乳牛召喚
草野忠次はごく普通の酪農家である。毎日搾乳し、毎日牛の背中を撫でる、齢48の酪農家である。今日も今日とて、ハナコの出産に立ち会った後、行きつけのコンビニでミルクキャラメルとハンドソープを買って家路についていた―――のだが。
キイ!!キギュイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。草野忠次の魂と、女神が対面している。
「草野忠次さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
草野忠次(48)
レベル30
称号:転生者
保有スキル:乳牛召喚
HP:68
MP:24
「というわけで、いきなり草原に放り出すのか…結構ひどいな。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が酪農家の前に現れた!
「おお!スライムか!!敵か?!味方か?!どっちだ!!!」
うろたえる、酪農家。
「保有スキル使ってみるか!!乳牛召喚!!おいおい、誰がくるんだ?!」
うばほん!!!
ずいぶん気は強いが搾乳機を嫌がらないホルスタイン種4歳のカナメちゃんがキター!
「おお!カナメ!!あいつと戦えそう?無理すんな!!」
カナメちゃんのげっぷアタック!スライムに5のダメージ!カナメちゃんの踏み!!スライムは踏まれて動けない!無理に足を抜くとカナメちゃんがバランスを崩して危ない!!しかしそんなことスライムは知らん!!!スライムは無理やり踏まれたところを引っ張った!カナメちゃんがバランスを崩す!
どびぐちゅああああん!!!
「ぶもぉーーーーーー!!!」
「ぎゃあああああああああああ!!!」
カナメちゃんは倒れてスライムの毒で絶命した!酪農家はカナメちゃんに潰されたスライム片が全身にかかって毒が回って絶命した。スライムは念願の牛肉が食べられて大満足だったという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
酪農家は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
酪農家はコンビニでミルクキャラメルとハンドソープを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「あとちょっと早く通りかかってたらハナコの子供に名前つけれなくなるところだったよ。」
酪農家は、毎日毎日牛さんの世話をし続けおいしい牛乳をたくさん出荷していましたが、どうにもこうにも人材不足でいよいよ廃業を考えていたときにテレビの体験酪農スペシャル企画で注目されて何とか持ちこたえ、大きくなった息子と孫と共に牛さんの世話に明け暮れた後75歳でこの世を去ったということです。




