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アンチジャスティス -魔王戦隊ダークトリニティ-  作者: DD22


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第3部 第16話『孤独な太陽と冷たい星(後編)』

【前回のあらすじ】

バーニングレッドとユナイトレッドの激しい戦いは続く。ライガはカイに、失った大切な人レヴェリオの記憶と、自身の「正しさ」という鎧を脱ぎ捨てた過去を語る。しかしカイは揺れる心を押さえつけ、重力と光の力でライガを追い詰める。満身創痍のライガは、それでもカイを一人にしないために立ち向かうが、《反転障壁》によって自らの拳で吹き飛ばされてしまうのだった。

※本作品の執筆にはAIを活用しています。


 自分の力で、自分が吹き飛んだ。


 床を転がり、止まった。


 どこが痛いのか、もう分からなかった。


 全身が痛いから。


 スーツのエラーランプが、全て赤に変わっている。排熱ダクトの音が——消えかけていた。


 ライガは、倒れたまま天井を見上げた。


 視界の端がノイズで滲んでいる。


 思考が、靄の中を漂うように遅い。


 当然だった。


 空母での暴走——カイに強制執行され、自分の炎で自分の装甲を内側から焼いた。制御を失い、ただ破壊だけを繰り返した。あの時すでに、肉体は限界を超えていた。


 それをグリムの白炎が引き戻してくれた。


 だが——バイオカプセルには入っていない。


 魔王たちがカプセルで回復している間、ライガは暴走の余熱を引きずったまま、ただ戦場に立ち続けた。


 タワーに入ってからも休んでいない。シグマ四機との戦いで、仲間を守りながら、限界を越えた出力を何度も絞り出した。


 そして今、カイと戦っている。


 右腕の感覚は、もうほとんどない。


 左腕も、自分のものだという確信が薄れている。


 肺が一呼吸ごとに悲鳴を上げ、足の裏から地面を踏む感触が遠い。


 それでも——体が動いてきたのは。


 ただ一つの理由しかなかった。


(カイを……止めなければ)


