カラオケ採点システム
石塚ひろみはごく普通のカラオケ好きである。毎日カラオケに行って、毎日次の歌ってみたはどれを歌おうか迷っている、齢25のカラオケ好きである。今日も今日とて、ヒトカラ帰りに、行きつけのコンビニでゆず蜂蜜ドリンクと化粧水を買って家路についていた―――のだが。
キキィイイ!!キイイイイイイイイ――イ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。石塚ひろみの魂と、女神が対面している。
「石塚ひろみさん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
石塚ひろみ(25)
レベル40
称号:転生者
保有スキル:カラオケ採点システム
HP:20
MP:100
「というわけで、いきなり草原に放り出されたー!ちょっと、なんなの、もー!…ハア。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がカラオケ好きの前に現れた!
「ううわぁ!スライム出て来てる!!え?これ戦うの?」
うろたえる、カラオケ好き。
「あっと!保有スキル試そう!!ええ?カラオケ採点システム?!なにそれ!!」
うばほん!!!
カラオケシステムがフルスペックで出てきたぞ!!最新の採点システム搭載機だ!!スライムは動けない!得点がダメージになる模様だぞ!!
「よーし!じゃあ十八番!!シャレレ!!!!」
テンポのいい曲が流れ始めカラオケ好きは虹色の輝きを連発させている!歌い終わって…採点は…!!
「ぎゃー!!98.89?!ありえなす!!これは100でて当然の出来だったのに!!うぎー!!!」
ずががががが!!スライムに98.89ポイントのダメージ!あと一撃でスライムは負ける!!
「どこ?!どこが減点ポイントだった?!ああ、ここのしゃくりが足りてないのか!!クッソー!!!」
スライムは最後の力を振り絞って採点画面に夢中になっているカラオケ好きを捕食した。捕食後スライムは息絶えてしまったという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
カラオケ好きは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口に立っていた。コンビニに入る前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
カラオケ好きはゆず蜂蜜ドリンクと化粧水を買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もうちょっと早く通りかかっていたらひかれてたやつじゃん!新曲歌えなくなるとこだったよ!ひゅー!」
カラオケ好きは、軒並みカラオケ店が営業中止していくのでスマホにカラオケアプリを入れて自宅で歌いまくっていたところ、自宅横を通りかかった学生に目をつけられてしまい一緒に歌を歌うようになりそのままデュオを組んで活動を始め、相当人気が出て信じられないくらいブームを巻き起こしていた頃結婚式のド定番ソングとなる曲を発表し、75歳でこの世を去った後もたくさんの人々に歌い継がれているということです。




