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第2部 第8話『虚空の檻、暴走の赤』

【前回のあらすじ】


魔導外殻マギア・シェルを纏い、新たな力を得た魔王たちは、洗脳されたバーニングレッド率いるレッド部隊と森で激突。


グリムはバーニングと真っ向から拳をぶつけ合い、「目ぇ覚ませやライガァ!」という魂の一撃で、彼の中に「感情」というバグを刻み込む。


暴走の危険を察したジャッジレッドは煙幕で撤退し、バーニングを回収。


一方その頃、ジャスティスフェイス本部では、カイ(ユナイト)がモニター越しに、ライガの思考制御に走った「ノイズ」を目撃していた。

※本作品の執筆にはAIを活用しています。


         


地下水道のアジトに戻ったグリムは、壁を殴りつけた。


「くそっ……! あと一歩やったのに!」


目の前で連れ去られたライガの姿が、脳裏に焼き付いて離れない。

あの苦悶の表情。そして、最後に漏らした「やめろ」という悲痛な声。


「落ち着け、グリム。焦りは判断を鈍らせる」

ネビュロスが静かに諭すが、その声にも隠しきれない苛立ちが滲んでいる。


「……ポルク、解析はどうだ?」

ヴェルミリオンが、端末に向かうポルクに問いかける。

ポルクは顔面蒼白で、震える指でキーボードを叩いていた。


「せ、セイジレッドの撤退時の通信波形、解析が完了しました」

ポルクがモニターを指差す。

「暗号化されていましたが、内部サーバーへのバックドアを見つけました……!

状況は、最悪です」


モニターに、『人格再構成プロセス:最終段階』の文字と、カウントダウンが表示される。


「――タイムリミットは、あと三時間です」


「三時間……やと?」

グリムが息を呑む。


「はい。俺の計算じゃ、それ過ぎたら……バーニング隊長の記憶領域は完全に上書きされます。

感情も、思い出も、全部デリートされて……ただ命令に従うだけの『生体CPU』になってしまいます!」


ダンッ!!

グリムが再び机を叩き、天板にヒビが入る。


「ふざけんな! あいつは人間やぞ!

