第3部 第17話『悪の矜持、正義の残骸(前編)』
【前回のあらすじ】
ボロボロになりながらもカイと対峙し続けたライガは、変身を解かれてもなお、カイの孤独を指摘し続けた。絶体絶命のその時、グリムたち魔王戦隊に加え、レクス、セイジ、アシュレイが駆けつける。それぞれの言葉でカイの間違いを訴え、ついにカイは初めて「恐れ」の感情を抱いた。
※本作品の執筆にはAIを活用しています。
空間が爆ぜた瞬間——グリムはすでに動いていた。
黒曜石の重装甲から赤い蒸気を噴き出しながら、地を蹴る。
「《紅蓮爆脚》!!」
足裏からマグマが爆発的に噴射し、砲弾のような勢いで飛び込む。
カイは動じない。
光の翼を僅かに傾け——重力のベクトルをグリムの軌道上に発生させた。
「《重力崩壊》」
空間が歪む。グリムの突進が、見えない壁に叩きつけられたように減速した。
「ッ——なんや、重い……!」
「君の動きは読んでいる」
カイの声は冷静だった。
グリムはそれを感じながら、強引に重力を突き破った。
「うおおおおッ!!」
渾身の右拳が、カイへ向かって伸びる。
カイは腕を交差させた。
「《反転障壁》」
ドォォォンッ!!
グリムの拳の力が、そのままグリムへ返ってくる。
「がッ……!!」
弾き飛ばされたグリムを、ネビュロスが氷の足場を生成して受け止めた。
「無茶をするな」
「うるさいわ! 硬いんじゃあいつ!」
「分かっている。だから私が——」
ネビュロスが魔導書を開いた。
「《氷結界・金剛塵》!!」
微細な氷の粒子がカイの全身を包む霧となって広がる。視界を奪い、センサーを乱反射で飽和させる。
カイの動きが——一瞬、止まった。
「今や、ヴェルミリオン!」
「言われなくてもね!」
上空から、紫の翅を広げたヴェルミリオンが急降下する。
「《悪夢の劇場》——!」
金剛塵の霧に幻影が混じる。どこにヴェルミリオンがいるか、どこが実体か——センサーを飽和させた上に幻術が重なり、カイの認識が乱れる。
「……ッ」
カイの動きが、鈍った。
グリムはその隙を逃さなかった。
「もろたァッ!!」
《紅蓮拳》——溶岩を噴出させた拳が、カイの胸板へ向かって一直線に迫る。
ドガァッ!!
確かな手応えがあった。
カイが——後退した。
「ぐ……ッ!」
プラチナシルバーの装甲に、赤黒い亀裂が走る。
グリムは追撃の構えを取った。
だが——カイは倒れなかった。
光の翼を大きく広げ、空中へ舞い上がる。
「……やるな」
カイの声は、まだ冷静だった。
しかし——その装甲の亀裂から、何かが滲んでいた。
「三人がかりで、ここまで追い込むか」
「当たり前やろ。お前一人に三人でかかって何が悪い」
グリムは拳のバンテージを締め直した。
「正義の味方やないんやから、俺らは」
カイは——少しの間、黙っていた。
ユナイトレッドのバイザーの奥の瞳が、かすかに揺れた。
「……そうだな」
それだけ言って、カイは動いた。
「《光翼斬》!!」
光の翼から粒子が一斉に散布され、その中心をカイが光の剣を構えて突き抜ける。
光の嵐が三人を全方位から包んだ。
「ッ——!!」
グリムが黒曜石の防御層を展開する。
「《黒曜鎧》!!」
ネビュロスが氷壁を張る。
「《絶対結界》!!」
ヴェルミリオンが分身で光を散らす。
「《道化の舞》!!」
三人がそれぞれの防御で散らばりながら、光の嵐を凌いだ。
だが——削られていた。
グリムの黒曜石装甲に焼け焦げた線が走る。ネビュロスの氷壁が薄くなっている。ヴェルミリオンの分身の数が減っていた。
ネビュロスが静かに分析した。
「タワーを掌握したことで、重力制御の精度が上がっている。この空間全体が——奴の庭だ」
「じゃあどうする」
「奴の注意を分散させ続けるしかない。三方向から同時に攻め、どれか一つでも抜けば——」
「分かっとる。やってみせる」
三人の動きが、変わった。
連携を捨てた。
グリムが叫びながら正面突破を試み、ネビュロスが空間全体を氷で覆い、ヴェルミリオンが無数の分身を展開して最上層を混沌に変えた。
カイの動きが——乱れた。
「今だ、グリム!!」
「おおおおッ!!」
グリムが全魔力を右拳に集中させた。
黒曜石の装甲が内側から溶け、溶岩が拳を包む。
《紅蓮拳》——渾身の、全てを込めた一撃。
カイは《反転障壁》を展開しようとした。
だが——遅かった。
ドォォォォォンッ!!!