 それだけだった。


 論理でも正義でもない。


 ただ——この男を、このまま一人にしてはいけないという、それだけの感覚。


 ライガは床に両手をついた。


 右腕が震える。左腕も、もはや感覚が怪しい。膝を立てようとすると、腰の奥から鈍い痛みが走った。


 それでも——体を起こそうとした。


「……なぜ」


 カイの声が、頭上から降ってきた。


 静かな声だった。


 怒りではなく——本当に、理解できないという声だった。


「なぜ、まだ立ち上がろうとする」


 ライガは答えなかった。


 ただ、腕に力を込めた。


「エネルギーは尽きかけている。スーツは機能限界を超えている。私の重力に抗える体力も残っていない。……論理的に考えれば、今すぐ諦めるのが最善だ」


「……お前には」


 ライガは、震える腕で体を起こしながら、掠れた声で言った。


「分からないのか」


「何が」


「諦めたら——お前が一人になるから」


 カイは、止まった。


「……何?」


「お前はずっと一人だった。レヴェリオが去ってから、ずっと。誰にも話せないまま、誰にも頼れないまま、この計画を抱えてきた」


「……関係ない話だ」


「関係ある」


 ライガは、ついに片膝をついた状態まで体を起こした。


 全身が軋む。視界がぼやける。


 肺が、一呼吸ごとに悲鳴を上げていた。


 だが——顔を上げた。


「俺が諦めたら、お前に正面からそれを言える奴がいなくなる。お前の間違いを、お前の目の前で言える奴がいなくなる」


 カイは——動けなかった。


「レヴェリオはお前の全部を肯定してくれた。でも俺は——お前の間違いを、お前の目の前で言える」


「……ッ」


「それが——仲間だろ」


 沈黙が、最上層を満たした。


 ユナイトレッドのバイザーの奥で、何かが揺れていた。


 深いところで。


 ずっと、揺れていた。


 その時——ユナイトレッドの白銀の装甲が、内側から微かに揺れた。


 まるで何かが、押し出されようとするように。


 ほんの一瞬だけ。


 誰も気づかなかった。


「……私には」


 カイの声が、かすかに——割れた。


「私には、仲間など——」


 その瞬間。


 深紅のスーツが、光を失った。


 ユナイトレッドの白いアーマーが次々と剥がれ落ちる。赤いスカーフが、床にひらりと落ちた。


 サング(変身ブレス)のエネルギーが、完全に尽きた。


 光が消えた後に残ったのは——傷だらけの、生身の人間だった。


 ライガ・アランが、片膝をついていた。


 右腕はもはや持ち上がらない。額から滴る血が、床に丸い染みを作っている。呼吸は浅く、荒い。


 空母から今まで——一度も、本当の意味で回復する間がなかった男の姿だった。


 それでも——ブラウンの瞳だけは、まっすぐにカイを見ていた。


 ライガは、胸のドッグタグをそっと握った。


 その手が——かすかに、白く光った。


 ライガ自身は気づいていない。


 ただ、握りしめた。


 カイが、ゆっくりと歩み寄った。


 光の長剣が、持ち上げられる。


「……終わりだ、ライガ」


 その声は——静かすぎるほど、静かだった。


 しかし。


 その一歩が——重かった。


「カイ」


 掠れた声で、ライガは言った。


「レヴェリオは——お前に、笑っていてほしかっただけじゃないのか」


 カイの剣が——また、止まった。


 その瞬間。


 ユナイトレッドの白銀の装甲の内側で——紫の光が、一瞬だけ瞬いた。


 消えた。


 だが確かに——そこにいた。


「お前が孤独だった時、隣にいてくれた。お前の言葉を全部受け入れてくれた。……管理された世界より、お前自身が笑っていてほしかった人間じゃないのか」


「……うるさい」


「そのレヴェリオを失ったのは——誰かのせいじゃない。お前が選んだんだろ。だから計画を止められない。止めたら、全部が無駄になる。レヴェリオを失った意味が——なくなる」


 ユナイトレッドの装甲が、かすかに震えた。


「……うるさいと言っている」


「カイ」


 ライガは、片膝をついたまま、まっすぐカイを見た。


 血が滲む唇が、静かに開いた。


「俺はまだ——諦めてない」


 その言葉が、最上層に静かに響いた。


 カイは——動けなかった。


 光の長剣を持つ手が、微かに——震えていた。


 ユナイトレッドのバイザーの奥の瞳が。


 深いところで、揺れ続けていた。


「……私には」


 カイの声が、また——割れかけた。


「私には……」


 その時。


 EVの扉が、開いた。


 轟音と共に。


「遅くなったわ——ライガァァッ!!」


 グリムの声が、最上層に響き渡った。


 カイが振り返る。


 EVから飛び出してきたのは——六つの影だった。


 黒曜石の重装甲を纏ったグリム。蒼銀のフルプレートアーマーのネビュロス。深紫の翅を広げたヴェルミリオン。


 そして——生身の、傷だらけの、レクス、セイジ、アシュレイ。


 全員の目が、床に片膝をついているライガを捉えた。


 グリムの眼光がカイへ向く前に——一瞬だけ、ライガへ向いた。


 その一瞬で、グリムは全てを理解した。


 ボロボロだ。


 いや、ボロボロという言葉では足りない。


 空母での暴走から今まで——こいつはバイオカプセルにも入れず、一度も回復する間もなく、ただ戦い続けてきた。


 魔王たちがカプセルで傷を癒している間も、ライガは暴走の炎を内側に抱えたまま、どこかで戦っていた。


 それが今、限界を超えた先でまだ、膝をついたまま敵を見続けている。


 グリムの瞳に、何かが過った。


(……白炎を受けたこいつの中に、何かが宿っとる)


