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14 .噂の裏側

——お兄様やカディス様に注意されたけど、要は私自身が動かなければいいのよね。


「楽しそうにしていますが、どうしましたの?」


昼休憩の終わりを知らせる予鈴が鳴り、アイビーはレガッタと教室に向かっている。

その道のりでも、ルージュとダフニの話は耳に届いてくる。


アイビーは、レガッタに顔を寄せ声を潜めた。


「レガッタ様。私、噂の真相を調べる方法をひらめきました」


「どうやって調べるんですの?」


興味津々で聞いてくるレガッタに、アイビーはより囁くように返す。


「実は、私には『ファンクラブ』というものがあるんです」


「ファンクラブ? 馴染みがない言葉ですわね」


「隣国で流行っているそうです。特定の人物を応援したり支持したりする団体を指す言葉だそうです」


「まぁ! さすがアイビーですわ!」


遠慮気味に小さく飛び跳ねたレガッタに、手を握られた。

アイビーの口元は、色んな意味でニヤけている。


「会長と副会長とは手紙の交換ができるんです。ファンクラブが何人の団体なのかは分かりませんが、質問すればきっと色々教えてくださいますわ」


「素晴らしいですわ」


レガッタもアイビー同様、楽しそうに顔を緩めた。


「善は急げですから、早速今日帰宅後に手紙を送りますね」


そうレガッタに伝えた通り、アイビーは帰宅したら、すぐに手紙をファンクラブ会長のキャンティ・チェスナット伯爵令嬢と副会長のシナモン・ターキッシュ子爵令嬢に送った。

もちろん2人に失礼がないよう、同じ内容の手紙を送ったことも添えている。


そして、週明け早々に2人から連名で返信が届いた。


ルアンから「『チャイブ様より、目立つことはしないように』と伝言を預かりました」と言われたが、アイビーは噂の真相が知りたいだけで何かをするつもりはない。


ルージュに聞くべきかもと迷ったが、1ヶ月は会えないからどうしてもその間ヤキモキしてしまう。

それに、ルージュはダフニが嫌いだから、その話題に触れていいのかどうかも難しいところだ。


ラシャンやカディスが軽く周りに尋ねてくれたが、噂になっている話以上のものはなかった。


だから、この手紙はある意味希望なのだ。


新情報がこの手紙に書かれていてほしいと願いながら、緊張する気持ちを抑えつけて封を開けた。


まず記載されていたのは、連名で返信したことのお詫びだった。

回答が同じものを2通送るのは憚れたようだ。

アイビーとしても有り難いので、手紙を読みながら無意識に頷いていた。


それと、今後も何かあれば頼ってほしいことと、その際はキャンティ・チェスナット伯爵令嬢宛の1通でいいことがしたためられていた。

アイビーから手紙をもらえるのは嬉しいが、2通書くのは大変だろうという配慮かららしい。


——すごいわ。ファンクラブって、私が親玉の秘密結社みたい。


胸を弾ませながら続きに視線を走らせる。

文字を追いかけながら、いつ間にか可愛らしい口を尖らせてしまっていた。


読み終わり手紙から顔を上げると、ルアンは目尻を垂らしてハンカチを口元にあてていた。

ルアンのことだから、怒っても可愛いアイビーに悶えていたんだろう。


「ねぇ、ルアン」


「なんでしょうか?」


「今、ルージュ様がダフニさんを階段から突き落としたっていう噂が学園であるの。でね、それを利用してルージュ様が日頃から虐めている、ルージュ様は公爵令嬢にあるまじき、ルージュ様は極悪令嬢だなんて言われているの」


「皆様、過激ですね」


「私はルージュ様がそんなことをするとは思えないし、お兄様たちもするならバレないようにするだろうって意見だったから、不思議に思って調べてもらったの」


「その手紙は、確かファンクラブとかいうものを設立された方でしたよね?」


「うん、彼女たちに手伝ってもらったの。でね、彼女たちが調べてくれた結果、ダフニさんが落ちたところを見たのがレネットさんなんですって」


「ラシャン様に付き纏われているご令嬢ですね」


「そうなの。で、その現場の周りいたご令嬢たちを調べたら、全員マーリー様の派閥、ダフニさんやレネットさんと顔馴染みの人たちばかりだったそうよ。ルージュ様の悪い噂の根元も、マーリー様の派閥の人たちなんですって」


「そうなりますと、バーチメント侯爵令嬢がルージュ公爵令嬢を蹴落とそうとされているんですかね? でも、動機は何でしょう? バーチメント侯爵家やシャトルーズ子爵家の狙いはラシャン様ですから、ルージュ様の評判を落としても1歩先に進めるわけではありませんのに」


頬に指を当てたアイビーは、「うーん」と首を傾げた。


「今、ルアンの言葉で気付いたんだけど、どうしてレネットさんは恋敵のマーリー様の派閥に入ったのかしら? お兄様を諦めたのかな?」


「それはありません。つい最近もシャトルーズ子爵家から書簡が届いておりましたから」


「だとすると、本当に謎だわ」


考えていても分からないので、明日レガッタに相談をすることにした。

全く興味を持っていなかったラシャンやカディスにも、話すだけ話しておこうと思っている。


謎は深まりばかりだが、調べてくれたキャンティとシナモンにお礼をしたいと思い、ルアンに相談した。


すると、「お礼ならヴェルディグリ公爵家の色が緑なので、似ている緑色を使った品物だと喜んでもらえますよ」と教えてくれた。

ヴェルディグリ公爵家の鮮やかな緑は、公爵家の人間しか使ってはいけないからだそうだ。


王家の青と同じ扱いなのかと、アイビーはうんうんと頷いた。


なので、黄色味がかった緑色の糸で刺繍が施された白いリボンを選んで2人に贈ったのだった。






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