グリムの拳が、カイの装甲を直撃した。
プラチナシルバーの装甲が大きく陥没し、カイの身体が吹き飛ぶ。
壁面に激突し、床に落ちた。
沈黙。
グリムは荒い息を吐きながら、拳を下ろした。
「……終わりか?」
ネビュロスが警戒を緩めない。
「まだだ。油断するな」
ヴェルミリオンも、分身を解かずに構えたままだ。
床に倒れたカイは——ゆっくりと、起き上がった。
装甲は大きく損傷している。光の翼の片方が、機能を失って垂れ下がっていた。
カイは、自分の手を見た。
震えていた。
「……ここまで、追い込まれるとは」
その声は——静かだった。
怒りでも悲しみでもない。
ただ——認識していた。
自分が、負けつつあることを。
カイは、ゆっくりと立ち上がった。
そして——最上層の端に視線を向けた。
そこに——壱号機が立っていた。
タワーへ撤退させた時から、ずっとそこにいた。グリムに装甲をひしゃげさせられながらも、機械形態を保ったまま。
カイがこの事態を想定して、手元に置き続けていたものだ。
カイの瞳が、冷たく細くなった。
「……仕方ない」
「何が仕方ないんや」
「君たちを甘く見ていた。……その代償だ」
カイは壱号機へ歩み寄った。
ネビュロスが一歩踏み出す。
「待て——何をする気だ」
「計画を完遂するための、最終手段だ」
カイは壱号機の前に立ち、静かに命令を下した。
「壱号機——同化モード、起動」
『……命令を確認。対象:U-00。……同化プロセス、開始』
壱号機の胸部装甲が、生々しい音を立てて左右に展開した。
どす黒い粘液状の液体金属が、カイへ向かって伸びていく。
「まさか——」
ネビュロスの目が、鋭くなった。
「自分自身に——取り込ませるつもりか」
「そうだ」
カイは迷わなかった。
「待てカイ!!」
グリムが駆け出した。
カイは振り返らずに言った。
「……元々これは、ライガを取り込むために設計したシステムだ」
その声に——かすかな、皮肉が混じった。
「まさか自分自身に使う日が来るとは、思っていなかったがな」
黒い液体金属が、カイの全身を這い上がり始めた。
「カイ、やめろ!!」
グリムが叫んだ。
だが——遅かった。
壱号機とカイが融合していく。プラチナシルバーの装甲が黒く侵食され、変形していく。肩の装甲が壱号機の重厚な形状へと肥大化し、光の翼が黒い有機的な翼へと変貌する。
ユナイトレッドの姿が——消えた。
代わりに現れたのは、黒とシルバーが混じり合った異形の存在だった。
バイザーの奥の瞳が——赤く染まった。
『……同化、完了。出力——解放』
それはもはや、カイの声ではなかった。
システムと人間が融合した、無機質な合成音声。
グリムは、その姿を前にして——立ち止まった。
「……カイ」
返事はない。
ただ、赤く染まった瞳が、グリムを捉えていた。
「カイ・レグリオ!!」
グリムが叫んだ。
だが——。
黒く変貌した姿が、重力を解き放った。
ドォォォォォンッ!!!
三魔王が、同時に吹き飛ばされた。
グリムが壁に激突し、ネビュロスが床を転がり、ヴェルミリオンが天井近くまで吹き上げられる。
「ぐ……ッ!!」
「……これは」
ネビュロスが、起き上がりながら呻いた。
「壱号機の力が上乗せされている。出力が——桁違いだ」
「くそッ……!」
グリムは壁から背を引き剥がし、改めて前を向いた。
黒く染まったカイが、ゆっくりと歩み寄ってくる。
重力が歪む。床が軋む。
三魔王が構えを取り直す。
だが——。
グリムの目が、一瞬だけ——後方のライガへ向いた。
床に座り込んだまま、ライガが見ていた。
動けない。立てない。
それでも——その目は、まだ消えていなかった。
グリムは前を向いた。
(……まだや。まだ終わってへん)
(第18話へ続く)
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
今回はグリム、ネビュロス、ヴェルミリオンの三人と、圧倒的な力を持つカイとの激しいバトルが描かれました。冷静沈着で強大なカイを、三人がどう連携して追い詰めていくか、という点が見どころだったかと思います。カイも相当な強敵でしたが、ついに最終手段である壱号機との同化へ……!
一体この融合が、今後の戦いにどう影響してくるのか、次のお話も楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。
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