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アンチジャスティス -魔王戦隊ダークトリニティ-  作者: DD22


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第3部 第12話『中部セクター:永久凍土の問答(後編)』

【前回のあらすじ】

ネビュロスは中部セクターで、純粋な破壊衝動に突き動かされる参号機ジャッジと対峙する。かつてのレクス・クレイドの意志をカイに封じられたその姿に、ネビュロスは《真・魔導外殻》と氷の魔術を駆使して挑んだ。強大な力に苦戦しながらも、ネビュロスは参号機の奥にレクスの「声」を捉え、その意識を引きずり出すことを決意する。

※本作品の執筆にはAIを活用しています。


 床の霜が、じわりと広がっていく。


 ネビュロスの足元から這い出した白い結晶が、プラットフォームの亀裂を縫うように伸び、参号機ジャッジの足元まで到達した。


 参号機ジャッジは、動じない。


 バイザーの眼窩は黒く塗りつぶされたまま。命令だけがある。感情はない——表面上は。


 ネビュロスは、じっとその左腕を見ていた。


 右腕は刃の塊へと変形し、シグマスーツの黒い液体金属と融合している。だが左腕だけは、かろうじて人間の手の形を保っていた。


 そして——その左手が、静かに、握られていた。


(……グリムの言っていた通りだな)


 タワーに乗り込む直前、グリムが珍しく神妙な顔で言っていた。


 『あいつな——ネビュロス。あの石頭、泥の中に叩き落としたあと、一瞬だけ人間の顔になったんや。システムでも、法の番人でもない、ただ怯えた人間の顔に。……まだ中にいると思う』


 グリムらしくない、静かな確信だった。


 その言葉を、ネビュロスは今、思い出していた。


 参号機ジャッジが動いた。


 助走なし。躊躇なし。最短距離の突進。


 ネビュロスは魔導書から無数の氷のつぶてを生成し、全方位へ散布した。


 《氷晶弾クリスタル・バレット》。


 視界を塞ぐ。センサーを飽和させる。


 白い霧がセクターを覆った瞬間、ネビュロスは真横へ回り込み、参号機ジャッジの右腕の根元に氷壁を内側から生成した。


 《絶対結界アブソリュート・ウォール》!


 ガキィィィィンッ!!


 関節が急速凍結し、刃の駆動が止まる。


 参号機ジャッジが左腕を振るった瞬間、ネビュロスはすでに上に跳んでいた。


 頭上から降りながら、魔導書を全開に開く。


「《氷結界・金剛塵ダイヤモンド・ダスト・プリズン》!!」


 微細な氷の粒子が参号機ジャッジの全身を包む。肩の装甲、膝の駆動部——巨体の動きがはじめて鈍った。


 ネビュロスは着地した。退かない。真正面に立つ。


 その瞬間——気づいた。


 全身を金剛塵ダイヤモンド・ダストに覆われ、動きを封じられた参号機ジャッジが。


 左手だけを、強く握り直した。


 命令ではない。反射でもない。


 何かを——掴もうとしている。


(……いる。確かにいる)


 ネビュロスは無言のまま一歩前に出た。


「お前は今、何を握っている」


「……ガ……排除……対象……」


「システムの答えは聞いていない」


 参号機ジャッジのバイザーが、かすかに揺れた。


「森でお前と対峙した時、私はお前の剣を受けた。あの重さは単なる出力ではなかった。何か守ろうとするものを背負った剣の重さだった」


 凍結した装甲が、内側から軋む。


「だが今の刃は違う。命令という鎧を被せられた、中身のない重さだ」


「……ちが……」


「違うなら——その左手で今お前が掴もうとしているものを、答えてみせろ」


 沈黙。


 参号機ジャッジの左手が、もう一度、強く握られた。


 バイザーの奥で——深い緑色の瞳が、揺れた。


 赤いシステムの光の向こうに、怯えた人間の目が、一瞬だけ浮かんだ。


 ネビュロスはその光を見逃さなかった。


「……やはりまだいるな、レクス・クレイド」


 次の瞬間、参号機ジャッジの胸部が爆発的に発光した。


『緊急処置。感情ノイズ、強制遮断。出力——解放リリース


 金剛塵ダイヤモンド・ダストが内側からの圧力で砕け散る。装甲が肥大化し、右腕の刃が元よりも巨大に再生された。胸部に全エネルギーが集中し、黄金の刃に光の断頭台ギロチンが形成されていく。


『《処刑執行エクセキューション・バスター》——』


 ネビュロスは退かなかった。


 むしろ——前に出た。


 蒼銀のフルプレートアーマーから冷気が爆発的に溢れ出す。プラットフォームの床が音を立てて凍り、吐く息が結晶になる。存在するだけで絶対零度へと変えていく《真・魔導外殻トゥルー・マギア・シェル》が、その真価を解放リリースした。


「感情を揺さぶられたシステムが防御本能で出力を跳ね上げる。……実に手が込んでいる」


 魔導書が深く、重く開く。


「だがな——揺さぶられるということは、まだそこに揺さぶられるものが残っているということだ」


 断頭台ギロチンが振り下ろされる。


「《凍滅零界ゼロ・アブソリュート》!!」


 絶対零度の奔流が空間ごと断頭台を飲み込んだ。


 ズドォォォォォンッ!!!


 白と金の衝突が、閉じたセクターを揺るがす。プラットフォームの床に亀裂が走り、外縁の装甲板が歪む。


 衝撃波が収まった後——。


 参号機ジャッジが、膝をついていた。


 装甲のいたるところに亀裂が入り、シグマスーツの液体金属が蒸発するように剥がれていく。胸部の黒い脈動が、急速に弱まっていく。


 ネビュロスは歩み寄った。


 膝をついた。目線を合わせるために。


「……聞こえるか」


 参号機ジャッジのバイザーが、弱く明滅している。


 システムの赤い光が剥がれ、その奥に——深い緑色の瞳があった。


 怯えた。弱い。しかし確かに生きている、人間の目だった。


「俺は……何を……握っていたんだ……」


 掠れた、震える声だった。


 ネビュロスはすぐには答えなかった。


 少しの間、ただその目を見ていた。


「……それを自分で問えるなら、もうお前はシステムの中にはいない」


 参号機ジャッジの装甲が、音を立てて崩れ落ちた。


 シグマスーツの黒い液体金属が蒸発し、残骸が床に散らばる。


 プラットフォームに横たわったのは、一人の大きな男だった。


 傷だらけで。泥だらけで。


 それでも——左手だけは、まだ何かを握るように、閉じられていた。


 ネビュロスは立ち上がり、魔導書を閉じた。


 上を見上げる。上層では新たな戦いが行われようとしている。


「……休んでいろ。まだ終わっていない」


(第13話へ続く)

ここまでお読みいただきありがとうございます!


今回のエピソードは、ネビュロスと参号機ジャッジ、そしてレクス・クレイドの人間性を巡る戦いとなりました。ネビュロスが特にジャッジの「左手」に注目し続けたのは、そこにグリムの語った「怯えた人間の顔」の片鱗を見ていたからかもしれません。システムという鎧を剥がされ、泥だらけで横たわるレクスの姿に、ネビュロスが何を思ったのか……。この二人の関係性が、今後どう描かれていくのかにもご注目いただけると嬉しいです。


物語はまだまだ上層へと続きますので、ネビュロスたちの行く末を、ぜひ最後まで見届けていただけたら幸いです。


面白い!と思っていただけたら、下の★★★★★から評価をいただけると大変励みになります!ブックマークやご感想も、お待ちしております!

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