第11話『鉄の掟、泥の絆』
【前回のあらすじ】
ジャスティスフェイスの空中要塞による無差別攻撃を、グリムは単身特攻で阻止した。
その姿を見たバーニングレッド(ライガ)は、「悪であるはずの彼が市民を守り、正義であるはずの自分が引き金を引こうとした」事実に愕然とする。
※本作品の執筆にはAIを活用しています。
要塞の砲撃は止まった。
傾いたデッキで、ライガ・アランはグリムが墜ちていった暗い空を見つめていた。
「……総員、撤退せよ」
通信機から響くカイ(ユナイト)の声に従い、彼は拳を握りしめる。
その手は、恐怖ではなく、自分自身への怒りで震えていた。
翌日。
聖断空母ジャッジメントの会議室。
戦闘装備を解除し、素顔を晒した五人の男たちが円卓を囲んでいた。
「失態だ」
上座に座る黒髪の青年、カイ・レグリオ(ユナイト)が冷徹に言い放つ。
「たかだか数名のテロリストに、要塞の主砲を潰されるとは。……アシュレイ、セイジ、レクス。地上の警備は何をしていた」
「チッ、うるせぇな優等生が! あいつらすばしっこいんだよ」
赤髪を逆立てた青年、アシュレイ・クロムウェル(ブレイズ)が、テーブルを蹴り上げる。
「次は俺が出る。あの派手な野郎ごと、街を焼き尽くしてやるよ」
アシュレイにとって、敗北はプライドを傷つけられた屈辱でしかない。
「感情的になるな、アシュレイ」
眼鏡をかけた知的な青年、セイジ・アークライトが、ホログラムのデータを操作しながら淡々と告げる。
「敵の戦力は未知数だ。特にあの氷使い……こちらのシステムへの干渉速度が異常に速い。私の計算を上回る『ノイズ』だ」
「法に則り、即刻処刑すべきだ」
角刈りの巨漢、レクス・クレイド(ジャッジ)が重々しく頷く。
「彼らの存在自体が、我々の掲げる『多元宇宙秩序維持法』への反逆。裁判の必要もない」
それぞれの歪みを抱えた仲間たち。
その中で、ライガだけが沈黙を守っていた。
「……ライガ。君はどう思う?」
カイに問われ、ライガは顔を上げる。
「……俺たちがここに来た理由は、『魔力という危険なエネルギーを管理し、宇宙の均衡を保つ』ためだったはずだ。……違うか?」
「その通りだ」
カイは頷く。
「ノクタリアの魔力は、放置すれば暴走し、地球を含む近隣次元に害を及ぼす。だから我々が管理し、安定供給できるクリーンエネルギーとして活用する。それが宇宙全体の利益だ」
「利益、か……」
ライガは苦々しく呟く。
「そのために、現地の民を『資源』として扱い、従わない者は排除する。……それが、俺たちの正義なのか?
俺たちが守るべきは、組織の利益か? それとも、そこに生きる命か?」
その問いに、会議室が静まり返る。
カイの目が、スッと細められた。
「この星を安定させることが、結果として最大多数の幸福に繋がる。……情に流されて大局を見失うな、ライガ」
「だが、昨日の砲撃は……!」
「必要な措置だ。腐った果実を捨てて、木全体を守るのと同じだ」
カイの論理は完璧だ。組織としては、正解なのだろう。
だが、ライガの心は納得していない。
「……頭を冷やしてこい」
カイが冷たく告げる。
「次期作戦まで、お前の指揮権を一時凍結する。……迷いがある人間に、背中は預けられない」
ライガは拳を握りしめ、無言で部屋を出た。
廊下を歩きながら、彼は壁を殴りつけた。
「クソッ……!」
地球の平和のため、宇宙の秩序のため。そう信じてきた大義名分が、このノクタリアでは「侵略者の論理」にしか聞こえない。
その矛盾を突いたのが、あろうことか「悪」を名乗る男だったという皮肉。
(……俺は、俺自身の答えを見つけてやる)
二つの魂は、必然のように再び衝突の時を求めていた。
(第12話へ続く)




