甘いもの、思い出す蟻ん子一家
月曜日
私は、フルタイムパートになった。
でも
何かが急に変わるわけでもない。
いつも通り出勤して
いつも通りカートを押して
いつも通りの
仕事が始まった。
変わったことと言えば
15時から
15分間の休憩が入るようになった。
たった15分
でも、その15分があるだけで
身体の疲れ方はかなり違った。
タバコを吸って
ふぅ……と、一息つく。
それから私は
二階にある休憩室へ向かった。
昼休みには満席になる休憩室も
この時間に休憩している人は
ごくわずかだった。
そして、そこには
同期の二人が、先に座っていた。
「お、お疲れさ~ん」
手を振りながら
そう声をかけると
「あ、お疲れ~」
「隣、座んな座んな!」
そう言いながら
二人が手招きしてくれる。
席に着くと、二人が
小分けにされたお菓子を出してくれた。
(……お菓子か)
(太りそう……だけど
そういや、久しぶりかもな~)
(しかも和菓子なんて……
疲れてる時には、たまんねぇじゃん)
そんなことを思いながら
私は、有り難く頂戴した。
「ありがと~!
ごめん、私、手ぶらだ!
また今度、私も持ってくるね~」
そう言いながら袋を開け
一口食べる。
すると……
久しぶりだったから
もちろん、それもある。
でも、疲れた身体に染み込むような
和菓子の優しい甘さが
じんわりと
自分自身を包み込んで
癒してくれる気がした。
元々、私は
甘いものをあまり食べない。
その代わり
しょっぱいものが大好きだ。
その話をすると
「酒飲みか!」
と、だいたい誰からもツッコまれる。
ちなみに、旦那と義両親は
〘蟻ん子家族〙
と、私があだ名を付けたくらい
甘いものが大好きだった。
義両親の逸話として
50cmのロールケーキを
一晩で、二人で25cmずつ食べた
そんな話を聞いた時には
心の底から驚いた。
そして旦那も
しっかり、その血を受け継いでいる。
買い物へ行けば
だいたい甘いお菓子を、カゴへ入れている。
別に、しょっぱいものが嫌い
というわけではないらしい。
でも……
まるで、蟻みたいに触覚を動かして
〘甘いもの~甘いもの~〙
そう探し回っているように
見える時がある。
周りを見渡してみると
他にも、何人か休憩している人がいた。
そして、みんなの手元には
もらったものなのか
それとも、自分で持ってきたものなのか
そこまでは分からないけれど
何かしら、甘いものが置かれていた。
(うーん……
普段、甘いもの買わないから
よく分かんないな~……)
(まぁ……蟻ん子倅の旦那にでも聞くか)
以前の私なら、おそらく
頂くだけ頂いて
そのまま、家の〘蟻ん子旦那〙の
腹の中へ消えていただろう。
でも、今の私は
迷うこともなく
躊躇することもなく
自然と〘お菓子〙を
口に出来ていた。
それが……なんだか少し
嬉しかった。