 確信ではない。


 ただの感覚だ。


 だが——グリムの勘は、いつだって外れたことがない。


「……生きとるか、ライガ」


 グリムの声は、珍しく——静かだった。


「……ああ」


「そうか」


 グリムは、それだけ言った。


 それだけで十分だった。


 グリムは——前に出た。


 カイの前に。


「カイ・レグリオ」


 グリムが、低く言った。


「お前の計算に入ってへんかったもんが、全部揃ったで」


 カイは、グリムの後ろに並ぶ全員を見た。


 ネビュロス。ヴェルミリオン。


 そして——レクス。セイジ。アシュレイ。


 武器もない。スーツもない。サング(変身ブレス)のエネルギーも尽きている。


 傷だらけの、生身の三人が——そこに立っていた。


 ユナイトレッドのバイザーの奥の瞳が、かすかに揺れた。


「……廃棄した部品どもが」


 その言葉は、冷たかった。


 だが——かつてより、わずかに——震えていた。


「まだ動いているか」


 レクスが、一歩前に出た。


 武器はない。鎧もない。傷だらけの生身で。


 しかし——その目は、かつての「思考停止した番人」の目ではなかった。


「カイ」


 レクスの声は、重かった。


「私は長い間、お前の命令を『法』と呼んで従ってきた。自分の判断責任から逃げるために」


「……」


「だが今は——自分の言葉で言う」


 レクスはまっすぐカイを見た。


「お前のやっていることは——正義ではない。それが私の判決だ」


 今度はセイジが前に出た。


「カイ。私はかつて、感情を『バグ』と呼んだ」


 セイジの声は、静かだった。


「だが今は——それが間違いだったと知っている。計算式の外にあるものが、人間を人間たらしめる。……お前のシステムには、それが欠けている」


 そしてアシュレイが、二人の横に並んだ。


 かつての虚勢はない。承認欲求を叫ぶ声もない。


 ただ——静かな、本物の顔で。


「俺は……お前のシステムの中で輝きたかった。でも今は違う」


 アシュレイは、グリムを一瞬だけ見た。


「自分の炎で燃えることを——あいつが教えてくれた」


 三人の言葉が、最上層に静かに満ちた。


 カイは——動かなかった。


 ユナイトレッドの光の翼が、微かに揺れている。


 バイザーの奥の瞳が——揺れていた。


 深いところで。


 ずっと。


 その時——ユナイトレッドの白銀の装甲が、また内側から揺れた。


 今度は先ほどより強く。


 紫の光が、装甲の継ぎ目から漏れ出した。


 カイ自身が、それに気づいていない。


「……廃棄した部品が」


 カイの声は、静かだった。


「自分の意志で動いている、か」


 カイは、ゆっくりと光の長剣を構え直した。


「……計算外だ」


 その声に——初めて、かすかな感情が混じった。


 怒りでも悲しみでもない。


 それは——**恐れ**だった。


 完璧主義者が、初めて「想定外」の感情を抱いた瞬間の、恐れ。


「だが——」


 カイは、全員を見渡した。


「計算外であっても、結果は変わらない。計画は止まらない。……決定事項だ」


 ユナイトレッドの光の翼が、大きく広がった。


 グリムが拳を握った。


 黒曜石の重装甲から、赤い蒸気が噴き出す。


 その時、後方からかすかな音がした。


 ライガが、床に手をついたまま——じっと、カイを見ていた。


 動けない。立てない。


 それでも——その目は、消えていなかった。


 グリムはそれを見て、前を向いた。


「……ライガ」


 グリムは振り返らずに言った。


「もうええ。休んどれ。あとは俺たちに任せろ」


 ライガは——何も言わなかった。


 ただ、胸のドッグタグを握りしめた。


 その手が、また——かすかに白く光った。


 誰も気づかなかった。


 グリムはカイへ向いた。


 赤い瞳が——静かに、しかし確かに燃えていた。


「ネビュロス、ヴェルミリオン」


「分かっている」


「もちろんさ」


 三人の魔王が、並んだ。


「お前が『正義』を振りかざして世界を塗りつぶそうとするんやったら——俺たちが『悪』になって、それをぶっ壊したるわ」


 それは——この物語の最初から変わらない、魔王戦隊の誓いだった。


「……来たまえ」


 カイが、静かに告げた。


 ユナイトレッドの白銀の装甲の内側で——紫の光が、また一瞬だけ瞬いた。


 消えた。


 だが——確かに、そこにいた。


 孤独に燃え続けた太陽と、冷え続けた星。

 二つが初めて、本当の意味でぶつかろうとしていた。


 次の瞬間——空間が爆ぜた。


(第17話へ続く)

いつもお読みいただき、ありがとうございます!


今回の章は、満身創痍のライガと、対峙するカイとの、非常に重要な心理戦を描いた場面でした。自分の限界を超え、スーツの光すら失ったライガが、それでも「諦めない」と語る姿は、彼の揺るぎない信念そのものです。


ライガがカイに投げかけた「諦めたら、お前が一人になるから」という言葉。これは、彼がどれだけカイという人間を深く理解し、その孤独に寄り添おうとしているかを示す、象徴的な台詞だと感じています。カイの内面がライガの言葉によって大きく揺さぶられる様子や、その葛藤を表現することには特に力を入れました。また、ライガの身体に宿りつつある「何か」の描写も、今後の展開への伏線として楽しんでいただけると嬉しいです。


そして、最高のタイミングで駆けつけたグリムたち!ここから物語はさらに加速していきますので、ぜひ今後の展開にもご期待いただければ嬉しいです。


少しでも面白い!と思っていただけましたら、画面下の★★★★★から評価やブックマーク、そして感想をいただけると、大変励みになります!

今後とも応援よろしくお願いいたします。

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