。祈と里恵は学寮に入っており、琉と直人は実家から通っている。祈が手を振りながら口を開く。
「また夜。」
「うん。また!」
そう琉と話し、祈達は寮へと入っていった。
里恵は祈に向かって口を開く。
「もう本当にムカつく!なんなの!?」
「あっはは……………まぁ、昔馴染みとかだったらそうゆうことは多いかもね~」
「祈ちゃんはないの!?」
「……!」
「…………………………」
里恵は祈に詰めより見つめる。祈は目をそらして少し悲しそうな表情を見せて口を開く。
「私は……まぁ、まず昔馴染みがいないからさ!あっはは〜…………………………」
「……………ふ~ん。」
祈が自分の部屋のある階につき、里恵に手を振る。
「それじゃ。また後でね。」
「うん。またね〜!」
祈の部屋
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能力なんてあったって仕方のないもの。私、草薙祈はいつもそう思っている。部屋着に着替え、かカバンの中に入れてたスマホを取り出し電源を付ける。そこには普段来るとこなどほとんどないメールの通知が届いていた。
「叶那ちゃん?」
春夏冬叶那。私の1個下で同じ委員会に入っているいい子。
[祈先輩!相談があるんですけどいいですか?]
届いていたメールを読み私は返信する。
[いいけど、私にできることなんてそんなないと思うよ。]
送信ボタンを押し、電源を切ろうとした時、また別のメールが届いた。
「叶那ちゃん返信早っ……………」
私は思わず声にもらす。届いたメールにまた目を通す。
[ありがとうございます!]
送られてきたのはこの文面だけで相談の内容は送られてこなかった。すごく長い文でも打っているのだろうか。そんなことを考えた私はスマホを机の上に置き、カバンの片付けをすました。メッセージのやり取りのことが頭ら抜けかけていた時にブッとスマホが鳴った。
[ごめんなさい。やっぱり大丈夫です。長い時間待たせてしまってごめんなさい。]
このメッセージが送ららてきた時私は何を感じたのか正直自分でもよく分からない。だが何か悪い予感、とまではいかないがそれに近いものを感じ取ったのは確かだと思う。
[そっか。時間は全然大丈夫。]
このメッセージだけじゃなんかな、と思った私は何かを付け加えようと思った。体感1分半程度、私はスマホのキーボードを打ち始める。[何かまた話したいこととかできたら連絡して。それじゃあまた委員会で。]というメッセージを追加して送信した。するとすぐに[ありがとう!]というスタンプが送られてくる。私はそのスタンプをみたあとスマホの電源を切り、布団に向けてスマホを軽く投げ、ベッドに横になる。天井を見上げ、ゆっくりと目を閉じる。
私は恵まれている。友達にも、先生にも、家族…にも……。能力者という選ばれし人でもある。勉強もできるし運動もできる。家事もそこそこできる。本当、恵まれてるな。
「よし……………」
軽くつぶやくと同時に目を開ける。目線を動かし時計が視界に入ったのと同時に私は慌てて起き上がる。やば、約束の時間。私は左人さし指を空中ではじく。半透明のウィンドウのようなものがいつも通りでてくる。“火山の聖域”。そこをタップする。私の周りには光が出始める。眩しくて自然と私が目を瞑り、再び目を開けた時には…………………………火山の聖域にいる。
火山の聖域
「あ!祈ちゃんやっときた〜!」
琉と里恵がこちらを見て微笑んでる。まわりを見渡しても直人の姿はない。
「直人は?」
私は2人に聞く。
「直人?さぁ?見てないけど…アイツも遅刻じゃない?」
里恵がそう答え、私は少し驚く。里恵、さっきまで喧嘩してたのに…。何かあったのだろうか?おそらく琉も同じ事を思っただろう。でも変に聞いてまた怒られたら困るから私達は何も聞かない。そんな事を考えているうちに直人がやってきた。
「わりぃ遅れた!」
「もう…十分遅刻よ?次から気をつけてよね!」
「わりぃ、わりぃ」
2人はまるで喧嘩などしていなかったかのように話をする。驚いたがなぜかは誰も聞かない理由はまぁさっき言ったとおりだ。
「じゃあ、行こう」
私がそういうと他の3人は頷き、一緒に歩き始める。今日は火山の聖域で暴れているドラゴンを退治してほしいとお願いされて私達はきた。私はギュッと剣を握りドラゴンのいる洞窟まで走り始めた。
洞窟
「グォアアアァァ!!!!」
ドラゴンの叫ぶ声が洞窟内で反響する。うるさいなぁ、私はそう思い剣をもって高く飛び跳ねる。ドラゴンの首元に向かって私は剣を突き刺す。
「ギャァォァァァァ!!!!」
またドラゴンが叫ぶ。
しばらくしてドラゴンは鳴き止み、目を閉じていた。
私はドラゴンから剣を抜き、ついた血をはらう。
「さっすが祈ちゃん!一発!」
「ちょっと無茶しすぎなんじゃない?大丈夫?」
「オレも負けてらんないな!」
里恵も、琉も、直人も、私を褒めて、心配してくれる。それは私にとってとても嬉しいことだ。しかしそれは同時にとても怖いものでもある。誰かと関わることなんて辛くなるものだと私は分かっているのに彼らは私に関わってくる。そしてそれを私は受け入れ私からも関わりにいってしまう。人間、根っこはそう簡単に変わらないってことか。
能力なんてものがなければ私達は関わることなどなかった。彼らと知り合うことができたのは能力のおかげだ。だが能力者であることが100としていいことであるとは正直言えない。だって能力者は___。でも私達は戦うことをやめることはできない。命をかけて戦う、それが私達〝能力者〟という者の使命なのだから……………