悩んで、迷って、それでも歯食いしばって前向いてた……不器用な人間なんじゃい!!」


「喚くな。酸素の無駄だ」

ネビュロスが魔導書を閉じ、冷徹に告げる。だがその片眼鏡の奥は、絶対零度のような怒りで満ちていた。

「行くぞ。正面突破は不可能だが、ポルクが見つけた『穴』がある」


「穴?」


「補給ルートです」

ポルクが図面を展開する。

「要塞は高度八千メートル。生身で近づくのは不可能です。でも、定期的に地上から物資を運ぶ『無人輸送機』が行き来してる。

……次の便のコンテナに紛れ込めば、検知されずに内部へ入れます」


「貨物扱いか。美しい旅とは言えないねぇ」

ヴェルミリオンが苦笑しながら、紫の蝶を指先で遊ばせる。

「でも、招待状がないなら仕方ない。忍び込ませてもらおうか」


グリムは拳を鳴らし、ニヤリと獰猛に笑った。

その目に宿るのは、焦りではなく、獲物を狙う猛獣の光だ。


「上等や。……正義の味方様の寝床、悪党がこっそり荒らしたるわ!」


          *


上空八千メートル。成層圏に近い極寒の空。

雲海を突き抜ける巨大な鋼鉄の影――聖断空母ジャッジメントに向けて、一機の無人輸送機がアプローチしていた。

そのコンテナの底部。張り付くように隠れた三つの影があった。


「……さぶッ!! 凍るわこんなん!」

「静かにしろ。私の結界から出るな、気圧差で死ぬぞ」


ネビュロスが展開した気圧調整と保温の氷結界の中で、グリムたちは息を潜めていた。

ガコン、と重い衝撃。

輸送機が空母の格納庫ハンガーに着艦した合図だ。


「ポルク、ハッキング頼むで!」

『了解……! 監視カメラ、ループ映像に差し替えます。……今です!』


コンテナが開いた瞬間、三人は影のように滑り出した。


格納庫ハンガー内は、不気味なほど静まり返っていた。

人間ではなく、無数の自律歩行メカと監視ドローンが、規則的な機械音だけを響かせて巡回している。

効率化の果てに人間を極限まで減らした、冷徹な管理空間。


「うわ、ロボットだらけやな……」

「見つかるわけにはいかないね」


ヴェルミリオンが指を弾く。

紫の鱗粉が空調に乗って広がり、ドローンのセンサーを狂わせていく。

「おやおや、僕たちの姿が見えないみたいだ。機械の目も、案外節穴だね」


彼らは堂々と通路を歩くが、警備メカたちは彼らを「認識外のエラー」として処理し、素通りしていく。


だが、中枢エリアへ続くゲートの前には、重武装のエリート警備兵(人間)が立ちはだかっていた。

「ここは通れないな」

「強行突破や!」

「待て。……スマートにいくぞ」


ネビュロスが指先を向ける。

音もなく冷気が走り、警備兵たちの足元から首までを一瞬で凍結させた。

「……!?」

声を発する間もなく、彼らは氷像と化す。

「回路も神経も一時的に凍らせた。死んではいない。……行くぞ」


ポルクのナビゲートと、魔王たちの隠密行動。

彼らは迷路のような艦内を最速で駆け抜け、ついに最深部、『生体調整室』の前へとたどり着いた。


「ここやな……ライガ」


グリムが分厚い隔壁に手を当てる。

熱い。

扉の向こうから、異常な熱気と、どす黒い魔力の波動が漏れ出している。


「鍵は?」

「壊す」


ドォォォォン!!

グリムの炎とネビュロスの氷塊が同時に炸裂し、電子ロックごと扉を吹き飛ばした。


          *


警報が鳴り響く調整室内。

そこは、無数のモニターと太いケーブルが這い回る、薄暗い実験場だった。

部屋の中央、巨大な培養槽のようなカプセルの中に、その男はいた。


バーニングレッド――ライガ。

全身にプラグを打ち込まれ、薬液の中で苦悶の表情を浮かべている。


「ライガ!!」

グリムが叫び、飛び込もうとする。


「――チッ。鼠が入り込んだか」


舌打ちの音が響いた。

コンソールを操作していた男が、不快そうに振り返る。


ユナイトレッド――カイ・レグリオ。


彼は侵入者に驚く素振りも見せず、ただ「作業を邪魔された」ことへの苛立ちを露わにしていた。


「カイ……ッ!!」

「警備班は何をしている。……まあいい、セイジたちは出払っているしな」


カイは冷淡な目でグリムたちを見下ろした。

「ここまで来るとは褒めてやる。だが、タイミングが悪かったな。

今、私は最高傑作を仕上げている最中だ。部外者は退場願おう」


「傑作やと……? 友達を部品扱いすんな!!」

グリムの怒りが爆発し、右腕が赤熱する。


「友達? 違うな」

カイは鼻で笑った。

「彼は『システム』だ。

感情というノイズを排除し、完璧な秩序をもたらすための、美しき礎だ。

……だが、貴様らのせいで工程が遅れている」


カイの指が、コンソールの赤いスイッチ――『強制執行オーバーライド』ボタンにかかる。


「調整率はまだ88%……不完全だが、構わん。

貴様らに奪い返され、再び彼を迷わせるくらいなら――」


「やめろッ!!」


「ここで『兵器』として消費する!!」


カイがボタンを叩き込んだ。


ゴゥンッ……!!

カプセル内の液体が瞬時に沸騰し、毒々しい真紅の光が室内を埋め尽くす。

繋がれたケーブルから、致死量を超えたエネルギーがライガの脳内へ逆流する。


「ガ、ア……アアアアアアアアアッ!!!」


ガラスが内側からの圧力で粉砕された。

爆風と共に飛び出してきたのは、全身から制御不能な炎を噴き上げる、異形の赤。


その瞳に、理性はない。

ただ、破壊衝動だけを焼き付けられた、虚ろな深淵が広がっていた。


「コロ……ス……ハイジョ……スル……」


「ライガ……?」


グリムが呆然と立ち尽くす前で、暴走したバーニングレッドが咆哮した。

その熱量は、要塞の装甲さえも飴細工のように溶かし始めていた。


(第9話へ続く)

ここまでお読みいただきありがとうございます!


今回は、いよいよ本格的な潜入ミッション! 限られた時間の中で、グリムたちがライガ救出のためにジャッジメントへ乗り込む緊迫感をお届けしました。ポルクのハッキング、ヴェルミリオンの幻惑、ネビュロスの冷徹な戦術と、それぞれの個性的な能力が光るシーンになったかと思います。


そして、ついに姿を現したカイ・レグリオ。彼にとってライガが「システム」であり「兵器」であるという認識は、主人公たちとはあまりにもかけ離れたものでした。カイの非情な一撃によって暴走してしまったライガ……彼の意識が戻るのか、それともこのまま破壊の限りを尽くしてしまうのか、次回以降にご期待ください!


もし今回のエピソードが「面白い!」と感じていただけたら、ぜひ下の★★★★★から評価を、そしてブックマークや感想で応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!

次回もお楽しみに!

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