第14話『虚飾の炎、嘲笑う蝶』
【前回のあらすじ】
ネビュロスとセイジレッドの知略戦が続く一方、別のエリアではブレイズレッド(アシュレイ)がヴェルミリオンを猛追していた。
※本作品の執筆にはAIを活用しています。
「逃げんじゃねぇよ! 燃やし尽くしてやる!」
アシュレイ(ブレイズ)の叫びと共に、巨大な火球が廃墟の壁を吹き飛ばす。
爆炎が渦巻き、黒煙が空を覆う。
だが、その熱波の中を、紫色の影がひらりと舞った。
「野暮だねぇ。そんなに熱くなると、化粧が崩れちゃうよ」
ヴェルミリオンが指先を弾くと、無数の幻影の蝶がアシュレイの視界を埋め尽くした。
「うざってぇ!」
アシュレイは両手の平から火炎を放射し、蝶を焼き払う。
だが、焼けた蝶は煙となり、さらに濃い霧となって彼の視界を奪った。
「どこだ! 出てこい!」
「こっちだよ、単細胞さん」
声は右から聞こえた。アシュレイが反射的に拳を振るう。
だが、そこには誰もいない。
「残念。次は左かな?」
今度は左耳のそばで囁かれる。
「クソッ!!」
闇雲に火球を放つが、当たるのは瓦礫だけだ。
焦りと苛立ちが、アシュレイの思考を曇らせていく。
彼は「正義」のために戦っているつもりだった。だが、その根底にあるのは「自分の力を認めさせたい」「派手に暴れてスッキリしたい」という幼稚な衝動だ。
ヴェルミリオンは、その心の隙間を見透かしていた。
「君の炎は、空っぽだね」
霧の中から、ヴェルミリオンの声が響く。
「ただ熱いだけで、色気がない。……まるで、誰かに『すごいね』って言われたくて暴れてる子供みたいだ」
「なんだと……!?」
アシュレイの動きが止まる。一番言われたくない言葉だった。
「図星かな?
君は正義なんてどうでもいい。ただ、自分が主役になれるステージが欲しいだけだろ?」
霧が晴れる。
目の前に、ヴェルミリオンが立っていた。
その手には、紫色の毒霧が揺らめいている。
「僕が教えてあげるよ。本当の『主役』っていうのはね……」
ヴェルミリオンが妖艶に微笑む。
「観客を魅了し、心を奪う者のことさ」
刹那、ヴェルミリオンの姿がブレた。
アシュレイが反応する間もなく、毒霧が彼の鼻先を掠める。
「がッ……!?」
視界が歪む。身体が痺れ、力が抜けていく。
神経毒だ。
「おやすみ。夢の中でなら、君もヒーローになれるかもね」
ヴェルミリオンがトドメの一撃を放とうとした、その時。
ズドン!
重い着地音が響き、二人の間に割って入る影があった。
黄金の重装甲。大剣を担いだ巨漢。
ジャッジレッド――レクス・クレイドだ。
「遊びは終わりだ、道化師」
鉄仮面の奥から、重低音が響く。
「法に背く者は、私が断罪する」
「おやおや、堅物のお出ましだね」
ヴェルミリオンは軽やかにバックステップし、距離を取る。
「でも、君も大概だね。仮面で顔を隠して、ルールに従うフリをして……。
その下で、本当は何を考えてるのかな?」
「問答無用」
レクスは大剣を振りかぶる。
その剣圧だけで、周囲の空気が軋む。
知略戦、幻惑戦、そして力技。
戦場は混迷を極め、それぞれの信念が火花を散らす。
だが、その中心にいるはずの「リーダー」の姿は、まだない。
(第15話へ続く)




