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38 .王城にお呼ばれ

タウンハウスに来てから10日ほど過ぎた。

来週末には、ラシャンの誕生日が控えている。


公爵家でパーティーを開いて盛大に祝うのだが、アイビーはパーティーを欠席をする。

お披露目まで公式の場に姿を現さないためと、列席をして主役のラシャンより目立たないためである。


ただ、アイビーと過ごしたいラシャンの気持ちを汲み取って、パーティーは昼前から夕方16時までの開催になるそうだ。


チャイブの話では、ラシャンの学園の友人を中心に呼ぶとのこと。

だから、普通のパーティーよりも子供が多いだろうとのことだった。


予測不能な子供がいるかもしれないから、アイビーは見つからないように奥の部屋に篭る予定になっている。


ラシャンへのプレゼントに頭を悩ませたアイビーだが、ルアンと相談をして似顔絵をプレゼントすることに決めた。

1人でのお出かけがまだ許されていないので、家の中でできることは? と考えた末の似顔絵になる。


決まってからは、毎日午後はアトリエになった部屋でラシャンを思い出しながら描いている。

思い出しながらなので、描き直しが多くて中々作業が進まない。


1日でも長く描いていたいのに、日々の予定に来月のお披露目に向けてダンスの練習が追加されたので、本当に時間に追われている気分になる。


それなのに、今日は王城にお呼ばれされ、今まさにクロームと馬車に乗っている。


3日ほど前に、国王陛下からの招待状が使いの者によって届けられた。


クロームは嫌がったが、婚約の顔合わせはしなくてはいけない。

「喜んで登城いたします」以外の返答はできず、渋々了承をしていた。


「アイビー、嫌になったらすぐに帰っていいからね。何かあったら言うんだよ」


「ありがとうございます。でも、お父様がいてくださるので大丈夫です」


顔を蕩けさせるクロームに、アイビーは可愛らしく微笑んでいる。


朝からチャイブに、クロームの機嫌を取るように何度も言われていた。

面倒臭くならず、短時間で帰るには、クロームの機嫌の良さは必須らしい。

だから、アイビーの手腕にかかっていると、口を酸っぱくして言われたのだ。


実は、侍女長を捕らえた後、侍女長は洗いざらい吐いたが、シシリアン侯爵家は追い出してから連絡を取ったことがないとシラを切った。

きっと追い出された腹いせに言い張っているだけに違いないと、言い逃れをしてきた。


ヴェルディグリ公爵家としても、手紙を受け取っていた証拠までは掴めていない。

だから、認めないだろうと予測していたそうだ。


ただ今回は、無駄なことをするなと牽制をするために抗議したとのこと。

どう忠告したかまでは教えてもらえなかったが、シシリアン侯爵家当主は顔を青くして腰を抜かしたらしい。


悪事を事前に止めることはできたが、屋敷の警備の見直しや使用人や騎士たちの個別面談をしだしたクロームは、アイビーといられる時間が短くなり寂しさからイライラを募らせていた。


——お父様が怒っているところって見たことがないのよね。侍女長の話をした時も笑顔が消えただけで、怒った時のチャイブみたいに顔を吊り上げなかったし。今も機嫌が悪そうには思えないけどな。うーん。


アイビーといる時だけは機嫌がいいのだから、アイビーには気付けないものである。


じっとクロームを見てしまっていたようで、アイビーに注目されて嬉しいクロームは満面の笑みを浮かべている。


「アイビー、どうしたんだい?」


「お父様は今日も素敵だなと思って見てました」


デロデロに溶けた顔でアイビーを抱きしめるクロームを見て、同乗しているチャイブはアイビーに向かって大きく頷いていた。


公爵家を出発してから30分ほどで王城に着いたが、門を通ってからもずっと馬車に揺られている。


「とても広いんですね」


「言い伝えによれば、水の精霊が住んでいた村を守るために、村の周りに塀を建て堀を作ったらしいよ」


「門を通る前に渡った橋の部分ですか?」


「そうだよ。あの堀の水の量は1度も変わっていないらしいんだ。水の精霊の魔法が今でもかかっていると噂されているんだよ」


「では、王城は元々村だったんですね」


「歴史書にはそう残されているね。まぁだから、こんなにも広いんだよ」


「他にも村の名残りがあるんですか?」


「結婚式を挙げていたと思われる大きな御神木があるよ」


「素敵です。御神木を見てみたいです」


「陛下に言ってみよう。きっと見せてくれるよ」


嬉しそうに頷くアイビーにクロームは目を細め、アイビーの頭を撫でた。






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