第20話『崩壊のプレリュード』
【前回のあらすじ】
兵器開発局での戦闘の最中、組織の闇を知ったライガは、グリムとの激闘の末にカイ(ユナイト)と対峙する決意を固める。しかし、施設には証拠隠滅のための自爆シーケンスが仕掛けられていた。
※本作品の執筆にはAIを活用しています。
『警告。自爆まで、あと120秒』
無機質なアナウンスと共に、施設のあちこちで爆発が始まった。
天井が崩落し、瓦礫が通路を塞ぐ。炎が瞬く間に燃え広がり、逃げ場を奪っていく。
「急げ! このままだと生き埋めだ!」
ヴェルミリオンが叫び、幻術で煙を晴らしながら先導する。
「出口のセキュリティロックが解除されていない。……強制突破しかないか」
ネビュロスが走りながら端末を操作するが、システムは既に応答しない。
「邪魔や、退けッ!」
グリムが炎を纏った蹴りで瓦礫を吹き飛ばす。
その後ろを、ライガが無言で走っていた。
敵同士が、同じ方向へ向かって走る。
皮肉な光景だったが、今は躊躇っている暇はない。
「おい、正義の味方!」
グリムが振り向かずに怒鳴る。
「お前、ここの構造知っとるんか!? 一番近い出口はどっちや!」
「……Bブロックのエレベーターシャフトだ。そこなら地上へ直結している」
ライガは一瞬迷ったが、すぐに答えた。
「だが、電源が落ちている可能性がある。動く保証はない」
「動かんかったら登るだけや! 案内せえ!」
ライガが前に出る。
「こっちだ。ついて来い」
崩れ落ちる廊下を駆け抜ける。
途中、取り残された研究員や警備兵たちが、瓦礫の下で助けを求めていた。
「助けてくれ……! まだ死にたくない!」
「見捨てないでくれ、隊長!」
ライガの足が止まる。
(見捨てるのか? 彼らもまた、組織の歯車として利用された犠牲者だ)
だが、時間は残酷に過ぎていく。全員を助ける余裕はない。
「……クソッ!」
ライガは瓦礫を持ち上げ、研究員を引っ張り出した。
「立てるか!? 走れ!」
「あ、ありがとう……!」
「何してんねん、お前!」
グリムが怒鳴る。
「そんなことしてたら巻き込まれるぞ!」
「見殺しにはできない! 俺は……俺はまだ、ジャスティスフェイスの一員だ!」
ライガは叫び、さらに別の瓦礫をどかそうとする。
その愚直なまでの「正義」への執着。
組織に切り捨てられようとしているのに、それでもまだ誰かを守ろうとする姿。
「……アホか、お前は」
グリムは舌打ちし、ライガの隣に並んだ。
「一人でイキがってんちゃうぞ。手ェ貸したるわ!」
「なッ……?」
グリムが炎の爆発で巨大な鉄骨を吹き飛ばす。
ネビュロスが氷の柱で崩れかけた天井を支え、ヴェルミリオンが幻術でパニックになった職員たちを誘導する。
「勘違いすんなよ。俺たちはここから出るために邪魔なモンを退けてるだけや」
「……礼は言わんぞ」
「いらんわ!」
敵と味方、そして守るべき者たちが入り乱れ、一行は出口へと殺到する。
エレベーターシャフトに辿り着いた時、残り時間は30秒を切っていた。
「動かない……! やはり電源が!」
「強行突破だ!」
ライガが背中のスラスターを全開にし、炎の推進力で垂直の闇を駆け上がる。
「掴まれ!」
彼は両腕で、怪我をした研究員たちを抱え上げた。
グリムたちも魔力で壁を蹴り、壁面を跳躍していく。
『自爆まで、5、4、3……』
「飛べぇぇぇッ!!」
全員が地上へと飛び出した瞬間。
足元の施設が、閃光と共に消滅した。
ズガガガガガ……!!
大地が波打ち、森の木々が衝撃波でなぎ倒される。
黒煙と土煙が舞い上がる中、ライガと魔王たち、そして救出された研究員たちは地面に叩きつけられた。
「……ハァ、ハァ……」
生き延びた。
研究員たちも、恐怖で震えながら座り込んでいるが、無事だ。
ライガは立ち上がり、燃え上がるクレーターを見つめた。
(俺たちの拠点だった場所が……)
「……貸しにしとくで」
グリムが土を払いながら言う。
「お前のせいで危うく死ぬとこやったわ」
「……なぜ、助けた」
ライガが問う。
「俺もお前たちの敵だぞ」
「言うたやろ。俺は俺のやりたいようにやるってな」
グリムはニヤリと笑い、背を向けた。
「それに……お前が生きて戻らんと、俺らの『宣戦布告』があいつ(カイ)に届かへんからな」
魔王たちは闇へと消えていく。
ライガはそれを追わなかった。
今の彼には、やるべきことがある。
「……帰るぞ。全てのケリをつけるために」
ライガは空を見上げる。
そこには、変わらず冷たく輝く聖断空母が浮かんでいた。
だが、そこへ向かう彼の瞳には、もう以前のような盲目的な光はなかった。
あるのは、真実を知り、友と対峙する覚悟の炎だけだった。
(第21話へ続く)




