こちらよくお似合いですよ!
赤星美奈はごく普通のジュエリーショップ店員である。毎日ショーケースを磨き上げ、毎日お客様のリングサイズを確認する、齢33のジュエリーショップ店員である。今日も今日とて、ピアスの試着をご希望のお客様にお断りをした後、行きつけのコンビニでカリカリ梅と消しゴムを買って家路についていた―――のだが。
キュ―――キキ―――ッ!ギギキギュイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。赤星美奈の魂と、女神が対面している。
「赤星美奈さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
赤星美奈(33)
レベル24
称号:転生者
保有スキル:こちらよくお似合いですよ!
HP:17
MP:10
「というわけで、いきなり草原に放り出したね?!このあたしを!!失礼でしょ!!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がジュエリーショップ店員の前に現れた!
「はあっ!?スライム?!信じられない!ばっかじゃないの!何この世界!!」
うろたえる、ジュエリーショップ店員。
「ちょっと!保有スキル試さないとだめなパターン?!こちらよくお似合いですよ!って…。こいつにアクセサリー?!」
うばほん!!!
ジュエリーショップ店員の前にショーケースが現れた!すんげぇ高そうなアクセサリーがいっぱい並んでいるぞ!!ネックレス¥120000、リング¥240000…たっか!!!
「こちらお値段相当の輝きと美しさが魅力でしてね、いかがでしょう、お客様にはちょっと手が出せない感じですか?もっとお安いもののほうがよろしいかしら。」
スライムはお高いけどいいやつが欲しいなと思って色々と物色している!バングル¥450000、時計¥2400000!!!
「あらあ、お客様にはこちら手が届きそうにありませんね、別のこちらがよろしい…よくお似合いですよ!」
ジュエリーショップ店員は¥1200のピアスを差し出した!スライムは激高した!!なんやこいつ!!わしゃ金ぐらいもっとんじゃああああああ!!!スライムはジュエリーショップ店員を丸のみした。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
ジュエリーショップ店員は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
ジュエリーショップ店員はコンビニでカリカリ梅と消しゴムを買って帰路に就いた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「ちょ!!もう少し早く通りかかってたらやばかったじゃないの!!240万の時計売るまで死ねないんだからね!!」
ジュエリーショップ店員は、丁寧な接客と丁寧な商品の扱いには定評があったものの、見た目で客を判断してしまうという致命的な弱点があったためイマイチお得意さんが増えず、ずいぶん苦戦したものの定年まで勤め上げた後宝石を買うために訪れた店で失礼な接客を受けたことに激怒し出禁を食らったことをずっと許さないまま77歳でこの世を去ったということです。




