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二十二  ここで一発、ラリアット!

 今考えると、この時、自然と体が動いたことが自分でも信じられない。

目の前には、190センチ、ガッチリした大男。

棒状の物を振りかざしている。

私の頭は凄くクリア。

武器はない。あるのはヒョロイ体だけ。

でも、私は浮くことができる。

浮いて動く私は、地面の抵抗がないから、きっと速い。

速くて、加速度がつけば、きっと重い。

イケる!きっとあの大男だって倒せる!

無茶苦茶かも知れないけど、戦えるのは私だけ。

倒れている二人を守れるのは、私だけなんだ!

おでこの真ん中に力を入れた。

「ふー、うん!」

ヨシ!きっと、2センチ浮いてる。イケる!

すぐ横の木を左足で思いっきり蹴り。

右足で地面を滑り、大男に突進した!

「ここで、一発、ラリアットーーーーー。」

ほぼほぼ体当たりのラリアットを見事に、大男の首にくらわしてやった!

ードン、ダダ、ダダーンー

やった!ぶつかったら予想よりも大男だったけど、不意打ちを喰らったからか、後ろに飛んだ。

結構な勢いでふっ飛んで、イチイの木のイガイガな植え込みに刺さった。

「ハア、ハア、ハア。やってやった、、、ハア、ハア、ハア。やってやった。」

良かった、春吉さんと千花ちゃんを守れた。自分でも信じられないけど、やり遂げたんだ。

興奮で顔が真っ赤かになてるに違いない。

「ハア、ハア、デカイだけで、大したことない奴め、ハア、ハア、」

イチイの木を薙ぎ倒すように埋っている男はピクリともしない。

(あれ?そんな威力があったのかな?)

大怪我させちゃったかもって思うよりも、動かない大男に安堵して気が抜けていった。

 そんな私に、春吉さんが、

「祝、、、。お前、浮いてね?」

「へ?」

「お前、、、浮いてるるよな、、、。」

(あーーー、しまったー。やっちゃったー。マズい、マズい)

「な、何言ってるんですか〜。」

そう言って、春吉さんの顔のあたりに身をかがめながら、コッソリ地面に着地した。

「え、いや。今、浮いてたよな?」

「全く、何を言い出すんだか。人が浮く訳ないでしょ。頭でも打ったんじゃないんですか。」

なんとか誤魔化さないとと、春吉さんの頭を見たら

「あーーー。き、切れてますよ!ち、血が、血が。」

「大丈夫だ!それより、あいつ、今のうちに、動けないよに拘束しないと。」

「あ、そうか。ハルさん、動かないで!私やります。」

何か、縛るものと探していると、

「大丈夫よ。二人とも頑張ったわね。」

マコトさんが大男を拘束してくれていた。

「祝。ハルの頭、これで押さえてやって。」

「はい。」

「マコトさん、すみません。俺より、千花ちゃんを。」

「ええ。」

マコトさんは、千花ちゃんの脈をとり、顔に近づくと

「あ、、、マ、コ、ト、さん。」

「良かった。意識がある。苦しい?」

「す、こ、し、だけ。」

「すぐに救急車が来る。そのまま動かないで。」

マコトさんは、倒れている千花ちゃんの頭の辺りを見ている。傷がないことを確認するとニヤリとして、春吉さんの腕にデコピンをした。

「痛って!」

「さすが。ハルは、紳士だね。その腕で倒れてくる千花ちゃんの頭を守りましたか。やるね〜。」

「へへへ。運動神経だけは、ピカイチなんで。」

春吉さんは、左腕にも血が滲んでいた。おどけてサムアップする春吉さんに、頭の回転もですよって言いたかったけど、どんどん涙が溢れてきて、言葉にならなかった。

 程なくサイレンの音がして、警察官と救急隊がやってきた。

千花ちゃんがストレッチャーに乗せられ、春吉さんも同じ救急車に乗った。マコトさんが

「腕もお願いします。打撲で住んでると良いけど、ヒビくらいは入ってる、、かもですので。」

心配しているマコトさんに、春吉さんが

「大丈夫っすよ。こんなのなめときゃ治りますって。」

「犬じゃないんだから、ちゃっんと見てもらうのよ。」

そうだよ。凄腕のエンジニアで、千花ちゃんの頭も守れる黄金の腕。そう軽口を言いたかったけど、まだ、涙しか出ない。

 警察と救急隊が、大男をイチイの木から引っ張り出した。顔も体も傷だらけだったが、命に別状はないようだ。ただ、大男は自分が何故ここにいるのかわからないようで。もっと言えば、自分だ誰何かもわからない様子だった。

「罪を逃れるためにウソついているんでしょうか?とぼけているんですかね!」

マコトさんに尋ねたが、

「さあ〜。どうかしらね。」

なんとも意味深だ。それにもう一つ。

「マコトさんどうして来てくれたんですか?ハルさん、連絡つける前だったような?それと、警察と救急隊を呼んでくれたの、マコトさんですか?」

マコトさんは、笑って

「祝だって大変なのに、いっぱい質問があるのね。」

「だって、気になって、、、。」

「ハルからの電話、つながったままだったのよ。」

「あ、それで。」

「それと、警察呼んだのは、千花ちゃんね。」

「え。」

マコトさんは、窓の辺りで警察官が拾い上げているスマホを指差した。

「ああ。あれが窓から飛び出して来たんだ。」

春吉さんと、三階から見た光景を思い出していると、マコトさんが、

「千花ちゃんの電話も警察に繋がったままっだったのよ。多分だけど、千花ちゃんが警察に連絡して余計に逆上したんじゃないかしら。」

「余計に?」

「千花ちゃんは、頭の良い子よ。それに人の気持ちをちゃんと汲める子。犯人を刺激するようなことや、やたらに警察に電話するはずないわ。よっぽど差し迫ったんでしょうね。それに、窓から投げ捨てたのが犯人なら、電話は切られてるでしょ。」

「切られないために、千花ちゃん自身が、窓から外に投げた。逆上される事、覚悟の上で電話した、、、。」

「そうね。気がついてあげれなかった。シャッター閉まっていたのに。」

マコトさんは、心から悔やむようにそう言ったけど、美佐枝さんのとこに居たのだから、シャッターが閉まっていたことに気がつけるはずない。

きっと春吉さんも同じように後悔しているんだろうな。

 優しい二人。私はどこよりも素敵な居場所を見つけてのかもしれない。



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