第2部 第1話『再起の誓い、鋼の絆』
【前回のあらすじ】
カイ(ユナイト)との激闘の末、ライガ(バーニング)は強制洗脳を受け、冷徹な殺戮兵器と化してしまった。
最強の敵となったかつての友を前に、グリムたちは為す術なく撤退を余儀なくされた。
※本作品の執筆にはAIを活用しています。
地下水道の隠れ家。
湿った空気には、いつにも増して重苦しい沈黙が漂っていた。
「クソッ……! クソッ!!」
グリムが壁を殴りつける。拳の皮が破れ、血が滲むが、痛みなど感じない。
「なんでや……! なんであいつが、あんな目に遭わなアカンのや!」
ライガの虛ろな目。機械のような声。
そして、自分たちに向けられた殺意の炎。
あいつは、誰よりも人間らしく、不器用に足掻いていたはずだ。
それを、組織の論理が、友人の裏切りが、無慈悲に踏みにじった。
「……落ち着け、グリム。体力を消耗するだけだ」
ネビュロスが静かに告げるが、その声にも悔しさが滲んでいる。
手元の魔導書を開くが、文字が頭に入ってこない。
「だが、今の我々では手が出せないのは事実だ。あの状態のバーニングレッドは、リミッターが解除されている。真正面からぶつかれば、我々も消し炭だ」
「だからって見捨てるんか!?
あいつは……俺たちを逃がすために、あそこで踏ん張ったんやぞ!」
「誰も見捨てるとは言っていないさ」
ヴェルミリオンが、珍しく真面目な顔で割って入る。
いつもなら軽口を叩く彼も、今は唇を噛み締めていた。
「でも、感情だけで突っ込んでも犬死にするだけだ。……僕たちには、決定的に『力』が足りない」
「力やと……?」
グリムが睨みつける。
その時、隠れ家の奥――倉庫として使っていた一画から、物音がした。
「誰だ!」
グリムが即座に反応し、炎を灯す。
「ひ、ひぃッ! 殺さないでくれ!」
「静かにしなさい! ……すみません、お三方」
現れたのは、兵器開発局から連れ出した二人の研究員だった。
一人は小太りで眼鏡をかけた気弱そうな男。もう一人は、白衣を着た知的な雰囲気の女性だ。
爆破の混乱の中、グリムたちに連れられてここまで逃げ延び、恐怖で震えながら息を潜めていたのだ。
「お前ら……まだおったんか」
グリムが炎を消し、不機嫌そうに言う。
「ここは遊び場やないぞ。ほとぼりが冷めたら、さっさと遠くへ逃げろ。組織はお前らが死んだと思っとるはずや」
「逃げ場なんて、ありません」
女性研究員が一歩前に出る。その瞳には、怯えよりも強い光が宿っていた。
「私はエルザ。開発局の主任研究員でした。こっちは助手のポルク。
……私たちは、あの施設の『秘密』を知りすぎてしまいました。もし生存がバレれば、地の果てまで追跡され、消されます」
「秘密?」
ネビュロスが片眼鏡を光らせる。
「はい。……魔族を生体部品にする実験だけではありません。
カイ……ユナイト参謀が進める『統合都市計画』の真の目的」
エルザは唇を噛みしめた。
「あの方は、都市の全住民の精神をネットワークに接続し、一つの巨大な演算装置として利用しようとしています。
個人の意志を完全に消去し、ただの『生きたCPU』にするために」
「なッ……!?」
グリムたちが絶句する。
支配どころの話ではない。それは、人間としての尊厳の完全なる抹殺だ。
「私たちは……怖かった。見て見ぬふりをしてきた。
でも、あの人……バーニング隊長は、自分の立場を捨ててまで私たちを助けてくれました。
敵であるはずのあなたたちと一緒に!」
ポルクが涙ながらに叫ぶ。
「俺たちも……戦いたいんです! あの人を助けるために!
戦う力はないけど……知識ならあります!
あんたたちの魔力と、俺たちの科学技術を合わせれば……あの最強のスーツにも対抗できる『武器』が作れるはずだ!」
「魔力と科学の……融合か」
ネビュロスが眼鏡を押し上げる。以前、彼が提案した仮説だ。
だが、それを実現するための「技術」が欠けていた。それが今、目の前にある。
グリムは二人を見つめ、やがてフッと笑った。
「……おもろい。
悪党の仲間に志願するとは、ええ度胸やないか」
グリムが拳を突き出す。
「ええやろ。俺たちに力を貸せ。
その代わり、必ずあいつを……ライガを取り戻すぞ!」
「はいッ!」
エルザとポルクも、震える手で拳を合わせる。
魔王と人間。科学と魔法。
異なる存在が、一つの目的のために手を組んだ瞬間だった。
「さあ、反撃の準備だ」
ヴェルミリオンが微笑む。
「最高の『武器』を作ろうじゃないか。あの悲劇のヒーローを、物語の舞台に連れ戻すためにね」
地下の闇の中で、新たな希望の火花が散る。
魔王戦隊、第2章。
奪われた絆を取り戻すための、総力戦が始まる。
(第2話へ続く)




